2
中間テストの最終日、私は茶太郎のリードを引いて、美澄さんと家の近所を歩いていた。私たちは、時々一緒に夕方の散歩に出かける。今も茶太郎は短い脚をちょこちょこ動かして、可愛いお尻をぷりぷり振って、機嫌よく先導している。
美澄さんは、この前の休日に出雲さんの所に行ったそうだ。
「なにか、悩んでるの?」
占って欲しいような心配事があるんだろうか。
だけど彼女は、違う違うと笑って軽く手を振った。
「前からちょっと興味はあったんだよね。それで、うちの職場の女の子たちも気になってるみたいで。だけど占いって、どこが信用できるところなのかわからないじゃない」
「美澄さんが様子見に行ったってこと?」
「あたり! どんな感じか、偵察することにしたの」
彼女は、職場でも素敵なお姉さんみたいだ。
「どうだった」
「よかったよー。ちょっとお値段張るし、大丈夫かなって思ってたんだけど、いろいろ話聞いてくれてね。楽しかった」
頷きながら、旭と出雲さんの部屋に行った時のことを思いだす。確かに彼は聞き上手で、緊張していた私も話しやすかったし、旭が懐いている理由もよく理解できた。
「心配事があったら、いつでも来てくださいねって。頼もしいよね。売れてるわけがよくわかったよ」
既に私は一度会っているんだけど、それは言わないことにする。美澄さんはそんなことをする人じゃないけど、私や旭を辿って特別に会わせろという人が出てきたら、出雲さんに迷惑だから、出来る限り内緒にする。
「梓ちゃんみたいな学生さんにも、有名なんじゃない?」
「うん。私の友だちも気になってるみたい」
流行りに疎い私でも、度々その名前を聞くようになっていた。先日も、先生が認められるようになったんだと、旭が喜びを口にしていた。
横断歩道の赤信号で立ち止まって、茶太郎が私たちを振り返る。ぺろりと赤い舌を出して、ふさふさの尻尾を振っている。
「茶太郎も見てもらう?」
私が屈んで頭を撫でると、嬉しそうに足元で仰向けに転がった。「こんなとこで寝たらダメだよ」美澄さんが可笑しそうに笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます