9 ちょっとした不思議


 

「で、セツ? 何してたの?」

「ちょっと人がいない場所で話す」

 

 私はそれだけ言ったら、カナに引きずられていく。なぜ引きずられなきゃいかんのだ! 私は別に話したいことがあっただけなのに!


 


「で、何してたの?」

「掃除」

「それは知ってる。けどそれでなんかあったんでしょ?」

「そう。ちょっとこれ見て」


 私はまた安宿に閉じ込められています。なぜ1時間で二回も取り調べを受けなきゃいけないんですか! 

 そう思いながらもカナに見せたいものがあるのも事実。黙って装備の性能を開示する。


「何、これ?」

「掃除道具を掃除してあげたらそうなった」

「うん、ちょっとよくわかんないけどまたやらかした事だけは分かった」

 

 いややらかしてないって? ちょっとお掃除してただけなのにさあ。酷いと思いません? 私の幼馴染。毎回決めつけてくるのはやめて欲しい。


「カナの装備もお手入れしてあげれば……そういえば初期装備とかどうなってるの?」


 カナはサブ垢でも魔法使いにした。ローブを深々と被り、それっぽい杖もインベントリにあるそう。

 けどその性能を私は知らない。


「一応、効果はついてる。その装備からしたら弱々すぎるから見せないけど」

「じゃあ買い物に行こ」

「いや、初期資金もそこまでないし。サブキャラ補正で少しは普通よりお金を持ってるけど全然買えそうにないよ」

「私が買おうか? PKで資金も少しならあるし、奪った品を売ればもっといいし」

「嫌だよ。わたしはセツには頼らないの」


 むう。少しぐらいなら頼って欲しいものなんだけどな。


「一応、ギルドへと行けば装備とかも残ってるだろうけど、セツと一緒に一からやりたいからね」


 私の幼馴染の性格が良すぎる件。困るね。


「私の装備、だいぶ強いから追いつくの、大変だよ?」

「ふっふっふ。これでもわたしはゲーマーだよ? そんなことぐらい大丈夫」

 




「う〜ん、じゃあここでそれ、掃除しよう」

 

 弱くても強化するすべを持っているのだ!


「まだ理解してないんだけど。掃除してあげると機嫌が良くなって強化されるってことで合ってるよね?」

「オーケー」


 ではレッツアルコール消毒! うん、今思ったけど、アルコール消毒するだけで、機嫌を良くするのか、装備よ。ちょろいな。褒め続けたらもっと機嫌良くならないかな? 


『見習い魔法使いのローブの機嫌がいい! MND+10』

『見習い魔法使いの杖の機嫌がいい! MAG+10』

 

 うん? アルコールでしっかりと拭いてあげたのに、プラス10?

 あ、機嫌がいいになってる。超がついてない。


「おかしい」

 

 私の装備とのこの差はなんだ? レア度の違い? 確かに私のはユニーク装備、カナのはアンコモンという違いがある。一番に思いつくのがレアリティ。

 後は

 だけど、機嫌というからにはその装備が好むものがあると見るべきかな?

 あれだ、NPCの好感度上昇、テイマーの好感度上昇みたいな感じかも。ソレに応じた扱いをする必要があるのかな?

 まだ仮説だけど、私の装備は掃除道具。掃除道具の感情なんて理解できないけど綺麗でいたいのかも。


 けど少しは効果あるみたいだし、後で考えよっと。

 ふっふっふ。この短時間で4レベル上昇したもんだよね。

 ハッ! 街で道ゆく人に対してお金を巻き上げられないかな。

 十秒そこらでこれだから、だいぶ高値にしても食いついてくる人はいそう。

 よし、やろう。私の金、ひいては強さのために!


「ちょーっと待った。その顔、悪いこと考えてるでしょ。街中であれだけ目立つことをしだしたのに、まだ変なことする気?」

 

 いけなさそうになりました。けどね、カナ。これはカナのためでもあるんだ。私がたくさん稼げばカナも遠慮なく私に注文できるでしょ。だから私に早く掃除をさせるんだ!


