第4話:性問題に関して

今にして改めて思うのは、おれと言う存在は魔女様から見ればペットの様な感じなのかもしれないということ。

とは言え、妙ちくりんな生き物としてだが、おれの事を手放す気は無いと言っていたので好かれてるとは思う。

このいきり立ったおれの魔獣を、飼い主たる魔女様の中に挿れていいモノなのか良く分からないが、受け入れてくれるのであれば思う存分にたぎりを放出したい。


「――それで、このままもうコレを私に挿れてしまうのかい?」

依然、魔女様は握ったり捩じったりとおれの魔獣の調査をしていた。

その雑さと無慈悲な手つきが、絶妙に男心を擽り始める。

「あの……魔女様に対して不敬にあたるかも知れませんが、もう暫く魔女様の身体に触れたり、舐めたりしたいです。宜しいですか?」

「え?男のお前が、私の身体を舐めるのかい?」

「あれ?こちらはそう言う文化が無いのでしょうか?」

「いや、あるけどさ。イセリアでは身体や性器を舐めさせるのは貴族が奴隷にさせる行為なんだよ。ウリヤ人は男が女に尽くすのが一般的だけど、性器を舐め合うのは宗教的に禁じられてた筈だしね。ササラの男は基本的に何もしないらしいからね。その代わりササラの女はなんでもするよ」

言葉が違い風俗も違うのだから、それは勿論性行為にも文化の差が生じるのは当然だ。

趣味趣向の個人差は当然有るだろうが……これは恐らくだが、魔女様は性的な実経験が少ないのかもしれない。

おれや大先生みたいな変人……では無くて魔力耐性の高い者でなければ行為に至れないのであれば、如何に長生きであっても中々相手に恵まれないと思うし。


「ちなみに、魔女様ご自身はどうなんですか?えーっと、性行為に対する考え方と言うか、どの様な感じが好きか?という意味合いです」

「私は森の民だけど、イセリア育ちだからね。性行為自体に対する考え方は一般的なイセリア人と同等なんじゃないかな?けど、魔法使いってのは少し特殊でさ。お互いの魔力特性を深く知る為に身体を重ねる事があるんだよ。その流れで性行為に至る事は多々あるから。魔法使いの師匠と弟子が修行の一環としてヤリ捲って女の弟子が孕む事なんてざらにあるよ。女の師匠の場合はその逆も然りさ。男師匠なのに男子の弟子しか取らないヤツもいれば、女師匠で女子の弟子しか取らないヤツもいるから。純粋に魔法の素質や将来性を見て弟子を取る立派な師匠もいるけど、己の性欲を満たしたいだけのお師匠さんもいるってだけの話さ」

人種や民族差があり、職業柄や個人の趣味も影響してくる……と、言う事は結局この分野に関しては元居た世界と然程変わりない筈なので、余り深く考える必要は無さそうだ。

しかし……同性の弟子しか取らないお師匠さんがいるって話は、腐属性魔力が高い人からすれば堪らなく刺激的なシチュエーションなんだろうな、と思った。

おれ的には少しだけ女師匠と女弟子の関係性が気になってしまうが、今は追求を控えよう。


「あの、もしかして……今日は身体を重ねておれの特性を調べ様としてただけですか?」

これはもう疑う余地は無い。

要するにおれと魔女様はお互い全裸で擦れ違いコントみたいな状況にあったのだ。

「裸で肌を重ねると、より細やかな魔力干渉が出来るんだよ。まずは向き合い手を握ったり額と額を接触させて徐々に繋がりを深めていく感じ。まあ……今回は何も知らないお前に、ちゃんと説明をしなかった私に非があるから気にしなくていいよ」

「では、改めて手を繋ぐところからやり直しますか?」

「あははは、捻くれ者のお前ならそう言うと思ったよ。私からの魔力的干渉は既に始めてるから、今更どうなろうと構わないけどね。どうやらお前は魔力的な器が途轍もなく大きいらしい。魔力操作って能力値は、魔力的な器の大きさと実質的な魔力量との差分が影響してるから、お前の場合は魔力的な器が大きすぎてそれが原因で魔力操作が著しく低いって感じなんだと思う」

