第6話魔術……どうなってるのよっ!?
「ゼーハーゼーハー――」
「なんでアンタが先に息切れ起こしているのよ!?」
数時間後、魔力を流していたオタカルが地面に両腕をついて息を切らせていた。
「お、おかしい。あれだけ他人の魔力を流し込まれては、素人どころか熟練だって命の危険があるはずなのに……?」
さらりととんでもない事実を吐いたオタカルに涼花は引いた。
「アンタ何とんでもない魔力を流してくれてんのよ!?」
「普通途中で体調不調を訴えるんですよ」
疲れきったオタカルはそう言うとテレジアの手を借りゆっくりと立ち上がった。
「本来ならそれを繰り返し徐々に魔力を感知出来るようになるんですが、涼花さんはなんというかそう……」
オタカルとテレジアはとんでもない異常なモノを見るような視線を涼花へと送った。
「魔力の才があるかはわかりませんが、とんでもない魔力耐性です」
「センパイはただたんに鈍感なだけですよ」
異常者を見る二人の異界人とあっけらかんと笑うカワサキに涼花はすねるようねそっぽを向く。
「ちっ!こういうのは普通勇者にはとんでもない才能があるべきじゃないの?」
「さ、さぁ?何分前例がないもので……」
テレジアは拗ねた涼花の機嫌をなんとかしようと思うも良い言葉が思い浮かばない。
魔力耐性(?)はかなりのもの、いや、異常すぎるがそれを言っても涼花は満足しない。
「過去にいたって言う伝説の勇者はどうだったのよ」
「う……何分伝説自体が古く、人気がある分後付の逸話ばかり多くて、何が本当かわからない状況でして」
「そんなものよく呼ぼうとしたわね」
本当にお茶を濁す為だけの儀式に呼び出されてしまった涼花にとってはとんだ災難である。
これは、想像以上に今後の身のふりを考えて行動しなくてはならない。
そう涼花は顎に手を当て少し考えた。
才能がない可能性は高いのなら、これ以上時間をかけるより自身は他の道を探した方が良い。
それはわかるが魔術の存在は惜しい。
「仕方ないわね。カワサキ!魔術はアンタが習得しなさい!」
「ボ、ボクですかぁっ!?ム、ムチャですよそんなぁ~」
カワサキは自身を指差し狼狽した。
「ムチャでもなんでもやるの!」
無理矢理押し付けられ戸惑いながらも、自身が颯爽と魔術を使う姿を想像したカワサキの頬は自然と緩んだ。
カワサキがその気になったのを確認すると、涼花は次の一手を考える。
自身に今何が出来るか?
そうではない。
選択肢を増やし、出来る事やるべき事を知る。
先ずは何より情報収集が先だ。
涼花は考え込むように唇の下に指を当てた。
「あ、あの涼花様?どうかなさいましたか?」
「なんでもないわ。それよりそろそろ夕日が暮れそうだけど――」
そう言いながら涼花が振り返れば、いつの間にか夕日が鐘楼に隠れ、小高い丘の上にある修道院から見下ろす郷の町並みは真っ赤に染まっていた。
それは見慣れた聖都の住人であるテレジアでもホッとしてしまう見事な景色であった。
ぐぅ、っと涼花の腹の虫が声を上げた。
花より団子。
どんな美しい光景も空腹の前には形無しである。
こんな状況下ならば仕方がないかもしれないが、目の前の状況と明日の未来に忘れていたが、今日の寝床と食事の事をすっかり忘れていたのだ。
まぁ、呼び出しておいてその日の食事と寝床すら寄越さないなんて事はないだろう。
涼花はテレジアに向き直った。
「それでアタシ達は今日何処に泊まれば良いの?」
「そうでした!教会の方で準備していますが、もう遅いので急いで向かわないとっ!ついてきて下さい!」
テレジアはそう言って二人を案内するようね少し早めに歩き出した。
「センパァイ」
「何だ?」
カワサキの呼び声に涼花は振り返る。
「もう少し恥らいを持ちましょうよ?」
「そんなもの腹の足しにならん」
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