金髪碧眼ノ陰陽師~「四大元素魔法を理解できない落ちこぼれが!」と追放された私ですが流れ着いたジパングで五行とコメと美丈夫に出会って『いとおかし』でして、戻って来いと言われましても『いととおし』~
第23話 オニと呼ばれる一族襲われ、いとうし・その三
第23話 オニと呼ばれる一族襲われ、いとうし・その三
『我々は余りにも魔物を含めた魔力を持つ存在に対し無知でした。鬼と鬼人で違うことも知らず、ただ、自分たちと違う姿の者を敵とみなし続けてしまいました。ゴウラ殿は稀有な例でしょう。恐らく我々を憎む者も多くいるはず……。もし、戦となるようであれば、私の首を差し出してでも……』
昨夜、鬼人の里を訪れる話の際に、ゲンブ様はそう仰いました。
鬼と鬼人の明確な違いは、角であり、まず皮膚の色と同じであれば鬼人と言われています。
他にも、角の長さや鋭さが異なるのですが、そう言った意識がなければ同じように見えるでしょう。まあ、以前いた鬼人の友人はそう言うと怒るのですが……。
ともかくジパングでは只人と鬼人の溝は深そうです。ドウラン先生がご無事であればいいのですが……。
「おい! ビオラ、ヨーリいない、いいのか!?」
隣を走るゴウラさんが慌てて話しかけてきます。
「ああ、いいのよ。あの子は逆方向、向こうに走っていったから」
「それいいのか!?」
ゴウラさんの驚いた表情はとてもかわいらしくて、やはり、どうにか手を結びたい。ゲンブ様も共存の道が残されているのならばと仰っていましたし……それもドウラン先生が怪我、もしくは、最悪の場合死となれば、絶対に断たれることでしょう。
ただでさえ、不穏な空気が漂っているのに。
「ビオラ、みえた!」
ゴウラさんの仰る通り、屋敷が見えてきます。結界は張られているようです。流石、先生。ですが、嫌な予感がします。私は脚に更に力を込め、走り出します。
「ビオラ、まって!」
「ゴウラさん、露払いしておきますので!」
「ツユバライ?」
私は【土】のオフダを二枚、そして、【木】のオフダを一枚取り出し、再び魔力を込めます。
一枚を足元に貼り付けると、五行の流れを整え望みの形に変えていきます。
「出でよ、
足元から生えた土の壁は、私の身体をぐいと持ち上げ空へと飛ばしていきます。
「び、ビオラ~!」
丁度いい。ゴウラさんの声で一瞬見失った地形と位置関係を直ぐに修正し屋敷へと目を向けます。
「良くはない、ようですね……」
【木】のオフダを掲げ、風の流れを操作し、自身の身体をドウラン先生の近くに辿り着けるように、また、その着地点の周りから人をどかします。
多少乱暴ではありますが、急ぎです。致し方ありません。
先ほど見た地形と位置、そして、視えた魔力の流れを思い出しながら、私は残った【土】のオフダに出来るだけの魔力を込め着地の勢いのまま地面を叩きます。
周りの鬼人が吹き飛んだ上に、只人が落ちてきて、鬼人の一人が叫びます。
「だ、だれだ!?」
「それは置いといて! いきます!
私の魔力に応えるように、土の壁がどんどんと生え始め、目の前の小鬼達を吹き飛ばしていきます。
「ドウラン先生!」
「よお、お嬢ちゃん。助かったぜ……! ちょっと腹の調子が悪くてよ……! 俺の結界に魔力を注いでくれねえか。調節だけは、俺が気合で……なんとかするわ」
そう、ドウラン先生は、まだ若いのであろう鬼人の女性に脇腹を刺され脂汗を流しながらも笑って仰いました。
「……はい!! とっとと結界張って、先生を楽にして差し上げます!」
「それって殺しちゃうってことじゃないよね?」
ドウラン先生、まだご冗談を言えるくらいですから大丈夫ですね。もう少しだけ頑張ってください!
「お嬢ちゃんなら視えてるよな! この色に合わせて魔力を練れ!」
「はい!」
「貴様、何者だと……!」
「いちいちやかましい! そんな些事置いときなさい! 今、この人は貴方達を救おうとしているのです! そんな事も分からないなら今は何も考えずぼーっと待っていなさい! 邪魔!」
「な……! きさ……な、なんだこの、魔力は……!」
私は、私の出せる魔力を精一杯見せつけて余計な事を言ってくる鬼人達を退けます。
「お嬢ちゃん……いい女だ」
「褒めても魔力しか出ませんよ」
「一番有難い。いよっし! 組めた! 多重結界だ。お嬢ちゃん、俺が出来るだけ流れを整えるから魔力注いでくれ!」
「かぁしこまりましたぁあああああああ!」
ドウラン先生の腕を掴み、出来るだけドウラン先生の魔力に合わせた私の魔力を注いでいきます。
勢いよく流れ込んでくる魔力をドウラン先生はじいっと身体の中で感じながら、結界を構築していかれます。
腕を掴んでいるせいか、その世界が、五行陰陽術の世界が、流れが、式が組まれていくさまが、私にも視えた気がして、その素晴らしさに涙が溢れてきます。
「これが五行陰陽術……!」
「……退けよ。四神方陣!」
その瞬間、四方から光が奔り、四枚の光の壁が重なり合い、里を囲んでいく気配を感じます。そして、空気が変わり、やわらかな風が吹いた気がしました。
「成功、だな……」
「それより、ドウラン先生治療、を……」
「グギャアアアア!」
私がドウラン先生の治療を始めようとしたその瞬間、背中から小鬼の怒り狂う声が近づいているのを感じました。
ですが、一刻を争います。
私は……目が合うとそのままドウラン先生の空いた脇に近づき魔力を注ぎます。
「ドウラン先生、私は治癒が不得手なのでお手数ですが、ご自身で補助をお願いします!」
「だが、あの、小鬼、は……」
くるりと正面から私がドウラン先生の脇に回り込んだと同時に、小刀を引き抜き背中の方から周り、くるくると回転しながら小鬼を『彼女』は切り裂いて、こちらに振り返ります。
「すまん、ワタシ……」
ゴウラさんに似た赤肌の、ドウラン先生の脇腹を貫いていた鬼人の女性が顔を歪ませて謝罪の言葉を口にしていました。
「あんた……」
「そんなの今は置いといて! 周りの鬼人の説得しといてくださいまし!」
私が叫ぶと皆我に返ったかのように騒ぎ出します。
騒げではなく、理知的に行動して欲しいのですが!
「お嬢ちゃん、やっぱお前さん、怖いわ」
ドウラン先生の評価が変わってしまいました。何故!?
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