異世界で傭兵を辞めて平穏な生活を送ったらトラブルさんがやってくる。

@kmsr

第1話 【傭兵稼業ってブラックです】

 新作始めました。

 本日は2話投降です。



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 俺が自分は地球から異世界に転生したのだと気付いたのは物心ついた2歳の頃だった。


 幸いというか、なんというべきか、記憶は連続していたので自分が何故こんな場所にいるのかという混乱はなかったものの、どうして自分が転生することになったのかということに関してはサッパリなので結局は混乱した。


 そもそも俺の常識では記憶というのは脳に保管されるものであって、異世界の赤ん坊に転生した俺の脳に前世の記憶があるというのは不可解だった。


 とはいえ、その原因が俺に分かる訳もなく、その謎は謎のままで俺は異世界で過ごすことになってしまったのだが。






 混乱から立ち直り、自分の現状を確認した俺が知ったことは、俺が親に捨てられた孤児であり、傭兵団なんて物騒な集団に引き取られたという現実だった。


 とは言え、流石に2歳の幼児を酷使するような場所ではなかったらしく、俺は俺を引き取った養父によって育てられることになった。


 この養父、どうやら傭兵団の中ではナンバー3の実力者であったらしく、それなりの発言力を持った男だった。


 更に言えば、この養父が引き取った子供は俺だけではなく、複数の孤児達が俺と同期として育てられていた。


 この時点で俺には十数人の兄弟姉妹がいたと言えば、どのくらいの規模の傭兵団だったのか想像出来ると思う。






 当たり前だが異世界に転生した以上は、この世界では日本語は通じない。


 だが、俺は前世の記憶がある上に幼児の柔軟な脳のお陰で比較的早く言語を習得することには成功した。


 まぁ、そもそも俺が傭兵団に引き取られたとか、育てていたのが養父だったというのは、全て言語を習得した後に知ったことだし。


 ともあれ、俺が自我を確立して言葉を話せるようになったのは孤児達の中ではダントツに早かったのは間違いない。


 その分スタートダッシュが切れて他の孤児よりも有利だったのも事実だ。


 とは言え、自分が養父の後を継いで傭兵になるという未来は想像出来ていなかった。






 傭兵と言われて俺が最初にイメージしたのは銃で武装した集団だったのだが、この世界の傭兵は銃など使わなかった。


 というか、この世界には銃がなかった。


 傭兵とは基本的に剣や槍、または弓などの原始的な武器を装備して、更に魔法を使って敵を倒す集団だった。


 うん。この世界には魔法が存在した。


 それを知った時、ちょっとワクワクしたのは内緒の話だ。


 ともあれ、自我が確立して言語を習得した俺は養父に戦い方を学ぶことになったのだが、この養父の戦い方はあまり一般的とは言い難かった。


 養父は傭兵と言っても医者に近い立ち位置であり、前線で戦うよりも後方で怪我人の手当てをする方が専門だったのだ。


 無論、傭兵である以上は戦うこともあるのだが、その場合であっても養父の信念として己の両手は人を治す為にあるとして決して戦いには使わなかった。


 結果、養父は足技――つまり蹴りのみで戦う傭兵となった。


 うん。それを最初に聞いた時、どっかの海賊コックを思い浮かべた俺は悪くないと思う。


 そんな養父に戦いを習った俺も当然のように足技を使うことになる。


 まぁ、足技のみの格闘術と言われてテコンドーを思い浮かべたのは俺だけじゃない筈だ。


 実際には蹴りの一発で敵の頭を砕くような戦い方なので完全に別物だったが。






 俺の養父は蹴り技のみで傭兵団のナンバー3に上り詰めた。


