第19話 ワールドエリアボス2
「さて、アズ君、君には色々と聞きたいことがあるのだが?」
「そうね、私も是非聞きたいわ。アズ、昨日のアレ、貴方よね?」
昼休みの教室、お弁当を広げながら、京と委員長に尋問されていた。
しかたなく今までのことを話す。
「つまり、アズはリアルJKと最前線に行き、更にメンバーを増やしてハーレムパーティを築いて、遂には念願の魔法使いになったと。ふ~ん、お楽しみね」
話を聞いた委員長がジト目でまとめる。
「いや、言い方! 楽しいし、念願の魔法使えたけど、まとめ方に悪意ありません?!」
「これは……、ギルティ! だな。うらやま……けしからん。ってか、やっぱりワールドクエストの進行の魔法行使はアズだったか」
「ああ、それで、週末にはワールドエリアボス戦に参加することになった。京は来れそう? ってか京って強いのか?」
「週末のボス戦だろ、一応俺も参加要請を受けてるし、合流する予定だよ。これでも攻略組の一員だから弱くはないので安心してくれ」
自信満々な顔で京が笑う。まあ、伊達にベータプレイヤーではないのだろう。
「そういえば、
『アーサーと愉快な仲間たち』は攻略組でも一二を争うクランらしい。コイツがそんなクランで名前が知られているって言われても中々信じられない。
「え、
「あれ、本当に京ってそのアーサーなんちゃらのメンバーだったのかよ。まあ、名前しか知らないみたいだったけどな」
浮かれる京に残念な真実も教えておこう。
「なっ……、いや、名前が知られてるだけで良しとしよう」
「京、あんた無駄にポジティブね。私も参加したいけど今は反対側なんだよねー」
「委員長、反対側って?」
「アズと京は西の最前線、クレンの町だろう。私は東側の最前線を拠点にしているからな、今から西に行くのも難しい……」
委員長は非常に残念そうな顔で一息入れるようにお茶を飲み、ニンマリとした顔になる。
「……で、ボスはともかく、そのパーティメンバーはエフィと言ったよね。詳しく聞かせてもらおうじゃないか」
どうやら、尋問はここからが本番だったらしい……。
◆ ◇ ◆
「えーっと、エビって、あの海とかにいる海老ですか?」
「ん、エビせんとかの海老」
俺はクレンの町の帽子屋で
ワールドエリアボスとして出現したモンスター、その姿がエビだと言うのだ。
「つまり、エリアボスが海から出てきたと……。ところで、その……、エビは強いんですか?」
エフィもエリアボスがエビというのに頭がついていっていないような風だ。
「強い……、というよりギミックボスの可能性が高いと考えているよ。まあ、その辺も含めて作戦会議をしよう」
店の奥から顔を出した店長が手招きをした。
奥の部屋では
「ところで、ギミックボスって何ですか?」
皆が揃ったところで首を傾げたエフィが店長に聞いた。
「あー、エフィさんはアンメモ以外のゲームはあんまりしてない?」
「はい、アンメモも従姉妹に勧められて始めただけで、それこそ初ゲームなんです」
「それならばわからなくて当然か。ギミックボスというのは大雑把に言うと倒すための手順が必要なボスのことだな」
ボスステージにある仕掛けを動作させないと倒すことが出来なかったり、倒すためには特定のアイテムを使用する必要があったりするような特殊条件があるボスを総じてギミックボスという。
「今までのエリアボスは特にそんなことはなかったが、偵察に行ったメンバーによるとダメージを与えられずにある程度の時間が経つと海へ戻ったそうだ」
どうやらワールドエリアボスは定期的に海から上がってくるタイプらしく、また、時間経過で海に戻っていくようだ。
また、物理攻撃耐性が高いのか、何らかのギミック攻略が必要なのかダメージを与えることができない。
「ただ、今回のワールドエリアボスに関しては予想が立っている。ギミックは――」
―― アズ君の魔法だ。
「おぉっ?!」
「あ、やっぱりそうなんですね」
「今回のワールドエリアボスの出現のトリガーとなったのは『プレイヤーによる自力での魔法行使の確認』であり、一般に通知はされていないがアズ君の魔法だ。それに物理耐性があると思われるボス、魔法を当てればその耐性が外れる可能性も高い」
「そんなわけで、ワールドエリアボス戦はアズくんがキーマンになること間違いなしね」
「えーと、期待されるのは嬉しいのですが……、俺の使えるというか、使えるようになった攻撃魔法といえるかわからない魔法は『揚げ足を取る』だけなんですが……」
確かに角兎に対しては特効レベルで効いたと言えば効いたかもしれないがボスに効きそう気はしない。
「ん、アズなら出来る。エビせん楽しみ!」
これまた眠茶さんが根拠のない自信を持って言い切るが、多分エビせんが食べたいだけだろう。
しかし、本当にエビせんになったら……、いや、無理じゃないかな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます