第6章「花吹雪に咲く孤独の華」
朝餉を済ませると、エンマと蘭丸は、川辺に向かって歩いて行った。
蘭丸は、エンマの先に立って、どんどんと早歩きで進んで行った。その後を追いながら、エンマは、里の様子を眺めていた。
桜の木が至る所に生えている景色は確かに美しいが、他の建物や民家の立ち並ぶ様子は、エンマのいた地獄里とさして変わりはないように見えた。
そしてやはり、エンマの予想していた通り、里の者のエンマを見る視線は、地獄里で向けられていたものと同じであった。
人々の視線にさらされているうちに、エンマは、高揚していた気分が冷めていくのを感じた。
人気のない川辺まで来ると、蘭丸がエンマの方を振り返った。
「ここで、勝負だ。」
蘭丸は、勇ましく叫んで、木刀を構えた。
エンマも、気持ちを切り替えるようにして木刀を勢いよく振るって、構え直した。
先に飛び出してきたのは、蘭丸だった。
昨日からの苛立ちをぶつけるように、蘭丸はエンマに向かって突っ込んできた。
その速さは、尋常ではなかった。
エンマが避ける暇もなく、胴に鋭い一撃を叩き込まれた。
「ぐあっ!」
尻餅をついて倒れたエンマを見て、蘭丸は笑った。
「なんだ、その程度か。のろいなあ。」
「くそっ!」
エンマは立ち上がって、蘭丸に向かって突進してきたが、それを蘭丸はひらりひらりと身軽にかわし、乱暴に繰り出されるエンマの攻撃は、
「じじい…。」
捉えられない蘭丸の動きに、いつしかエンマは、草吉の姿を見ていた。
何故、捉えられないのだろう。何故、倒せないのだろう。何故、勝てないのだろう…。
追いかけても追いかけても、草吉の背に手は届かない。
「全然、弱いじゃないか。」
がっかりしたように、蘭丸は言った。――相手にもならない。
蘭丸は、さっきまで対抗意識を燃やしていたのが、急に馬鹿らしくなって、木刀を収めた。
「何でやめるんだ!」
「もう、お前の力は分かったよ。俺とでは、勝負にもならない。」
「まだ決まってねえっ!」
「決まったさ!最初の一撃でな。お前は弱すぎる。」
そう言って、蘭丸は背を向けて歩き出した。
「まだだ!」
エンマは、背を向けている蘭丸に向かって木刀を振るった。が、蘭丸は振り返りもせず、いとも簡単にかわして、逆にエンマの木刀を奪ってしまった。
「もう終わりだ。帰るぞ。」
あまりの力の差に、エンマは愕然として、歯向かう気も起こらなかった。
家に戻ってきた蘭丸は、まだ蓮花がいたと知ると、上機嫌になって声を掛けた。
「蓮花。今戻ったよ。」
「あら、早かったわね。エンマと勝負したんでしょう?どうだったの?」
「てんで勝負にもならなかったよ。期待してたのに、がっかりさ。」
蘭丸の後ろで、エンマは悄然としていた。
「そう。でも、しょうがないわ。蘭丸が強すぎるのよ。蘭丸に敵う人なんて、誰もいないわ。」
「ハハ、そうだな。アハハハ…。」
蘭丸は、どうしようもなく笑いが込み上げてくるのをこらえることが出来なかった。
「エンマ。気にすることはないわ。これからどんどん修行して、強くなればいいんだから。それに、私が霊術を教えてあげるわ。霊術を身に付ければ、エンマだって、もっと強くなれるはずよ。」
蓮花は、笑っている蘭丸をよそに、エンマを励ますように言った。
「レイジュツ…。そうだったな。」
エンマの顔に少しだけ笑顔が戻った。
「じゃあ、そのレイジュツってのを教えてくれ。」
「そうねえ…。じゃあ、今帰ってきたばかりなのに悪いけど、もっと広い場所がいいわ。ついて来て。」
蓮花はそう言って、エンマを連れて歩き出した。
「蓮花!」
蘭丸が二人を追いかけて来た。
「どこ行くんだよ!」
「どこって、霊術を教えるのよ。」