 だから俺の同期の兄弟姉妹達は思ったことだろう。


 養父の蹴り技に加え両手を使えば傭兵団のナンバー1になれる、と。


 そういう訳で、俺の兄弟姉妹達は養父の蹴り技+独自の手技を編み出そうとしたのだが――当然のように上手くいかなかった。


 俺からすれば当然の結果だ。


 養父が蹴り技のみでナンバー3へと上り詰めたのは手技を封印して足技のみに修練の時間を費やすことが出来たからだ。


 そこに手技を加えてしまえば他の普通の格闘術となんら変わらなくなってしまう。


 こうなると分かっていたから俺は養父に習って医学の勉強をすることにした。


 医学と言っても魔法のある世界なので、地球にあった治療法ではなく、魔法を使った治癒や魔法と薬品を組み合わせた薬の調合法などを習うことになった。


 これはこれで非常に有意義なことだと俺は思っていたのだが、こうして養父に医学を習っていたのは何故か俺だけだった。


 腑に落ちなかったので一度養父に聞いてみたことがあるのだが……。


「医療系の術を習得する為には希少な属性を宿している必要がある。ワシの子供達の中で、その属性を宿しているのはお前だけだった」


 ということらしい。


 一瞬、これが転生特典って奴かもしれないと思ったが、聞けば100万人に1人はいるという話だったので単に偶然かもしれない。




 ◇◇◇




 今更かもしれないが俺の名前はクルシェ=イェーガー。現在19歳。


 養父はあまり名前を考えるのが得意ではなかったらしく、クルシェはこの世界の言葉で12を意味し、イェーガーは単に養父が建てた孤児院の名前だ。


 つまり、俺の名前は養父の孤児院で12番目の子供だったという記号に過ぎない。


 そんな養父も5年前には傭兵団を引退し、2年前に死去している。


 養父の葬儀には俺と同じような孤児が沢山集まり、養父との別れを惜しんだ。


 ちなみに養父には俺のような養子は沢山いたが、生涯独身を貫いたためか実子はいなかった。


 養父に言わせると、傭兵のようないつ死ぬかも分からない商売をしている以上、家庭を持つ気にはなれなかったのだそうだ。


 頑固な養父らしいと傭兵団の奴らは言っていた。






 そして現在、傭兵団《影狼カゲロウ》は世代を交代して俺がナンバー3を引き継いでいる。


 俺は、この傭兵団の名前を聞く度に虫なのか狼なのかハッキリしろと言いたくなる。


 いや、正直な話をすれば今でも俺が傭兵団なんかに入るとは、なんの冗談なのかと思ってしまうのだが……。


「クルシェ。次の依頼が来たぞ」


「……勘弁してくれ」


 休む暇もないくらい忙しいので転職なんて考える暇もない。


「シャキッとしろ。それでも聖脚のオルガ様の後継者なのか?」


 養父の2つ名は《聖脚》。


 敵陣を両足で蹴り開き、多くの仲間を癒したという功績からそう呼ばれるようになったオルガ=イェーガーの2つ名だ。


「へいへい。《斬り姫》様は厳しいこって」


 そして目の前の長身の美女は以前に傭兵団のナンバー2を務めていた副団長キリヤ=エンブルグの御息女であるキリエ=エンブルグ。


《剣聖》の2つ名で呼ばれた先代副団長の実子であり現副団長。他の傭兵からは既に《斬り姫》の2つ名で呼ばれる凄腕の剣士だ。


 なんの因果か日本刀に酷似した剣を持ち、簡略化した和服のような服を着た美女である。


 容姿は170近い身長でスラッとした体型で、腰まで伸びるストレートの金髪にやや釣り目気味の碧眼の持ち主だ。年齢は俺より2つ上の21歳。


 これで黒髪黒目だったら俺の好みドストライクだったのだが。


 ちなみに俺は175センチ程度の身長で中肉中背、皮肉なことに黒髪黒目の日本人顔だ。


 前世に引っ張られたのかどうかは知らないが、少なくとも顔の造形は前世より今の方がイケメンであると思っている。


「その名で呼ばないでもらおうか、《千脚》殿」


「…………」


 先代の養父が聖脚と呼ばれていた影響なのか、今の俺は《千脚》なんて2つ名で呼ばれている。


「……悪かったよ」


 俺もキリエも自分の2つ名を気に入っていないのは一目瞭然であり、呼ばれると思わず眉をしかめてしまう。


「この2つ名って誰が決めているのだ? 文句を言いに行きたい」


「同感だ」


 俺はキリエに賛同しながら渋々席を立ち――仕事に向かうことにした。






 この世界、魔法なんてものがあるくせに魔物のような人類の敵はおらず、住んで居る知的生命体は基本的に人間だけだ。


 だから傭兵団の仕事も基本的には人間同士の戦争への参加ということになる。


「こいつら毎日のようにどっかで戦争してるよな。どんだけ戦争が好きなんだか」


「……仕事に困らなくていいではないか」


 会議室で資料を読んでいた俺は思わず愚痴をこぼすと、キリエが肩を竦めて応えた。


「俺は適度に仕事がしたいんだよ。こんなに忙しいのは嫌だ」


「……それには同意だ」


 傭兵団《影狼》は今では大陸有数と呼ばれるようになっており、戦争が起きる度に引っ張りだこだ。


 お陰で、この数年は休みがなくて辟易している。


「ごきげんよう」


 そんな影狼の幹部の集まる会議室に場違いな恰好をした奴が現れる。


 まるで、これからパーティにでも参加するかのようなドレスを纏い、ポワポワした雰囲気を持った、穏やかな顔の美少女。


 明らかに傭兵団には似つかわしくない少女だが、それを咎める者はここにはいない。


 それどころか俺は彼女が姿を現した瞬間には直立不動で立ち上がって敬礼の姿勢を取っていた。


「「お疲れさまです、団長殿!」」


 俺だけでなく、隣にいたキリエも同様に直立不動で敬礼して挨拶を返していた。


 そう。彼女こそが先代から団長の座を任された現団長であるカルミナ=ブレイズ。


 身長155センチで赤い髪と真紅の瞳を持った美少女に見えるが――実はキリエよりも年上で22歳である。


 どう見ても15~16歳くらいにしか見えなくても俺より3歳も年上だったりする。


 そして《武神》という2つ名で呼ばれた先代団長の御息女だ。


 ちなみに俺より年上なことを気にしているのか、年齢のことで揶揄うと……。


「クルシェ君。何を考えているのでしょう~?」


「なんでもありません!」


 俺は反射的に直立不動のまま硬直し声を張り上げていた。


 うん。俺は色々な意味で団長に逆らうことは出来ないのだ。


「さて。それでは会議を始めましょうか」


 そして団長が現れたことにより本格的な会議が開始されたのだった。




 ◇◇◇




 忙しい傭兵団と言っても別に毎日のように戦場に立っているわけではない。


 というか時間的な話をすれば準備期間の方が遥かに長く掛かるし、雇い主との交渉にも時間が掛かる。


 中には極端に料金を渋る奴も居て依頼を蹴ることだってある。


 俺達はあくまで傭兵団であって、金を貰って戦う集団なのだから。


 ちなみに俺は傭兵団の中で交渉担当をしていたりする。


「俺の本業は医療班なんだけどな~」


「他に出来る者が居ないのだから仕方ないだろう」


 キリエの言う通り、ぶっちゃけた話をすれば交渉出来る奴が傭兵団の中に俺以外居ないのが問題なのだ。


 キリエは優秀な副団長ではあるのだが、どうにも人の機微には疎くて交渉には向いていない。


 そういう訳で前世を含めて人生経験が豊富な俺にお鉢が回ってきてしまったという訳だ。


 まぁ、これに関しては代替わりをする前から――つまり先代の頃から俺が担当していたことなので今更言っても仕方ないのだが。


