【カクヨムコン応募中】届けてくれたのは恋でした♡ー彼と私の不純な関係ー
三愛紫月
第1話 初めての荷物
結婚して12年目を迎える私は、いまだに子宝に恵まれてはいない。
別に夫に飽きたとかではない。
ただ、不満はそれなりにもってはいる。
「
お義母さんは、会う度にそう言ってくるけれど。私ではなく治療に乗り気ではない夫を説得してくれたら助かると思っていた。
「まあ、修ちゃんに話しておいて」
と最後にいつも言われる。
だったら、最初から言ってこなければいいのにと思ってしまうのだ。
私は、お義母さんに会いに行くのを週に一度から三週間に一度に変更した。
その事について夫は、特に何も言わなかった。
それなら別に問題はない。
私も、お義母さんの事を気にするのはやめた。
お義母さんの事を気にしなくなると次は夫の事が気になる。
「はい。生活費」
「ありがとう」
私は、専業主婦をしている。
別に、専業主婦がいいと言ったわけではない。
ただ、7年前から体調を崩してしまい働けなくなっただけだ。
そのせいで、夫から生活費を渡される側になった。
無駄遣い防止策なのだろう。
毎月夫に渡される生活費は、6万円。
これが多いのか少ないかで言えば少ないのだ。
調味料は、ちゃんとしたものを使えというお義母さんのせいで。
夫が好んで食べる塩は、一袋1000円を越える。
肉は、国産のものしか食べないし。
魚は、刺身以外のものを食べない。
牛肉に関しては、100gあたり900円を越えているものしかいらないと言うのだ。
正直、夫の食べ方を見ていると安い食材を与えても気づかない気がしている。
なのに、最近。
職場の誰かから聞いてきたのか、オーガニック野菜がいいとか言い出してきて。
唯一の節約出来る場所まで奪われてしまった。
私には、こんなに我慢をしいてるのに自分は平気で通販で買い物をする。
夫が帰宅時にインターホンが鳴り何かを受け取っているのだ。
私だって欲しいものぐらいあるわよ。
格安スマホで、通販のショップを見る。
働いていた時に稼いだお金を少しだけ私の口座に残していた。
残高は、50万。
独身時代の貯金の残りと合わせて、本当は100万あった。
最初のやりくりの時にうまくできずにここから出していたせいで、残りは50万円。
大事に使わなければすぐになくなってしまう。
だけど、どうしても欲しいものを見つけてしまった。
いや、諦めよう。
また、次が欲しくなったら大変だから……。
ピンポーン。
「はい」
「黒崎急便です」
「あっ、はい。少々お待ち下さい」
インターホンが鳴り、慌てて玄関に出て行く。
「はい」
「お名前お間違いないか確認お願いします」
間違いなく夫の名前だった。
「間違いありません」
ドクンと胸が波打つのを感じた。
「ここに印鑑かサインいただけますか?」
「はい。あっ」
急いでいたから、印鑑を持ってくるのを忘れた。
「あの、サインでも?」
「はい。大丈夫ですよ」
彼は、ポケットに刺してあるボールペンを差し出してきた。
ダンボールの上に置かれた伝票に名前を記入する。
「ありがとうございます。少し重いですよ」
「あっ、はい。大丈夫です」
受け取る時に、指先が触れる。
ジンジンジンジン……。
痛むみたいに熱くなるのを感じる。
「ありがとうございました」
「ありがとう」
私は、ドアを閉めて鍵をかける。
受け取った荷物を玄関に置く。
私には、やりくりをさせておいて……。
自分は、何かを頼んでいるなんて。
悔しい。
今すぐにでも、働きに行けるなら行きたい。
だけど、まだ出来ない。
私は、このまま一生あの人の言いなりなのだろうか……。
私は、指先を見つめる。
サインを書く時に、左手の人差し指が彼に触れた。
少ししか触れていないけれどわかる。
彼は、私よりも年下で若い。
このご時世もあり、マスクをつけている。
目だけしかわからない彼のその下の顔を見たい。
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