第14話 狂乱勇者
今は昔話として語られていたはずのエンシェントドラゴン。その圧倒的巨大な姿はまさに言い伝え通り神々しく黄金色に輝いていた。誰もがそれに見とれ、そして怯え、ただただ頭上を見上げ立ち尽くしていた。
ドラゴンの噴いた炎によって王城の
「城へ急げ! ドラゴンはおれがやる!!」
おれの叫び声で正気に戻ったデンデリオが騎士団を連れて城へと急いだ。それとすれ違うようにプルジャが空を見上げながらてくてくとこちらまで歩いてきた。
「あれは?」
彼女がエンシェントドラゴンを指差しながらアンクバートに尋ねた。落ち着き払ったその物言いに、アンクバートは一瞬驚きながらも弓に矢をつがえながら答えた。
「ありゃエンシェントドラゴンだ。とっくの昔に死んでるはずなんだがなぁ。どういう訳かお空を飛んでやがる」
「復活したという事?」
「それしか考えらんねぇな。それよりおまえも戦う準備をしておけ」
束の間、プルジャはドラゴンの姿を見ていた。彼女はおれ達に視線を移しながら話し始めた。
「あれはたぶん
「そんな事が出来るのか!?」
アンクバートの問い掛けにプルジャは頷いた。
「一時的だけど死者の復活は可能。ただ術者の方もだいぶ命を削る事になるはず」
「やったのはレベリオか?」
「……たぶん」
アンクバートがおれをちらりと見た。プルジャの言う通り、レベリオがエンシェントドラゴンを復活させたのだろう。命じたのはおそらくロディ。
「兎に角、奴を倒すぞ。アンクバート、援護を頼む」
おれは両手に剣を構え空を見上げた。アンクバートがにやりと笑った。
「いきなり全力か?」
「ああ……
全身が紅潮し熱を帯び始める。心臓の鼓動がまるで太鼓の音のように頭に響き渡り、血液が沸き立ち体中から魔力が溢れ出す。
「これが
おれの
「
地面がめり込むほどの力でおれは大地を蹴った。一瞬で空高くまで舞い上がると、ドラゴンの背中目掛けて剣を切りつけた。
窓の外が炎に包まれ、あちこちから怒号と悲鳴が聞こえ始めた。ガラスの破片で幾分怪我を負ったけどアジュダの防御魔法がなければ死んでいたかもしれない。
「レベリオ! 怪我は!?」
「大丈夫! それより早く陛下達を!」
私とアジュダは王の間へと走った。すでに王城内は大混乱に陥っていた。爆風により建物は破壊され血を流した兵士が至る所に倒れていた。
「さっきのは一体なんなの!?」
アジュダが息を切らしながらそう叫んだ。
「あれはエンシェントドラゴンよ」
「はぁ!? どういう事!? 訳が分からない!」
「私が復活させたの……」
アジュダが私の手を取りながら足を止めた。一瞬怒った表情を見せたが次第に憐れむような、悲しむような顔へと変わっていった。
「レベリオ……あなた禁術を使ったの?」
流石はアジュダ。あらゆる魔法の知識を持っている彼女は私がした事をすぐに理解した。
「ロディに命令され逆らう事が出来なかった。もしヴァレントでも倒せそうにないなら私を殺して。術者が死ねばドラゴンも息絶える」
「ダメよ! ヴァレントならきっと倒せる!」
「お願いアジュダ! どうせ私は長くはない! あなたならわかるでしょう?」
彼女は唇を噛みしめながら涙を堪えていた。その時、廊下の奥から私達を呼ぶ声が聞こえた。
「アジュダ様! レベリオ様! お早く避難を!」
デンデリオを先頭に、王と王女を取り囲むようにして騎士団の一行がこちらへと向かっていた。彼らに合流しようと私達が一歩踏み出した時だった。
デンデリオの身体が真っ二つに分かれ、体の上半分がずるりと倒れ床へと落ちた。ジュイリア王女の悲鳴が城内に
慌てて駆け寄ろうとした私達を遮るかのように、突如目の前に姿を現したのは薄笑いを浮かべたロディだった。
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第14話を読んで頂きありがとうございます。
新作の方を投稿しております。ファンタジーではありませんので……。お時間ございましたら是非ご覧ください。
「奥さんの部屋は大人のオモチャで溢れ、まるでファンタジーワールドのようだった」
https://kakuyomu.jp/works/16818023212125178220
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