芦原蛯名という男の人生

チャーハン

閉じ込められた男

 生者には平等に朝が訪れる。

 それは、芦原蛯名あしはらえびなにとっても同様であった。



 最近有名なコメディアンが出演している生放送番組を再生しながら、今日も彼はもしゃもしゃとパンを食べている。カレーパンと牛乳を貪る彼の表情は、どこか暗い。目元にある黒染みのくまがそれを強く印象付けていた。特に代わり映えのない食事を終えた後、適当に歯磨きを済ませる。


 

 うがいをしたうえで洗顔を済ませた後、彼は自室に向かっていった。不衛生な風貌と異なり、彼の部屋はきれいに整っていた。白色の本棚には専門書が何冊か詰められている。机にはデスクトップパソコンが置かれており、隣にディスプレイが配置されていた。後頭部をポリポリと搔きながら、彼は椅子に腰かける。


 パソコンの電源をつけると、五月蠅い起動音と共に画面上にOSが表示された。何度も見るそれを無関心に眺めていると、パスワード入力画面が表示される。カタカタと音を鳴らしながら、男はそれに回答した。


 しばしループ処理が行われた後、男の画面上に見慣れた初期画面が表示される。

 画面上の情報に見落としがないか確認した後、男はメールボタンをクリックした。


 画面上に表示されたのは、知らないメールアドレスからの定期メールだ。


「――――はぁ………………また、だめか」


 男は長い長い溜息をついた。

 画面上に表示された文面は、男の気分を下げるには十分だったからだ。


***

 実験協力者、芦原蛯名さん

 

 平素より大変お世話になっております。

 この度は、私共の実験に協力していただきありがとうございます。

 そして、残念なお知らせです。


 あなた様は、間違えを見落としました。

 したがって、一日目からまたやり直していただきます。

 大変でしょうが、どうぞよろしくお願いいたします。


 足利未来研究所の開発メンバー

***


 最悪な気分だと、芦原は思った。

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