不死の男を殺す方法
バブル
序 命日
井上麦
二月九日になると毎度、おじいちゃんのことを思い出す。
布団にくるまっていたら、おじいちゃん死んじゃったって、と言われたこと。
その日の給食でケーキが出るはずだったこと。電車ではなく車で岐阜へ行ったこと。
家で葬儀を上げることは珍しいのだと、後から知った。おじいちゃんの家は広く、知り合いも多かった。おばあちゃんもお父さんもお母さんも、お客さんの相手でてんてこ舞いになっていた。だから私は退屈して、いつも遊び場にしていた蔵に忍び込んだ。
蔵にまつわる最後の記憶は、楽しいものではなかった。
昔の農具、土器、本。
「これ、なに?」
聞けばおじいちゃんは滔々と、それの正体を、昔の人のエピソードを沿えて話してくれるのだ。だけど、あれだけは違った。
「そいつは触ったらあかん! しまってきなさい!」
何がおじいちゃんをそこまで怒らせたのか、分からなかった。刃物とか薬品とか、そんなものでもないのに。
毎年毎年思い出す。そしてようやくあれに巡り会えたとき、私は、その怒りの意味を知った。
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