「別に二人きりになることはないだろう!俺も行くよ!」
「もう。それじゃあ、蘭丸も協力してよね。遊びに行くわけじゃないんだから。」
「分かってるさ!」
「全く…。」
エンマは、呆れたように蘭丸を見ていた。
里を見下ろせる高い崖の上までやって来た。
「それじゃ、まず空を飛んでみせるから。」
そう言って、蓮花はいきなり崖から飛び降りた。
「おい!」
エンマは突然のことにびっくりして、崖の下を覗き込んだ。
しかし蓮花は、空中で止まっていた。そして、立った姿勢の状態で、ふわりと上昇してきた。そのまま、エンマの頭上を越えて、上へ、上へと上昇していく。
「どうやって…。」
あっけにとられたように、ぽかんと口を開けて、エンマは蓮花を見ていた。
「これが
蓮花はゆっくりと下降して、ふわりと着地した。
「今度は、飛天術に、
そう言ったかと思うと、蓮花の姿が一瞬にして消えた。
「どこ行ったんだ…?」
エンマはきょろきょろと辺りを見回した。
「すごい速さで飛んでるよ。蓮花のスピードは、俺の目でも捉え切れない。」
蘭丸は蓮花の姿を目で追っているようだった。
(エンマ。私の声が聞こえる?)
エンマの脳に、蓮花の声が響いてきた。
「え…?」
耳に聞こえる音の感覚と違ったので、エンマは戸惑って周りを見回した。
(これは、伝心術。心の声を相手に伝える術。これは今、エンマにしか聞こえていないのよ。蘭丸には聞こえてないわ。試しに、蘭丸の反応を見てて。…蘭丸のバカ!)
エンマには、蓮花の声と共に、くすくすと笑うような響きが伝わってきた。
しかし、蘭丸は何の反応も示していなかった。何も聞こえていないようである。
(ほらね?じゃあ今度は、蘭丸にだけ聞こえて、エンマには聞こえないようにするから。)
すると、蘭丸がいきなり振り向いて、エンマの方を睨みつけてきた。
「何を言ったんだ…?」
(ふふ。内緒よ。…今度はね、伝視術を、伝心術を使ってエンマに見せるから。伝視術は、一番よく使う術よ。)
すると、エンマの脳に、どこかの景色が見えてきた。
桜の木の上。下には里の風景が広がっている。見たような景色だ。するとそこに、フータがいた。フータが、蘭丸の連れていた白い狼、鈴蘭に話しかけている。まるですぐ隣にフータがいるように見えて、声が聞こえてきそうなほどだった。
「なんでフータが?」
(私は今、自分の家の屋根の上にいるのよ。)
「え??だってさっき、ここに来たばっかりで…。」
(ここまで飛んできたの。そして今、伝視術を使って、視力を高めて蘭丸の家の方を見ているのよ。本当は、もっと遠くまで見渡せるんだけど、エンマにも分かりやすいようにと思って。伝視術を使えば、視力が上がって、遠くの景色がはっきりと見えるようになるの。そうね。ここからだと、エンマたちの姿が見えるわ。)
エンマの脳に、蘭丸と、エンマの姿が伝わって見えた。
「本当に見えているみたいだな…。」
(まあ、こんなものかしらね。あとは、心眼というのもあるんだけど…。それはあとで教えるわ。とりあえず、これらを使えるようになることが、霊術使いの基本よ。)
「俺には、わけが分からねえよ。」
混乱しているエンマの所へ、蓮花が戻ってきた。
「蓮花!さっき言ってたことって…!」
蘭丸が、怒ったようにして言った。
「蘭丸。今は、霊術をエンマに教えているのよ。協力するって言ったわよね。」
「う…。」
蘭丸は黙り込んだ。
「霊術はね、もともと獣や鳥が持っている力、霊力というものを術として高めたものなの。それを使うことによって、私たち人間でも、魔物に対抗できるというわけ。」
「じじいは、あんなに強かったのに、魔物にやられたんだ。」
