ふと自分の歩いている砂浜の先を見ると、そこに一人の人影を見つけた。

 真っ白なワンピースを着ている少女。

 その長い黒髪の少女はまっすぐ海を見つめている。

 そんな風景を見て、文は、この少女のいる世界は絵になる、と思った。

 鳥の鳴く声が聞こえる。

 それに波の音。

 文はゆっくりと歩く。

 だんだんと少女と文の距離が近づいていく。

 その少女の横顔を見て、思わず文はその足を止めた。

 綺麗だ。

 と、心からそう思った。

 少女は本当に綺麗だった。

 今まで文の出会った女性の中で一番美しかった。

 文は一目でその心を奪われた。

 でも、文が足を止めた理由はそれだけではなかった。

 その美しい少女は泣いていた。

 海を見ながら泣いていたのだ。

 それにその少女はお腹の前辺りで、両手で抱えるようにして、一冊のスケッチブックを持っていた。

 文房具店で売っているよく見かけるタイプのスケッチブック。

 そのスケッチブックは今、文が持っているスケッチブックとまったく同じものだった。

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