第2章

第2章18話:砂浜

―――第2章―――



3日かけての航海。


見事、島から大陸まで到達したアリスティだが……


疲労は極限に達していた。


そのため、眠りに落ちてからは、泥のように爆睡した。


20時間ほど眠り続ける。


深い、深い眠りの淵。


ふと天からの陽射しがまぶたを照らした。


まぶしさに、アリスティの意識が浮上する。


「ん……んん」


目を開ける。


抜けるような快晴が広がっていた。


太陽の高さからして……昼だろう。


アリスティは上体を起こした。


砂浜。


寄せては返す波。


優しい潮騒しおさいが、耳に心地よい。


視界の斜め下で、何かが動いた。


目を向けると、ヤドカリが一匹、砂のうえをてくてくと歩いていた。


穏やかな光景であった。


(私……無事に大陸へと辿り着いたんですね)


実感が沸いてくる。


まあ、ここが本当に「大陸」かどうかは、まだ定かではない。


遠目から見るかぎり、大陸に思えた……が、実は巨大な島の一部が見えていただけという可能性もある。


でも……建造物があった。


街があった。


「……」


海を泳いでいるときに発見した、赤い屋根の街。


きっとアレが「ミナトマチ」であろう。


実際に訪れたことがないので、母たちに聞いた程度でしか知識はないが……


ミナトマチとは、魚を獲って食べたり、魚を売ったり、海を使って交易をして、生活を営む街である。


当然、街なので人がいるはずだ。


(さっそく行ってみたい……ところですが)


お腹が空いた。


腹ごしらえをしたい。


あと、海水に濡れたままなので、たぶん匂いもひどいだろう。


鼻が慣れてしまっているだろうから、自覚はできないのだが……


現在の自分が、驚くべき激臭を放っていることは想像に難くない。


水浴び、および、洗濯をしてから、街に向かいたいところだ。


「まずは、食事……ですね」


火魔法が使えるので、焚き木さえあれば、火の確保は可能だ。


問題は食材。


海に入って、魚でも獲ろうか?


いや……


しばらく、海に潜りたくはない。


もう一生ぶんぐらい泳いだしね……。


陸の生物を狩って、ごはんにしよう。


そうと決めたら、すぐにアリスティは立ち上がる。


砂浜の背後に広がる、森へと視線を向けた。


(この森の中なら、手頃な食材が手に入るでしょう)


そう推定し、アリスティは歩き出した。





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