 うん。俺が担当する前は情に流されやすいメンバーが揃っていたので騙されて安値で雇われることも度々あったのだ。


 その状況を改善したのが俺という訳だ。


 というか、そもそもの話をすれば依頼主の情報を調べない時点で交渉以前の話だったんだけどな。


 情報社会である日本から来た身としては、こういう情報をないがしろにしている状況を見て見ぬふりが出来なかった。


 結果として俺は益々忙しくなってしまって転職どころじゃなくなってしまった。


「こんなことを言うのもどうかと思うが、戦場で敵を蹴っている方が楽だよなぁ~」


「仕事を押し付けてしまっていることに関しては申し訳ないと思っている」


 俺に対して殊勝な態度のキリエだが、別に俺はキリエと恋仲という訳ではない。


 戦場では背中を預ける相棒的な奴だが、残念ながらキリエに対して恋愛感情は抱いていない。


 というか、この世界って結婚に関する考え方が前時代的で、女は早ければ十代の前半に結婚というのが常識になっている。


 そういう意味では21歳のキリエは既に行き遅れということになるのだが……。


「なんだ?」


「……なんでもない」


 悲しいことにキリエに恋人がいたという話は今まで聞いたことがなかった。


 そりゃ美人でも戦場で敵を斬りまくって斬り姫なんて2つ名を付けられるような女を嫁にしたいかと言われれば大半はNOと答える。


 いや、日本人ならYESと答える奴も沢山いるかもしれないが、この世界だとNOになってしまうのだ。


 そういう価値観の世界なのだから仕方ない。


 ちなみにキリエだけでなく団長も独身である。


 勿論、俺の恋愛対象外でもある。


 どうして駄目なのかと問われれば、俺は家庭的な女性が好みだからだ。


 キリエは確かに美人で有能な女性だが、家庭的かと問われれば――そっと目を逸らすしかない。


 実は過去にキリエに頼まれて家事を教えることになった日があった。


 俺としても家事が得意という訳ではなかったのだが、前世の記憶からある程度は出来たので教えることになったのだが――結果は凄惨たる有様だった。


 まず料理だが、キリエに包丁を持たせると何故か食材をまな板ごと切り刻むという暴挙に出てしまう。


 どうやら剣を握っていた期間が長かった為に、刃物を持つと反射的に目の前の対象を切り刻んでしまう習性が出来てしまったらしい。


 これは本能のようなものなので本人にもどうしようもないようだ。


 それでもレシピ通りに味付け出来れば食えるものは作れる筈なのだが――何故か渡した軽量スプーンではなく手掴みで塩を掴み取って鍋に投げ入れるという暴挙に出る。


 結果、キリエの作った料理は海水の3倍の濃度の塩分で、まな板の欠片入りという代物が完成したのだった。


 次に掃除を教えることになったのだが、これも料理と同様に箒を持たせた途端に豹変して武器のように振り回し始めた。


 どうやら得物を持つと本能に逆らえなくなるようだ。


 当然のように部屋は滅茶苦茶で、正気に返ったキリエは涙目になって俺に謝っていた。


 俺は苦笑いしか出なかったよ。


 最後に洗濯を教えることになったわけだが、料理で塩を手掴みで投げ入れたことから分かるようにキリエは非常に大雑把な性格をしていた。


 結果、1回の洗濯に対して1ヵ月分の洗剤をぶち込んで洗濯物を泡塗れにしてくれやがった。


 当然の如く大惨事であった。


 ちなみに団長は完全にお嬢様育ちの為に家事は全て使用人の仕事という認識があるので論外だったりする。


 仕事帰りに料理を作って家で待っていてくれるようなお嫁さんが欲しい俺からしてみれば、キリエと団長は『ごめんなさい』としか言いようのない女性達だったのだ。


 え? 俺の理想像が古くないかって?