「急にしゃがみ込んで地面とキスするぐらい近づいたと思ったら、顔をあげて、その時のセツの眼が赤黒く染まったのに驚いてたのに。また急に掃除を始めるし。懲りないんだから」

 

 え、眼? 


「私そんなことになってた?」

「う〜んと……ほら」


 おう、まじやん。カナがわざわざスクショを撮っていたようでそれを見せてくる。

 確かに私の眼が暗紅色に。これ、あれか。掃除眼の影響がアバターに出てるのか。むう、こんな厨二的な影響があったのか、掃除眼。けどもうこの格好に慣れている私にはもう一つ恥ずかしい要素が加わってもなんともないもんね!


 一応聞いておくだけ私の案を聞いておこう。


「カナ〜。この私の掃除でお金、取れない?」


 この短い私の言葉だけでも理解をしたのだろう。すぐに返答が返ってくる。


「つまり、街中で堂々と人を呼び込んで、この装備の強化と引き換えにお金を巻き上げるってことだよね」

 

 そうそう。


「絶対だめ。これ以上目立つと私の心情的に厳しい。これからポーションとかを買い込んだ後ギルドまで行くから。この街そこまでいい装備はない。だからお金だけ稼いでも装備とかは買わなくてもいい。後は……とりあえず落ち着きな。セツはめちゃくちゃ興奮して思考回路が……まあ、いいか」

 

 最後の声はボソッとして聞こえづらかったけど、私興奮なんてしてない。

 いつも通り、オーケー。


「ちょっと冒険者ギルドにも行きたいし、ポーションとか装備も心許ないから、買い出しに行こっか」

「よし、行こう!」



 少し休憩できたのでこれから必需品を買うらしい。カナ情報によるとカナだけならギルドまですぐ行けるらしい。そしてそこで物資を取ってくることも可能。けどそれをしないのは本気で一から私とやりたいから、とカナ自身の口から聞いた。ゲームの時は毎回そうしてくれるんだよね。

 思えば私がゲーム好きになったのも最初にカナが誘ってくれたときからだ。そこからは私が付き合わせたりもしたけど基本的には一緒にいろんなゲームをプレイしている。けどカナは頑なに私と同じ進み具合で遊ぼうとする。

 カナには悪いと思う。だからこそ私はカナに楽をさせたかったんだけど。


 カナに合わさられてるのに私が合わせないわけにもいかないしどうせ装備も欲しかったし、買い物に付き合うことになった。

 


 


 ◆買い物付き合わされ中◆


 とりあえず装備は後回しで、ポーションを買ったりドロップ品を売ったりをカナに任せて掃除ナウ。


『ゴミの溜まり場! 経験値を100獲得』

『レベルが10に上昇』

 

 

 お、レベル上がった。ステータスに早速振っといてと。更に装備チェック! マイーナちゃんによると、装備が強くなる可能性があるらしいからね。5レベルごとに確認しとかないと。


 作業着……じゃない。ホウキ……でもない。じゃあスプレーか? ……違う。え、じゃあ、ゴミ箱?


 ゴミ箱自体は成長してない。じゃあスキル?


 スキル【異次元のゴミ箱】

 ・ゴミならどんだけでも入る! 【特殊】

 ・ゴミを力に変える魔法のゴミ箱 【特殊】

 ・ゴミがある場所と異次元のゴミ箱を繋ぐ【特殊】

 ・ゴミの元の力が怨念となって戻る……かもしれない【特殊】

 

 なんか説明増えてる〜!


 そこから詳細! 

 

 ゴミがある場所と異次元のゴミ箱を繋ぎ、その場所にあるゴミを異次元のゴミ箱に収納する。場所とゴミ箱間で人を移動させることも可。接続可能場所【1】

 ゴミになる前の力を取り戻す……かもしれない。

 

 

 つまり? ゴミがある場所を設定しておく。そうすることで、ゴミをこっちへ持ってきたりそこにいる人を移動させれる? 

 そしてゴミになる前って、どうゆうことよ? そして怨念となって、力を取り戻す……かもしれないってマジで意味がわからないんですけど!

  


 

『マイーナからお届け物です。【ゴミについて】を受け取りました』


 

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