第2話:あなたのそばに、いちゃいけないですか?

「お誕生日おめでとうございます、成田さん・・・ハッピークリスマス」


「お〜・・・ありがとうラブちゃん〜・・・・・」


「・・・・・・」


「う、うそお〜〜〜〜」

「なに?・・・今喋った?」

「喋ったよね・・・誕生日おめでとうって言ったよね、たしかに?」


「待て、待て、待て、待て・・・ホラーか?それともポルターガイッスか?」


「ラブドールが喋った?・・・いやいや喋るわけないよな」

「でもたしかに喋ったよな?なんで喋ってるんだよ・・・ありえないだろ?

おかしだろ?」

「それとも俺がおかしいのか?、大丈夫なのか俺・・・あまりに彼女が欲しく

て、ついに幻聴か?


「あ・・あの・・・ごめんなさい」


「・・・・・・・」


「わ、また喋った」


「あのう・・・落ち着いてくれませんか?成田さん」


「おおお、落ち着いてるよ」


「すいません、このまま黙って見てようと思ったんですけどつい嬉しくて声かけ

ちゃいました」


「最近のラブドールって喋る機能付きなのか?」


「違いますって」


「私、春日野 葉見かすがの はみるって言います」


「え?・・・誰?かすがの?・・・はみる?・・・って誰?」


「成田さんと同じテナントビルの会社に勤めてて事務員してました」

春日野かすがのは春の日の野原って書いて、葉見はみるは、葉っぱを見るって書きます」


「いきなりで、びっくりなさったと思いますけど成田さん今から私が話すこと

ちゃんと聞いてくださいね」

「男性の中には人の話ちゃんと聞かない人多いですから・・・」


そこで葉見は彼がよく行くカフェで圭史を見かけて一目で好きになったこと

や自分が交通事故で亡くなったこと・・・魂だけになって現世を彷徨ってること

なんでラブドールに入ったかってことを説明した。


「そうなんだ・・・そんなことがあったんだ、君のことは知らなかった」


「私の片想いでしたから」


「で、その君の魂はあの世とやらに行けなくて現世を彷徨てったってわけ」


「私に心残りがありましたからね」

「どうしてもあの世に行く前に成田さんに会いたくて・・・」


「で?、俺と会えたし・・・もうこれで心残りなくなったってことなん

じゃないの?」


「それがですね〜私、成田さんに会っちゃったら余計未練が残ったって言うか

もう完全にあの世には行きたくなっちゃったんです」


「あのさ、あの世があるどうか俺も分からないけど普通聞くところによると

亡くなった人の魂ってあの世に行って浄化されて来世で生まれ変わるんだろ?」


「その話、よく聞きますね」

「でも私生まれ変わりたくなんかないです」


「私は成田さんのそばにいたいんです」

「ね?このまま、あなたのそばにいちゃいけないですか?・・・ここに

残っちゃ?」


「そうだね、君に出てけって言う勇気と権利は俺にはないかな」

「って言うか・・・ここに残るって?そんな勝手なこと自分の意思でできるの?」


「私が望めば大丈夫みたいです」


「そうなんだ・・・」

「それはいいけど君の魂ってやっぱりラブドールの中にいたほうがいいんだよね」


「はい動けますし、おしゃべりもできますし成田さんの身の回りのお世話も

できますし・・・それにラブドールだから夜だって・・・」


「あ〜それはね・・・」

「そのことは置いといたとして・・・なんだその俺、君のこと?葉見さんのこと

何にも知らないんだよね」

「目の前にいるのはラブドールだから君の顔も知らないし」

「だからそばにいてくれても愛情うんぬんとかって言われてもすぐには応え

られないよ」

「それでもいいの?」


「男と女って誰でも最初はそうじゃないですか・・・お互いのことを少しづつ

知ってお付き合いしてるうちに愛情が芽生えて来るもんでしょ」


「それに私はもう亡くなってますから顔なんかこのさい関係ないでしょ?」

「今は私の片想いでいいです」

「でも私は成田さんにもいつか私を好きになって欲しいって思ってます」

「それは私が生きてる時からの望みでしたし夢でしたから」


「分かった・・・分かったよ・・・結局俺の選択肢って君を受け入れること

しか残されてないんだよね」

「ってことで・・・このさいだから俺は素直に君を認めるよ」


「ここにいていいよ、って言うかそのラブドール高かったんだからな」

「大事に扱ってよ」


「本当ですか?・・・ありがとうございます、嬉しいです、私頑張ります」


「頑張らなくていいからさ・・・今夜はイヴだし、俺の誕生日だし君も一緒に

祝ってよ・・・

ひとりよりふたりのほうが楽しいから」


「はい、ハッピーバースデー、成田さん」


「ダメダメ」

「これからは一緒に暮らすんだから成田さんじゃなくて・・・圭史けいしとか

圭ちゃんって呼んでよ」

「俺は君のこと葉見はみるって呼ぶから?」


「分かりました、じゃ〜今日から圭ちゃんって呼ばせていただきます」

「それに人間の時の私はもうこの世には存在しませんしね・・・」


「じゃ〜・・・ハッピーバースデー、圭ちゃん・・・お誕生日おめでとう」


で、葉見は俺のそばに来て優し〜くハグしてくれて、おまけにホッペタに

チュってキスしてくれた。


俺と動いてしゃべるラブドール、葉見との生活がはじまった・・・これは

とってもレアな出来事だって思う。


つづく。

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