第10話 ワールドクエスト2
―― 喫茶リンドウ
『喫茶リンドウ』は俺の通う高校とは反対側の駅近くで営業しているコーヒー専門の喫茶店だ。
「アズ、アンメモはどうだった?」
普段は週3日の予定でバイトに入っているのだが先週の土曜日はアンメモに新規ログインするために休ませてもらった。
もっともマスターもアンメモベータ勢らしく、快く送り出してくれた。
「思った以上に凄かったですね。フルダイブがあんなにリアルだとは……アンメモが注目されるはずです」
まだ来店客も少なく数人の常連客が居座っているだけのためカウンター内で準備をしながら店長とのんびりと話をしていた。
「え、
カウンター席で文庫本を広げていた女子高生が食い気味に顔を上げた。
彼女は
「そうそう、正式サービス開始の募集になんとか当たって、先週末の土曜日に初ログインだったんだ」
「あ、それで土曜にお見かけしなかったのですね」
「そうなんだ。あれ? もしかして狩宮さんもアンメモやってるの?」
「えーと、ええ、私も
思ったよりアンメモをやっている人が周りに多い気がする。まあ、テレビやネットで特集が組まれるぐらいに注目を集めているゲームでもあるし、そんなものなのかもしれない。
「ところで、品束さんは今どこら辺にいるんですか?」
「王都ラナの王立図書館に籠ってて、情報を集め終わったとこかな。そろそろコトの街へ移動しようかと思ってるんだ」
相談の結果、京との合流はコトの街ですることになったのだ。
「え、王立図書館?!」
「はぁっ、アズ、もしかして、お前王立図書館に入れたのか? あそこ一般人は入れないだろ、
狩宮さんとマスターが驚いた声をあげた。
「あ、やっぱそうなんですね。友人もそんなこと言ってましたけど、まあ、ログイン早々に情報クランの人と縁があって紹介状をもらえたんですよ」
「いやいや、だからって普通紹介状なんて貰えないだろ……」
「あ、あのー、ということは品束さんはまだ王都ラナに居るんですよね。よろしかったら一緒にコトの街まで行きませんか?」
「えっ…」
突然の誘いにフリーズした。
「お、良いんじゃないか。折角ならボッチよりパーティ組んだほうが楽しいぞ」
ニヤニヤとこっちを見るマスターがウザいことこの上ない。
「えーと、やっぱり駄目ですよね……」
「いや、大丈夫、大丈夫。一緒に遊ぼう!」
シュンとした狩宮さんを慌てて誘う。
「やった、ありがとう御座います」
彼女は途端に満面の笑みとなった。森妖精よりも千切れんばかりに尻尾を振る犬獣人の方が似合いそうだと思ったのは内緒にしとこう。
―― いらっしゃいませ!
新たなお客さんが来店したところで今晩の待ち合わせを約束して接客に戻った。
なお、狩宮さんのアンメモでの名前はエフィというらしい。
◆ ◇ ◆
コトの街へと向かう王都ラナの北門は多くの人でごった返していた。今回の正式サービスに当たって新規ログインのプレイヤーはすべて王都ラナからの開始らしい。また、順次ログイン開始として混雑防止策が練られているものの、一日辺り数千人規模でプレイヤー人口も増えているとなればこの混雑状況も頷ける。
ちなみに夜のログインではあるが、ゲーム内はまだ明るかった。なお、アンメモ内も二十四時間制なのだが、
「思ってた以上に人が多い。これ、エフィさんと合流できるのかな?」
―― ピコン!
突然フレンド申請の半透明ウィンドウが開いた。
『アズさん聞こえます?』
フレンド申請の相手が
『ふふっ、これはフレンドチャットですよ。門の先に居るんですけど、見えます?』
門を越えた先の木の陰で
『あぁ、見えた。今行くよ』
『はい、待ってます』
プレイヤーを掻き分け街の外に出る。
しかし、フレンドチャットは攻撃力が高い。この美少女ASMRには、いくら課金したら良いんだろうか?
「こっちでは初めましてですね.改めまして、
短弓を背中に背負い、腰から矢筒をぶら下げた美少女
肩で切り揃えられた金髪に特徴的な尖った耳、これぞ
の狩宮さんから変わっていない。
「あ、えーと、魔人族のアズです。エフィさん、こちらこそよろしく」
ぎこちなくもパーティ登録を行い、まずは軽く初戦闘を行なって見ることにした。
「これでも私、アンメモの情報をしっかり集めてますし、戦闘もバッチリ経験済みですので、後ろは任せてください」
ふんす! という描き文字がバックに浮かんで見えそうに気合を入れたエフィさんと共にモンスターを求めて街道から離れた。
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