結婚を約束した幼馴染みと再会したので、まずは恋人になりました
果物 太郎
プロローグ ある日の約束
春を感じさせる暖かい風が吹く小さな公園に、二人の子どもがいた。
一人は、少し赤みのある茶髪の少年で、その背丈からは小学校低学年であると思われる。
もう一人は、綺麗な黒髪ショートの少女で、少年と同じくらいの背丈であり、こちらも小学校低学年であると思われる。
二人は向き合っており、少女は緊張した様子で口を開いた。
「わたしね……あした、ひっこしするの」
「え……?」
少女の言葉に、少年が驚き、動揺する。
「なんで……そんな、きゅうに……」
「……ごめんね。もっとまえから、きまっていたんだけど、ずっといえなくて……」
少女は俯き、声を震わせている。
少年は動揺しつつも、質問を投げかける。
「ひっこすって……とおいところ?」
少年の質問に、少女は俯きながら答える。
「……うん、ここからだと……ひこうきにのらないといけないって、パパがいってた」
少女からの答えに、少年は次の質問をする。
「じゃあ、もう……あえないってこと……?」
少年の声は震えており、その目からは涙がポロポロと溢れている。
「……うん」
少年の質問に少女が頷く。
少年と同じように泣いているのか、その声は先ほどよりも震えており、涙が地面に落ちていっている。
お互いに何を言えばいいのかわからないのか、二人の間に沈黙が訪れる。
数十秒ほど経って、少女が顔を上げた。泣いているからなのか目元が少し赤くなっているが、その表情からは、何か覚悟を決めたかのように感じられる。
そして、少女が沈黙を破った。
「わたし、ゆーくんにいいたいことがあるの」
少年は手で涙を拭い、少女を見る。
「わたし、ゆーくんのことがすき!」
少女からの告白に、少年は目を見開く。
「わたしたち、もうあえないけど……さいごに……これだけはいいたかったの」
そう言うと少女は、クルっと後ろを向いた。
「じゃあ……バイバイ……」
少女が公園の出口に向かう。
すると、少年が声を上げた。
「バイバイじゃない!」
少女が立ち止まる。
「おれも……ふーちゃんのことが好きだ!」
その言葉に、少女が振り向く。
「だから、おれ……がんばるから!……ふーちゃんのだんなさんになれるようにがんばるから……またあおう!またあって、けっこんしよう!!」
少年が涙を流しながら、そう叫ぶ。
「……うん。ぜったいだよ!わたしもがんばるから、ぜったいけっこんしよ!」
少女が涙を流しつつも笑顔で、そう返事をする。
これは、小さな子ども同士によるものでありながらも、確かに交わされた大切な……大切な約束である――
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