第4章:最終章

第4章71話:船出

――――最終章――――



10日が経った。


昼。


晴れ。


アリスティは、フリーナの領主邸りょうしゅていに呼び出された。


そこで、いよいよ船出ふなでのことが告げられた。


「今から一週間後の朝に、ルクスヴェンより、船を出します」


と。


かくしてアリスティは、ルクスヴェンへと移動することになった。


なお、フリーナも、ルクスヴェンに用事があるということで、一緒に移動するそうだ。







そして。


一週間後。


朝。


快晴。


絶好の航海日和こうかいびよりとなる。


アリスティは、ルクスヴェンの港にて、船の前に立つ。


立派な帆船ほせんであった。


しおの香りを含んだ風が、穏やかに吹きつけ、アリスティの髪を優しく撫でる。


フリーナやクレディアが見送りにきてくれていた。


「フリーナ様……このたびは、船を用意していただき、本当に、ありがとうございました」


と、アリスティは言った。


「いいえ。こちらこそ、あなたには感謝していますから」


と、フリーナが答える。


クレディアが言った。


「無事に帰ってこいよ。アリスティ」


「はい。ありがとうございます」


と、アリスティは答え、船に乗り込む。


船乗りが号令をかけた。


船が動き始める。







船はゆっくりと進み、やがて波に乗り始めた。


今回、海に出た船は、この一隻いっせきだけだ。


船には、航海士こうかいし船長せんちょう……


クルーたちの他に、魔力病の治療がおこなえる女医も乗っていた。


あとは、海の魔物たちと戦うための護衛兵ごえいへい


全員あわせると、結構な乗組員のりくみいんの数である。


(これだけの人たちが、私のために動いてくれた……感謝しないといけませんね)


タイラントワーウルフを倒した報酬なのだから当然だ……


などと思うつもりはない。


船の旅は、命がけだ。


『孤島に取り残された人を助けてほしい』と頼まれたとして、誰しもが引き受けてくれるわけではない。


今回の船旅ふなたびは、大部分が、船員せんいんたちの善意によって成り立っている。


あとで礼をしたいところだ。







日が暮れて、やがて夜になる。


晩御飯ばんごはんかんパン、それから防腐魔法がかけられた果実や肉である。


防腐魔法によって腐らないようになっているため、船の上でも、いろんな食事を楽しめる。


アリスティは、自分に与えられた部屋で食事を食べる。


狭い部屋だ。


最低限、食事ができて、寝られる程度のもの。


まあ、ぜいたくは言うまい。


アリスティは、食事を終えた。


しばらく一服してから、静かにベッドに入った。






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