 そうかもしれないが、毎日のように仕事に忙殺される毎日を過ごしていると、家に帰ったら癒しになってくれる奥さんが欲しいと思ってしまうのだ。


 残念ながらキリエや団長と結婚したら家に帰って家事をやるのは俺の仕事になってしまう。


 まぁ、団長の場合は金があるので使用人を雇って快適に過ごせるかもしれないが、俺だって金はあるので使用人くらい雇えてしまう。


 つまり癒しを求める結婚をするなら団長を選ぶ理由がなくなってしまうのだ。


 なにより、俺は胸の豊かな女性が好みなわけで、キリエと団長の胸部装甲は――少しだけ物足りなかった。


「なにか?」


「……なんでもない」


 勿論、本人達に言ったりは出来ないが。




 ◇◇◇




 この世界に存在する魔法――正確には魔術と呼ばれている技術について少しだけ話そうと思う。


 魔術とは人間の身体に宿る魔力と呼ばれるエネルギーを使用した術である。


 魔力とはなんぞや? と問われても俺には答えられないが、生まれた時から俺の身体にも宿っていたのだからそういうものだと思っている。


 前世の地球で暮らしていた時は間違いなく存在していなかった未知のエネルギーなので、この世界の人間特有のエネルギーだとは思うが。


 その魔力を意思の力で制御して、魔力を変換して特定の現象を起こすことを魔術と呼ぶ。


 基本となるのは初歩の初歩として最初に習わされることになる身体強化魔術。


 これは魔力さえ持っていれば誰にでも使うことが出来る簡単な魔術であり、その効果は術者の魔力量と制御力に左右される。


 傭兵団《影狼》では特に重視される魔術であり、俺は勿論だがキリエや団長も戦闘の際には身体強化魔術を使うことで傭兵団の中で成り上がったのだ。


 まぁ、俺の場合は魔術は基本的に治療にしか使っていないので戦闘に使っているのは身体強化魔術のみなのだが、これに関しては実はキリエと団長も同様だったりする。


 魔術の基礎にして奥義。それが身体強化魔術だ。


 身体強化魔術の真の性能を引き出す為には高度な魔力制御技術が必要になるが、幼い頃から養父の教育を受けて来た俺にとっては出来て当然の技術だ。


 なんと言っても傭兵団の命を預かる治療班に所属しているのだ。


 そうである以上、俺のミスは団員の命の直結してしまう。


 魔力制御の技術を磨くのは俺にとっては当然の話だったのだ。


 まぁ、キリエと団長に関しては実父から直々に鍛えられたみたいだけど。






 人間が宿す魔力にはいくつか種類があり、それを属性と呼んで区別されている。


 単純なところで《火》《水》《土》《風》の4属性。


 宿す者が最も多い属性であり、いずれも極めれば強力な属性魔術として力を発揮する。


 他にも《光》《闇》《聖》《邪》の特殊属性や《炎》《氷》《地》《嵐》の4属性の上位属性なども存在する。


 これらは生まれ持った魔力に左右される属性であり、本人の意思ではどうにもならない先天的な要素がものを言う。


 ちなみに俺が宿していたのは希少な聖属性であり、だからこそ俺は養父の後を継いで治療系の魔術を習うことになったのだ。


 とは言っても聖属性の治癒魔術でどんな怪我や病気でも治せるわけでもない。


 それなりの治療法を知らなければ適切な処置など出来る訳がないのだから。






 その日も俺が務める治療班には怪我人が運び込まれてくる。


「三席、怪我人です!」


「おう」


 俺は傭兵団のナンバー3だからなのか三席と呼ばれることが多い。


 ともあれ、俺は早速運び込まれて来た怪我人の診察を開始する。


「《診察》」


 これは養父も使っていなかった俺のオリジナル魔術で患者の体内に魔力を波紋のように流すことでソナーのように反響させて患者の状態を知ることが出来る魔術だ。


 これによって俺は正確に患者の状態を知ることが出来、適切な治療を施すことが出来るようになる。


「……骨折だな」


 今回の患者は単純に足を骨折しただけのようで、麻酔用の魔術で痛みを消してから骨の位置を調整して治療魔術を掛ける。


 自慢じゃないが治療の腕に関して俺は既に養父を超えていると自負しており、骨が折れた際に痛めた筋や神経なども調整して治してやった。


 最後に麻酔用の魔術を解除してやれば痛みも違和感もない状態に復帰出来るという算段だ。


「もう動いて良いぞ」


「ありがとうございます、三席」


「お大事に~」


 俺に礼を言って元気よく去っていく団員を見送りながら、俺は治療用のカルテに記録を付けていく。


 こういう記録をこまめに付けていくことが今後の治療の役に立つだろう。



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