「いくら強い人でも、霊力がなければ、魔物には勝てないわ。霊力は、血に宿る力よ。誰でも使えるわけじゃない。私たちの先祖から、代々受け継がれている力なの。そしてエンマも、アヤメ様の血を継いでいる。だから、エンマには霊力を使うことが出来るのよ。」
「でも、俺には何が何だかさっぱり…。」
「…どう言ったらいいのかしら。こう、心を集中させるというか、気を集中させるというか…。例えば、飛天術の場合、心の中心を、上昇させるように動かすの。体を動かすんじゃなくてね。心そのものを動かすのよ。」
「心を動かす?」
「そう。ちょっとやってみて。」
エンマは大きく深呼吸して、目を閉じた。
エンマには、あのとき、雷鬼のもとへ向かったときの、激しい気持ちが浮かんでいた。
どうしようもなく、止められない気持ち。
衝動。
それが霊力なのかと思った。
心の中心に、赤い火が燈り、火柱のように炎が上がる。
「エンマ!」
燃え上がった心に、冷水を浴びせられたような感覚がして、ふと目を開けると、蓮花と蘭丸が、エンマから遠ざかった場所にいた。
足元を見ると、地面が焼け焦げたような跡があった。
「エンマ。今のは霊力じゃないわ…。」
蓮花がため息をついた。
蘭丸は、怪訝そうにエンマを見ていた。
「今のは、明らかに魔物の力だった!エンマ!やはりお前は…!」
「やめて!蘭丸。」
「うるせえっ!」
エンマは、その場から逃げ出した。
今の力が何なのかは分からなかったが、二人の自分を見る目が嫌だった。
走って走って、誰もいない場所へ。
一人になりたかった。
草吉の仇をとるためなら、誰にどう思われようと、どう見られようと、どうでもいいと思っていた。
けれども、信頼しかけていた蓮花や、蘭丸に、あんな視線を向けられると、嫌な気持ちになった。
誰も通らない橋の上で、エンマは、ふと橋の下の水面を見つめた。
ゆらゆらと浮かび上がる、自分の顔。赤い髪、緑色の目。
赤鬼と言われた理由が、よく分かる。
「ちくしょう!」
エンマは、水の中の自分に向かって、石を思い切りぶつけた。
そして、橋の欄干を蹴ってまた駆け出した。
どうしようもないくらい、悲しみが突き上げてくる。
蓮花と蘭丸は、エンマが帰ってきていないかと、蘭丸の家に戻っていた。
「エンマ?来ていないわよ。一緒じゃなかったの?」
みぞれが言った。
「そんな…。」
蓮花は、伝視術でエンマを探そうとした。
「やめろよ、蓮花。」
それを蘭丸が止めた。
「あいつなんかのために、何度も霊力を消耗することはないさ。」
霊術を使うと、霊力を消耗し、精神が疲労するのだ。
いくら霊術が使えるといっても、限りがある。だから普通の生活の中で、霊術を使うことはほとんどないのだ。
「でも…。」
「あいつは、やっぱり魔物なんだ。見ただろ?あいつの体から、炎が噴き出して…。一瞬のことだったけど、あれは妖術の片鱗だ。魔物の使う術じゃないか。」
「まあっ。エンマは霊術だけでなく、妖術も使えるの?それは凄いわねえ。」
みぞれは朗らかに笑った。
「母さん!笑い事じゃないんだよ。俺たちは、あいつに霊術を教えてたんだ。なのにあいつは…。」
「蘭丸。私はやっぱり、エンマが心配だわ。探してくる。」
蓮花は急いで家を飛び出して行った。
「蓮花っ!」
蘭丸は、蓮花を引き止めようと伸ばした手を引っ込め、それ以上追わなかった。
辺りは、夕焼けと桜の色とか混ざって、美しい夕暮れの景色が広がっていた。
蓮花は走りながら、伝視術でエンマを探していたが、途中で目が痛くなって、頭もくらくらとしてきた。
「…やっぱり、一日に何度も伝視はキツイわね…。」
それでも、走ることはやめずに探し続けた。
(どこにいるの?エンマ。戻ってきて。)
伝心術で呼びかけてみた。伝心術は、こちらの心を伝える術であって、相手の心を読む術ではないから、エンマに届いたとしても、エンマから同じ伝心術で答えてこない限り、心の声が届いたかどうかは分からない。
蓮花は後悔していた。さっき、エンマが妖術の片鱗を見せたとき、驚きと戸惑いと、そして恐怖を、どうしても隠すことが出来なかった。
並大抵の力ではないと感じて、ぞっとしたのだった。
しかしそんな目を向けられたら、エンマはどう思うだろう。
蓮花も、里の者の、エンマへの冷たい視線に気付いていた。
エンマには何の罪もないのに、何故魔物の血が混じっているというだけで、こんなに疎外されなければならないのか。蓮花は理不尽だと思っていた。
そして何より、ひとりぼっちだと思うことが、どんなに悲しくてつらいことだか、蓮花には痛いほど分かるのだった。
蓮花が両親を失ったとき、蓮花の心はカラッポになった。カラッポになって、自分が生きているのか死んでいるのかも、分からなくなった。
でもそんな蓮花を励ましてくれたのが、蘭丸であり、蘭丸の両親であり、里の仲間たちだった。
だからこそ、ひとりぼっちだと思っているエンマを、今度は自分が仲間として、元気づけて、励ましたいと思っていた。
(エンマ!ごめんなさい。)
蓮花は何度も何度も心の中で、さっきのことを謝っていた。
ふと、視界に赤い色が見えて、そちらに顔を向けると、川辺でエンマが木刀を振るっている姿が見えた。
「エンマ!」
蓮花は川辺の方へ走っていった。
「何を謝ってんだよ。」
エンマは木刀を振り回しながら、蓮花に言った。
「だって…。エンマがショックを受けたと思って…。」
「もういい。暴れ回ったら、すっきりしたぜ。」
エンマは木刀を収めて、軽く笑った。
「俺は思ってるほど、強くなかったんだな。蘭丸にいやってほど思い知らされたぜ。そっちの方がショックだったけどな。けど、あいつが本当に強くて良かった。じじいよりも強いな、あいつは。」
「…そうなんだ。」
思いのほか、エンマが元気だったので、蓮花はほっとしていた。
「じじいに勝つのが俺の夢だった。だから今度は、蘭丸に勝つのが俺の新たな夢だ。蘭丸に勝てば、じじいにも勝ったってことになるからな。剣ももっともっと修行して、霊術も絶対身に付けてやる。蓮花、頼むぜ。」
エンマの緑色の目が、生き生きと輝いていた。
「エンマ。私の教え方が悪かったわ。いきなりやってみてなんて。霊術は心を使う術だから、まずは心を鍛えることからよ。焦ることはないわ。修行の方法は、私がちゃんと考えるから。修行も大事だけど、エンマはもっとこの里に馴染まなきゃ。皆は、エンマのことを知らないだけなのよ。」
「俺は他人と関わるのが下手だからなあ…。」
エンマは苦笑いを浮かべた。
「氷助さんたちみてえな人ばかりなら、助かるんだが。」
そこへ、電光丸が飛んできた。
「まあっ、電光丸だわ!蘭丸ったら…。」
蓮花は嬉しそうにして言った。
「蘭丸もあんなこと言ってて、ほんとはエンマを心配してたのよ!電光丸、蘭丸に伝えて。今帰るからって。あ、それからね、エンマが蘭丸をボッコボコにしてやるって。」
「俺はそんなこと言ってねえだろ。」
「いいじゃないの。蘭丸を脅かしとくのよ。」
蓮花は悪戯っぽく笑ってみせた。
数日後、蓮花は長老の芭蕉に呼び出された。
「蓮花。エンマはどうだね。」
「なんとか打ち解けてきたみたいです。氷助おじさんのお手伝いをしたり、蘭丸とは…まあ、それなりに。心配することはなさそうです。」
「そうか。やはり、氷助たちに預けて良かった。あいつらは外者を全く気にしないからな。里の掟のこともあるが、他の者はなかなか頑固だからなあ。」
芭蕉はしばらくの間、黙っていた。
「…お前の報告を聞いて、ずっと考えていたのだ。エンマが、雷鬼の所へ、自らの力で行ったとはどういうことだろうとな…。もしかすると、どこかに魔物の通り道があるのかもしれん。あやつは、妖気を辿ってその道を通って行ったのかもしれんと。」
「魔物の通り道?そんなものがあれば、とっくに私たちが見つけているはずです。」
「うむ…。しかし、わしらに分からぬように、秘密の通り道がどこかにあるのかもしれん。ともかくわしは、エンマを見てすぐに感じたのだ。あやつは、妖気が強すぎる。」
「妖気…。」
「うむ。結界を通ることは出来たが、あやつはまだ、魔の力の方が強く働いておる。憎しみの心が強いからだ。そればかりでは、いずれ、その心に侵され、魔物の血と妖気に支配されてしまうだろう。だからこそ、今のあやつには、家族や仲間が必要なのだ。周りで支えてやる者がいてやらねばならんのだ。そうした温かい心に触れて、あやつの心が憎しみから次第に解放されていくことで我らと同じように霊術を使えるようになるのだ。だから蓮花、お前にはエンマを見守ってもらいたいのだ。」
「エンマは、もうこの里の仲間です。霊術も、私と蘭丸が教えているし、氷助おじさんも、みぞれおばさんも、それにフータも…。皆家族も同然です。」
「ふむふむ…。仲間…か。まあ、お前にエンマとの結婚の話を持ち掛けたが、それはまだまだ先の話だ。とりあえず今は、エンマを温かく見守ることだ。そのうち里の者も、あやつを分かってくれるだろう。皆で支えていれば、あやつの心も解きほぐれていくだろうよ。」
エンマとフータが連れ立って歩いていた。
相変わらず、里の者の、エンマを見る視線は冷たかった。
だが、地獄里のときとは違い、別にあからさまに排除されるわけでもない。
それもまた、何か気分が悪かった。
桜がずらっと並んで、まるで花のトンネルのようになっている小道に来た。
「うわーー!きれいだなあ!」
フータは木を見上げて叫んだ。
「おいら、サクラが大好きだ。きれいだから!」
両腕をまっすぐに伸ばして、フータはくるくると回った。
「そうだな。この木を見ていると、嫌な気分もどっかに行っちまって、どうでもよくなってくる。」
「嫌な気分?なんで?」
回るのをやめ、フータはエンマを不思議そうにして見た。
「何でもねえよ。」
エンマは笑った。
「ああっ!」
突然、フータがエンマを見ながら叫んだ。
「ん?どうした、フータ。」
風が巻き起こり、桜の花が風に舞って、太陽の光を受けてきらきらと光っていた。
フータの目には、その美しい風景の中で、エンマの姿が一際目立って見えた。
「兄貴はやっぱりかっこいいや!」
「なんだよ、急に。おだてたって何も出ねえぞ。」
「今さ、サクラがぱあってなって、兄貴の赤い髪が光って、そんで、目が緑色に光ってさ!すごくきれいだったんだよ!」
フータは、瞳を輝かせながら言った。
「…お前は、俺のことを変だと思わねえのか。」
「ヘンって?なんかよく分かんねーけど、だって、他の人は皆おんなじだろ。髪が黒くって、目も黒くって。皆おんなじだと、面白くねえ。でも兄貴は他の人と違う。だからかっこいいんだ。」
「おかしなことを言う奴だな、おめーは…。俺がずっと、こんな姿が嫌で嫌で、なんで俺ばっかり違うんだって思ってたのにな。おめーは、逆のことを言うんだな…。」
エンマはフータを見ていて、だんだんと心の中に明るい光が燈るような気がした。
「なんか、おめーに励まされたぜ。おめーの言う通り、皆と違ったってそれでいいんだ。何も気にすることはねえ。俺は俺の道を進めばそれでいいんだな。」
明るい日差しが、花吹雪の舞う小さな道を、温かく照らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます