其の十 帰宅
その時、
「みやう」
と
「おう、サビ。今戻ったよ」
と優しい声がして、春庭様がお戻りになりました。
錆柄猫のサビは、かつて自分の命を助けてくれた春庭様に大変懐いており、春庭様が帰宅なさると、待ち構えていたかのように必ずこうして門まで迎えに出て、ひとしきりゴロゴロと春庭様に甘えるのが日課になって居ります。
「今だわ」
奥様はちょうど
私は急いで
「春庭様、あのう……。この
私はそう言って結び文を両手で差し出すと、春庭様は驚いた表情で、
「あの姫君とは……。火事の時に私がお助けした
「はい」
と私が
先ほどまで書生の間に
「何だ何だ?
と、からかうように大声で騒ぎ立て始めました。
来週火曜日に続く
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