5手目 立ち止まるな!熱く戦え!

‘男女兼用ガラス製爪磨き1個セット(¥599)’



足元に落ちた1個を慌てて拾い、両手に1個ずつ持つ。



。o(先端の形状が違うな。武器っぽくてカッコイイ!)



あとはこいつでヘドロ魔ジんを綺麗にしてやるだけだ!

だけどこれ、アレだよな、爪やすりだよな...。

あいつ爪、どこにあるんだ?


そう考えながら相手を観察していると...



シュゥウウウウ!!



空気を切り裂いて、ヘドロ魔ジんから何かが飛んできた!


それは、左頬のすぐ横を、高速で通過していった。



。o(なんだ!?)



かつて野球部の先輩に、‘至近距離ノック’をやられ、顔面めがけて打たれたボールを思い出した。



。o(嫌な事思い出しちまった...。)



少し気持ちが落ち込んだ、と、そこへ、2発目、3発目がやって来た!



ガチ:「ぼっ!ぶあっ!」



左腹に1発、もう1発は、口と鼻の間にクリーンヒットした。



ガチ:「おぇえええええ!!ぶぺっ!ぶぺぺぺっ!」



まとわりつく臭さと、気持ち悪さ。

口と鼻の中に入ったそれを懸命に吐き出す。



。o(このままでは、やられる!)


。o(なんとかあいつに近付かなくては!)



そう考え、すぐにダッシュを開始する。


しかし、ヘドロ魔ジんの攻撃は、さらに激しさを増す!



ガチ:「うべっ!」


ガチ:「べほっ!」



度々被弾する。



。o(真っ直ぐじゃなく、横に回り込もう!)



痛さよりも、臭過ぎて食らいたくない。

この臭いは精神的にげんなりする。


ヘドロ魔ジんに対して半円を描くように走る。

その動きによって、ヘドロ弾はどの方向にも同じように飛ばされていると気が付いた。



。o(私や何かを狙っているわけじゃないのか。)



躱しきれずに何度も弾丸を浴びつつ、観察する。

ヤツが放っているそれは、ヤツ自身のボディに違いない。

心なしか、元々の塊が小さくなってきているようにも見えた。



。o(このまま放置すれば、自動的にヤツは消滅するのでは?)


。o(いや、ヒーローとして、街が汚されるのを少しでも早く止めなければ!)



腕を顔面の前でX字に交差させ、弾丸を受け止めながらダッシュで突っ込む。

大きな塊に手が届くまで近付いたところで...



。o(オラァ!キレイにしてやるッ!)



爪磨き左!

爪磨き右!



ヘドロ魔ジんの表面を擦るように、爪磨きを繰り出した!



ガチ:「ぶべっ!」



そうしているうちに、至近距離でヘドロ弾を顔面に浴びてしまった!

目に直撃し、開けられない!



ガチ:「うっ...くっ...。」



目の周囲を手の甲で拭い、ヘドロを落とそうとする。

と、その時、体の側面がヘドロの壁にくっついた感触がした。



。o(な、なんだ!?)


。o(体が、引っ張られていく!)

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