地球は魔族に支配されたようです。

不思議たぬき

第1話


やべえっす、まじやべえっす、魔族!??

何かの比喩っすか!???


宇宙人みたいなことっすか?

それとも全日本人を巻き込んだ壮大でスペクタクル(?)なドッキリっすか!?


来週学会で東京に行く予定だったから助かりました、もう少し奴らが来るのが遅かったら私も巻き添えに……ひえぇぇぇぇ!!



とりあえず、今はあの偉そうな穀潰しの先輩を呼びに行かないと!

どうせこんな時でもネットもテレビも見ずに、よくわからない研究を続けてるっす!!



「ああああ阿手原あずはら先輩!!! 大変っすよ!!!! 東京が変な生命体に占拠されて——


ん、あれ、先輩?



「なんすか……それ?」

「平野……。俺の研究はなんだ?」

「素粒子論の話っすか?」

「違う。本当の研究だ」



本当の研究って、あれっすかね。

ダークマターとか、反重力とか、超能力とか、魔法とか——


魔法? 魔? 魔族?



「くくく……ついにこの世界にも魔法が、魔力が検出されたのだ」

「つまりそれって……」

「ああ。魔術だ」



薄暗くボロ臭い研究室に真っ黒な球体が浮かんでるのは、魔法ってことっすか?


投影……じゃないっすよね。水みたいに滑らかだけど、鉄のように安定してるというか……あ、触ってみると液体金属みたい。冷たくはないんすね。



「おい、ナチュラルに触るんじゃない」

「あ、すんません。ということはこれ、魔法ってことっすよね?」

「ああそうだ。くく……長年イメージの中だけで構築してきた術式が遂だ」


これの何が良いのかわからないけど、とりあえず先輩はなんか大丈夫そうだってことはわかったっす。


「てか魔族って、先輩が呼んだわけじゃないっすよね?」

「ふん、呼びたくても呼べるか。肝心の魔力が無かったのだからな」


いや知らんすよ……。



「それはわかったっすけど先輩、状況わかってます? 東京が占拠されたんだから茨城にもすぐ来るっすよ!! 逃げないと!!」

「逃げるだと? なに阿呆な事を言っている。状況を把握するならこちらから行かねばならんだろう」



いやいや先輩、今になってなんでそんなアクティブになってんすか。

今まで研究室に引きこもりロンリーだったじゃないすか!!


——ん?

私があわあわしている間に外がなんだか騒がしく……



「向こうからサンプルが来てくれたか、ありがたい」



窓の外から聞いたこともない雄叫びが聞こえたと思ったら、窓ガラスが爆風レベルで飛び散ってきます。あぶなっ!


「なんすかなんすかなんすかなんすか」

「平野、動くなよ」

「なんすかーーーーっ!!!」



割れた窓の向こう側には二足歩行するでっかい豚の化け物。なんか斧まで持ってるっす!!

でかいっす、人間の倍はあるっす、あれが魔族っすか? 怖いっす!!!



「単騎か。まあいい」



先輩が窓の外に身を乗り出します、それは流石に危ないっす。

ああでも足が動かない、声も、え、これ私たち殺されます?



「ウオガアアアアアアアッッ!!!」



ほら見たことかーーー!!!

もう殺る気まんまんじゃないっすか!!!

私たち何かしましたっけ!!?



「この声は敵わんな」



先輩が指をくいっと動かすと、さっきの黒い球が高速で豚の方へ飛んでいきます。

あれそんな早く動かせたんすか。てか、あれぶつければなんとかなる!??


豚もこっち走ってきます。はやいはやい!!

足音がえぐいっす、恐竜じゃないんだから!!



先輩がまた指をくいっと動かします。

すると……黒い球から数本の細い針が伸びて豚を串刺しに。うげえ……。



「先輩……あれなんすか……」

「どっちだ?」

「どっちもっすよ……豚も、黒い球も……」




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