魔力の器の大きさと魔力量との差分が魔力操作の値に影響を及ぼす。

これが理論的に正しいかどうかはさて置き、魔法使いの間では常識的な事なのだろうと認識した。

「肌に直接触れる事で分かるのは、相手の魔力的な器の大きさと言う事ですか?」

「実質的な魔力量はね、離れていても分かるんだよ。これがどれほど精密に広範囲に感知出来るのかは魔法使いの優秀さを測る物差しになると言って過言無い。肌を接する事により分かるのは、魔力的な器の大きさと深層、流動、表層魔力の蓄積具合だね。天啓の石板の魔力評価で各属性魔力量は測れるけど、各層魔力の蓄積状況までは分からないから、相手をより深く知る為には肌を重ねる必要があるってことさ。敵対してる奴らはどうでもいいけど、今から自分が育てたい弟子の事は知っておきたいって思うだろう?」

「知れるものなら知っておきたいですよね。今現在、実質魔力が多い子よりも魔力的な器が大きい子の方が将来性がありそうだって思いますし。ただ、なんと言いますか……例えばですけど、白夜の様な老人の師匠がまだ幼い弟子と身体を重ねると言うのは、それが我が子であった場合は凄く複雑な気分になると思います」


例えとして白夜大先生の名を出して申し訳無かったが、具体的な例としては最高の素材だった。

だから要するにそれって、偉大な魔法使いともなれば魔力感知目的でヤリたい放題じゃん!と思ってしまうワケで。

「そう言う観点から、ウリヤ人はイセリアの文化と精霊魔法を嫌うんだよ。ウリヤ人の殆どがミロク教徒なんだけどさ、ミロク教は戒律が厳しくて成人前の性交渉を固く禁じているからね。老人が幼子と肌を重ねるなんて以ての外だから。アッチじゃ極刑に処されても不思議じゃないよ」

「それに比べるとイセリア人は性問題に寛容ということですか?」

「そう言う事になるね」

「では、多民族国家を興した際は……絶対に大問題になりますよね?」

「あー、それは確かにそうだわ。私から見てもイセリア人は性問題に緩いからね。そもそもそう言う問題を取り扱う法律が完全に形骸化してしまってるからさ。しかし……そうか、多民族国家を造るって事は、宗教や風俗的な問題にも対処していかなければならないって事か。あのさ、リョウスケ?」

「はい、なんですか?」

「お前さ、今日から私の弟子にしてやるよ。石板の測定結果を見た時は魔力操作が低すぎるから駄目かと思ってたけど、実質魔力を上げればなんとかなりそうな感じだし。長い目で見ればお前は魔法使いとして将来性があるから」

そう言うと魔女様は漸く弄り捲っていたおれの魔獣から手を放して、そのまま抱き着いてきた。

魔女様に弟子入りする件に関して、おれは多分拒否権を有していると思うが、ここで断る選択肢を有して無かった。

今からコトに及ぼうとしてる最中に、そう切り出して来るのは凄く狡いことだと思ってはいたけれど。


「――おれみたいな変人を、高名な灼焔の魔女の弟子にして大丈夫なんですか?」

「あはは、そんなことは気にする必要無いよ。お前はさ、弟子って言っても私が得意な魔法を教える訳じゃ無いから。形式上弟子にしておいた方が良い事もあるしね。どうにかして時空間魔法を使いこなせる様にしてやりたい。取りあえず当面は、私の実験台になって貰うけど」

これは弟子にしたからには、心置きなくヤラせて貰うと言う宣言なのだろうか。

「では、今晩はこれから魔法の修行ですか?」

「そうだね、今晩はもう少しお前の事を知れる様に、深く繋がってみようかと思って」

「それは魔女様が主導で、ですか?ササラの男の様にしてればいいです?」

「いや、今晩は弟子が好きな様にして良いよ。師匠のことをもっと触ったり舐めたりしてみたいんだろう?お前の国のヤリ方も気になるしね」

「おれの国のヤリ方だと、魔女様が貴族でおれが奴隷になったみたいな性行為になりますけど、大丈夫ですか?」

「別に貴族の気分を味わいたい訳じゃ無いけど、許す。取りあえず、今晩は何をされても文句は言わないと約束しよう――」

ここで会話は途切れてしまった。

おれの我慢の限界が来たと言うべきだけど。

再び唇を重ね、舌を絡める。

今回は勘違いや擦れ違いでは無くて、お互いに気持ちが乗っているので濃厚な行為となった。

魔女様はおれの国のやり方を気に入ってくれたのか、舌遊びには抵抗無く付き合ってくれた。

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