第2章26話:都市

かくして、アリスティはベルニーとともに都市に向かうことになった。


目指すは【自由都市アトラミルカ】である。


港町ルクスヴェンを発ち……


街道を歩くこと3日。


アリスティは【アトラミル山】という山を登っていた。


すでに頂上まで登り切ったので、現在は、下山している途中であった。


このアトラミル山を越えた先に【自由都市アトラミルカ】は存在するらしい。


アトラミル山の中腹。


昼。


抜けるような快晴。


ふと、下山途中の山道に、遠くを見晴らせる崖が現れた。


その崖の上に立って、地上を眺める。


「わぁ……!」


アリスティは思わず感嘆の声をあげた。


崖から見渡せる地上の中心に、大きな都市が存在していた。


赤い屋根の家が、所狭ところせましと建ち並ぶ都市。


都市の中央奥には小高い丘があって、その丘のうえに、立派そうな屋敷が建っているのが見えた。


都市の周囲には、城壁。


その城壁の外側を、ほりが取り囲んでいた。


「あれが、自由都市アトラミルカだよ」


と、ベルニーが説明した。


「人口3万人ぐらい……だったかな」


アリスティはベルニーを振り返って、尋ねる。


「それって多い。とても。ですよね?」


「まあ、そうだね。一般的な国の王都でも3万~5万人ぐらいだからね」


「なるほど」


アリスティは、感動を胸に、ふたたび、眼前の眺望を見つめる。


崖の上から見晴らす景色は壮観だ。


まるで一枚の絵を眺めているような気分。


絶景である。


あるかなきかの風が、アリスティたちの髪や服をたなびかせる。


「さ、進みましょう。もうじきにアトラミル山を下山し終わるから、あとは街道を一直線よ」


「はい!」


快活に返事をしたアリスティが、ベルニーとともに下山を再開する。








1日後。


アリスティたちは無事に、自由都市アトラミルカにたどり着いた。


街道で立ち尽くして、城壁を見上げるアリスティ。


「すごい建物……」


こんなに大きな建築物は、生まれて初めて見る。


城壁の周囲は水路が取り囲んでおり、正門に向かって、石橋が造られている。


アリスティたちは、石橋を渡って、正門へと辿り着いた。


衛兵たちに入場料を支払ってから、正門を抜ける。


視界に広がったのは、馬車が四台は並んで通れるであろう大通り。


その大通りの左右に、白壁のアパートメントが建ち並んでいる。






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