第3章58話:王者

「ハアァァァッ!!」


セレーネが交戦していたグランウルフロードに、魔法光まほうこうのスパークを放つ。


さっき紫雷しらいで援護してくれたお礼だ、こっちも援護しよう。


「ふっ!!」


「オラァッ!!」


アリスティとバルードがグランウルフロードに攻撃を仕掛けた。


そこにセレーネも加わって斬撃の連打。


他の雑魚の接近はミニドラゴンが氷柱攻撃つららこうげきで阻む。


この包囲には、グランウルフロードもひとたまりもなく。


あっという間に命を散らすことになった。


「よし、2体目撃破ァ!!」


バルードがふたたび叫ぶ。


そのときクレディアが声を上げた。


「こっちも手伝ってくれ!」


アリスティたちは援護要請に応じて駆けつけた。


セレーネとミニドラゴンが近くのグランウルフを、魔撃まげき氷撃ひょうげきで蹴散らす。


そのあいだに、グランウルフロードをタコ殴りだ。


まずアリスティがグランウルフロードのアゴをアッパーカットで突き上げる。


ひっくり返ったグランウルフロードに群がるようにクレディア、ヒューリス、ヴァンデルが追撃を仕掛ける。


退路を塞ぐように後詰めにはバルードが立ちはだかる。


よし、これで3匹目も――――


「危ない!!」


オーファンが叫んだ。


轟風ごうふうが迫ってきた。


赤い毛並みをたなびかせて、一匹の魔物が接近する。


この場を支配する王者――――


タイラントワーウルフであった。


グランウルフ軍の劣勢を見てか、ついに親玉が動き出したわけだ。


二本足で立っていたタイラントワーウルフが、一時的に四本足で大地を蹴って、迫ってくる。


凄まじいスピードだった。


50メートル以上の距離を瞬時に詰めて、セレーネに突進する。


もちろんセレーネもひるんではいない。


即座にスパーク球を作り出して投げつける。


しかし――――


「なっ!?」


セレーネの顔が驚愕に歪んだ。


タイラントワーウルフは、なんと、セレーネのスパークなど意に介さず、そのまま突っ込んできたのだ。


スパークの光を浴びる。


しかし全くダメージを受けた様子もない。


魔法光の中を突っ切って、タイラントワーウルフはセレーネに体当たりをした。


「くああっ!!」


吹っ飛ばされたセレーネ。


バルードがすかさず大剣を振りかぶる。


「この野郎!!」


しかし大剣を軽々とかわしたタイラントワーウルフが、バルードの鎧を殴りつける。


「ぐああああっ!!?」


10メートル以上吹っ飛んだバルードが、地面をもんどり打つ。


アリスティは叫ぶ。


「バルードさん!?」


全員の意識がタイラントワーウルフに向く。


その隙に、倒しかけていたグランウルフロードが退避していた。


しまった。


仕留めそこなった。


だけど今はグランウルフロードに構っている余裕はない。


アリスティは、タイラントワーウルフをまっすぐ見据えた。


タイラントワーウルフもまた、次の標的をアリスティに定めたようだ。


二本足で立ち、アリスティを見据えるタイラントワーウルフ。


――――アリスティは地を蹴る。


タイラントワーウルフに接近。


そして拳を放つ。

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