転生したらメリーさんだった…なんで?
Qたろう
転生したらメリーさんだった…なんで?
【序章】メリーさん、東京に立つ(全6話)
第01話 ボク、メリーさん
目が覚めたら雑踏の中心で佇んでいた。
(あれ、さっきまで学校に...。ここ渋谷…スクランブル交差点、だよね。でも、なんだかいつもと様子が...)
そう思い、首をかしげながら街行く人波に視線をやると、その疑問はすぐに払拭される。
(みんな、背が高くなって…違う、ボクの背が低くなってる?)
それを確かめるため身体を見下ろすと、視界に映る地面がいつもより近い。それに、さっきまで着ていたはずの制服も見当たらなかった。
「…何この服、それになんか頭も重いんだけど」
状況は呑み込めないが、何かがおかしい。確かに昨夜はテスト勉強で夜更かししたが、居眠りしたからってこの状況にはならないだろう。家に帰った記憶も、着替えた覚えもないのだ。
仮に寝惚けながら電車に乗っても、身長が縮むことなどないはずだ。そう言うのはジェットコースターに乗った高校生探偵に任せておきたい。ついでにこの状況も解決してもらいたい。
「何にせよ、ここで立ってても仕方ない…よね」
そう呟き、人波に乗ってスクランブル交差点を抜け出した先にはショーウィンドウ。そのショーウィンドウに映るのは、今朝見た…いつも見てきた女子高生とは似ても似つかぬ姿。
白いワンピースに、同じく白いサンダル。腰まである黒髪に、おかっぱ頭の似合う小学生くらいの女の子。小さな鞄一つを肩から下げた少女がそこに居た。
「嘘…これが、ボク?…なんて冗談言ってる場合じゃないよね、これ」
身長は140cmくらいだろうか、平均身長だと抗弁していた元の身長には及ばない。ショートカットだった髪が伸びて目元を隠しているが、前髪を手で除けると可愛らしい顔が見えた。
「すっごい可愛い…。でも、ほんとどういうことなの...」
こんな見た目じゃ学校には戻れない。当然、家に帰ったところで迷子扱いされて警察に連れて行かれるだけだろう。説明しても誰がこの状況を理解できるというのか。そもそも自分が説明して欲しいくらいだ。
(くそう、ボクの小さい頃より可愛い...)
そうやってショーウィンドウの前で色々考えたところで、ふと気になることがあった。いや、気になることが無くなっていた。
(あれ?そう言えば家ってどこだっけ…。それに学校も。そもそもボクの名前は...?)
学校に通っていたのは覚えている。今日だって支度をして、学校では地理と日本史の期末テストを受けた。朝食の内容も覚えてる、トーストにオレンジジュース。それにヨーグルト。
それなのに通っていた学校も、住み慣れたはずの家の場所も、自分の名前も、家族の顔も分からない。思い出せない。
(これは夢?でも夢にしては何もかもがリアル過ぎるよ。帰り道で事故か何かに巻き込まれて記憶がおかしくなったとか?)
試しに頬を抓ってみたが、ちゃんと痛かったので夢ではなさそうだ。念の為、左右どちらも抓っておいたので間違いない。それなら後者だが、最後の記憶は
それならその記憶の方が夢だったのか。そうだとしても、この
「あ~もう、交番にでも行けば良いのかな...」
迷子です、名前も家も連絡先も分かりません…そう言われるお巡りさんのリアクションは見てみたい気もするが、流石に笑えるような状況ではないのは分かっている。そうやって頭を抱えた時、肩から下げたポシェットが目に留まった。
「そうだ、この中に何か...ッ」
そう期待と共に掲げたポシェット、その右下には ――
『メリーさん』
—— と、子どもらしい字で書かれていた。
…なんで?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます