第3章41話:アリスティの無双

オーガを倒したアリスティは。


そのまま、近くにいたグリーンウルフを蹴り飛ばす。


グリーンウルフは、まるで草原の上を滑空するように吹っ飛び……


やがて地に落ちるや、激しくもんどり打ち、50メートルほど先でようやく止まる。


もちろん、グリーンウルフは絶命していた。


アリスティは、さらに近くのホブゴブリンを殴り倒す。


ルグイノシシを蹴り殺す。


全て徒手空拳。


全て一撃である。


打撃だけで撲殺ぼくさつしていく。


無双の強さを誇るアリスティの戦いぶり。


城壁屋上から何度も兵士たちの歓声が炸裂していた。






アリスティに一匹の魔物が迫る。


オーガである。


小オーガとは、小サイズのオーガという意味であるが、それでも、人間サイズぐらいの体格はあった。


こんぼうを握っておらず、筋骨隆々の身体を活かした徒手空拳だ。


そんな小オーガのパンチを、アリスティはまともに顔面に食らった。


「……!!」


だが、小オーガは驚愕する。


モロ直撃だったパンチだが、アリスティには何のダメージも与えていなかったからだ。


――――アリスティが、拳を握り締める。


反撃が来る! と察した小オーガは、慌てて防御体制を取った。


アリスティが拳を振りぬく。


その拳は、ちょうど、小オーガがクロスした腕に当たった。


小オーガのガード成功だ……と誰もが思っただろう。


しかし。


拳をぶつけられた小オーガの両腕は、アリスティの拳の威力に耐えられず、粉砕骨折した。


それだけに留まらない。


アリスティの拳から放たれる圧力が、小オーガの背骨や頚骨にまで伝わり、脊椎を破壊し、首の骨を砕け散らす。


そう。


アリスティの攻撃の前に、防御なんて関係ない。


当たったら終わりなのである。


命中=死。


それがアリスティという、究極のファイターの力であった。


小オーガは、全身の骨がメチャクチャに破壊されて即死しながら、草原の上を激しく吹っ飛ばされていった。


やはり50メートル近く吹っ飛んだ小オーガは、もちろん、二度と立ち上がることはなかった。







さすがに、周囲の魔物たちもビビりはじめた。


攻め込んできた魔物たちには、大した知性はない。


それでもアリスティの異常性ぐらいは、本能で感じられた。


アリスティは、本気のパンチもさることながら、無造作に振るった拳ですら、即死級の威力を秘めているのだ。


怯えずにいられるわけがない。


アリスティに近づいたら最期。


間合いに入ったら死だ。


ゆえに魔物たちは、じりじりと後退し、距離を取ろうとする。


絶対に勝てないと理解し、逃亡を決め込む魔物もいた。

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