第3話 お嬢様と秘密のメロディ
暗闇の会合
黒き明日(ディマイン・ノワール)の広間に、幹部クラスと思わしき魔族が数名集まっていた。皆一様に黒いマントを纏っている。個性を極力抑えた記号的なその服装が、彼らにとっての正装だった。
「二人目の魔法少女……まさかこんなに早く現れるとは」
黒装束の中の一人が呟く。人間界への侵攻計画を実行して間もなく魔法少女が現れたことは、彼らの間でも周知の事実だ。しかし、更に新たな魔法少女が登場した今回の事件に衝撃を受けている者も少なくなかった。
「そうですね、私も驚きました」
もう一人の人物が答える。こちらもフードを被っており顔ははっきりとはしないものの、長身とフードの隙間からこぼれる紅く長い髪が無個性な黒の中で目立っている。
彼の名はトルバラン。今回の計画の重要監督者として、幾度と人間界に派遣されているが、今は一時的に魔界に戻ってきているようだ。
そんなトルバランを、眉間に皺を寄せながら見つめる者があった。頭部の大きな角をフードで覆っている彼女はインヴァス。
魔獣の召喚及び転送を得意とする魔族で、これまで人間界に送り込んだ魔獣の大半は彼女によって送られたものたちだ。
「……とにかく、早急に対策を講じる必要があると思うわ。確かにエナジーの回収そのものは進んでいる。とはいえ─このまま魔獣が現れる度に討伐されていてはジリ貧よ」
インヴァスの発言に、その場にいた全員が頷く。このままでは組織と魔法少女のいたちごっこが続くだけだ。状況を打開するような、奇抜な戦略を取ることを組織は求められている。
「そう思って今回の魔獣はちょーっと、趣向を今までと変えてみたんだよねぇ~!!ねぇねぇインヴァス、言っていい?言っちゃっていい??」
この場の空気にそぐわない、無邪気で舌足らずな声の女が発言する。そのあまりのテンションの高さに周囲の魔族は若干呆れている者、ついて行けずに引いている者、目を合わせないようにする者など、反応は各人各様だった。
しかし、彼女の態度に慣れているインヴァスは気にせず続きを促す。
「いいわ、エルロコ。どの道伝えるつもりだったし、説明してちょうだい」
「はいはーい!!まずやっぱり、人間ちゃんの心の隙を狙う路線は絶対変えない方が良いと思うんだよねぇ~!何故なら私が楽し……じゃなくて!その方向で攻めた作戦の方がエナジーの回収率が安定しているから!そこで今回考えたのは~!」
数分後、魔族たちは新たな計画に期待と不安を抱えつつ、その決定に従うことになる。
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