3手目 秘技!アーマーゾーン!

。o(しまった!手遅れか!)



トントン...



念のために、個室のドアを叩いてみる。



...トントン



反応があった。

申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



ガチ:「先程、そこで用を足していた者です!」


ガチ:「流し忘れており、大変申し訳ありませんでした!!」



個室の中に向かって、声を掛ける。

返事は無い。


頭を30°下げ、3秒静止。

個室のドアは閉まっているし、小の便をしている人も居ないから、誰も見ていないとわかっている。

神がSNSをしていたら、「エア謝罪www」とバカにしてくるだろうか?



トイレを後にし、再び自転車に乗る。

学生時代、遅刻が確定して情けない気持ちになりながら、学校に疾走していた事を思い出す。

。o(遅刻して怒られるのバカらしいから、もう休んじゃおうかな。)な~んて当時は考えたもんだ...。



。o(フッ、ヒーローにそれは許されない!)



正義を、市民の安全を、街とこの世界を...背負っているのだから!!


気合を入れなおしたところで、目的地の交差点が見えてきた。



。o(臭い!)



さっきのトイレの比じゃあない。

胃の内部が押し上げられるかと感じる程の悪臭が、鼻粘膜に突き刺さる。



。o(あいつか!)



両側2車線ずつある車道を堂々と塞ぎ、ビルの3階の高さの物体が、うねうねと動いていた。

最初に連絡を受けてから15分以上経過したのにここにまだ居るという事は、移動速度は低いに違いない。

自転車を停め、進行方向と思われる先に立ち、ヘドロ魔ジんと思われる物体に正対する。



。o(ヒーロー心得!まず対話する事!)



ガチ:「そこの君ィ!何をボェッ!!何がもくてブエッ!市民に迷惑をかオゲェロロロロロ!!」



あまりの臭さのせいでまともにセリフが決まらない。

対話は不可能なのか!?



。o(あっ...!)



その時、思い出した。

ヒーロー養成専門学校にて、この種の魔ジんは、会話能力を持たないと学んでいた。



。o(この場合は、いきなり抑止行動に入っても良い、だったな!)



そしてもう1つ、パンチやキック等、ヒーローの基本技となる打撃はほぼ無効だとも学習した。



。o(ならば!最初から私の秘技を出すしかあるまい!)



ヒーローは、誰もが必ず1つ秘技を身に付けている。

これは専門学校卒業のための必修事項だ。



。o(ガチャガチャマンたるこの私、初戦の最初の1手でそれを披露する事になるとはな!)



ガチ:「amazonn



ゲロ吐きそうなのをギリギリで堪え、秘技のためのセリフを放った!

両手を空に向かって広げ、天を見据える!!

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