第3章62話:予想
そして、それは事実であった。
タイラントワーウルフが出てくるまでは、こちらに勢いがあったが、今はもう無い。
まだ死者は出ていないが、それも時間の問題だろう。
じわじわと傾きつつある
まさか、ここまで追い込まれるなんて。
(負ける……?)
それは、ダメだと。
アリスティは思う。
(それじゃあ、お母さんも、ユーナも、助けられない)
自分が、必死の思いで海を越えてきたのはなぜか?
慣れない言語を覚え、今日まで冒険者としての活動を続けてきたのはなぜか?
思い出せ。
こんなところで、負けていいはずがないだろう。
アリスティは起き上がり、立ち上がる。
(集中です……)
精神を統一し、集中力を高める。
そして、わずかな時間の中で、思考の海にもぐる。
自分がタイラントワーウルフに押し負けたのはなぜか?
簡単だ。
攻撃が当たらないからだ。
タイラントワーウルフには、恐るべきスピードが存在する。
だからアリスティが拳を振るっても、タイラントワーウルフに
ならば、どうすればいい?
(こちらのスピードを高めて対抗するのは、無理そうですね)
足腰に魔力を込めれば、多少はスピードを上げられる。
しかし、それだけでタイラントワーウルフのスピードに追いつくのは厳しい。
あと一歩のアイディアが必要だろう。
(スピードで勝てないなら……予想する、とか?)
相手の動きを予想する。
そして、予想した先へと拳を繰り出せば……
相手のスピードが速くても、攻撃を当てられるのではないか?
口で言うほど簡単ではないだろうけど……
やってみるしかない。
「ふう……」
意志を固めたアリスティ。
彼女が向かう先は、クレディアたちと交戦しているグランウルフロードだ。
地を蹴って、駆け出す。
「ガウ?」
グランウルフロードがこちらを振り向こうとした。
しかし、
「ハアッ!!」
アリスティが短くつぶやき。
拳を放つ。
グランウルフロードが飛びのく。
速い。
かわされる。
だけど。
(ここ……ッ!!)
相手が回避した先を予想して、拳を放つ。
すると――――
「ガッ!!??」
見事、グランウルフロードに命中する。
アリスティの拳を食らったグランウルフロードが、昏倒した。
クレディアや、ヒューリスが呆然としている。
だが今は、クレディアたちと話している暇はない。
アリスティは、今の攻撃をフィードバックする。
(当たった……でも、ジャストポイントではありませんね)
良いポイントを打たなければ、効率よく力が伝わらない。
もっと試したい。
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