第3話 オンミョージという謎の天職で追放、いとわろし・その三

「というわけで、なんやかんやありまして、此処にやってきました」


 私がそう言うとシノビさんは額に血管を浮かばせてこちらを睨んでいらっしゃいます。


「なんやかんやってなんだああああ!?」

「とある国の民衆蜂起を手伝ったり、海竜と戦ったり、海賊船にご一緒させていただいたりと……まあ、色々ですわ」


 本当に色々ありすぎて、説明すると長くなりすぎるので省きたいのですよね。

 シノビさんもなんやかんやの理由をくみ取って下さったのか言い淀んで一歩下がって下さいました。


「な……あ、そ、それに、グロンブーツ王国といえば……」

「ここから遥か彼方……大変だったことでしょう……」


 サムライさんが眉間に皺寄せ考えていらっしゃいます。

 確かに、大変ではありました。ですが、


「まあ、それは置いといて。……今からの事なんですが」

「「いやいやいや!!」」


 お二人からツッコミが入ります。まあ。


「いえ、聞いて下さるというのであれば有難いのですが、今は急いだほうが良いかと。何かよくないものが近づいてきている気がします」

「えっ?」


 こちらの空気はグロンブーツ王国と比べ澄み切っているような感じがして感覚がどんどんと研ぎ澄まされているような気がしています。そして、その感覚が何か嫌なものを感じ取りました。

 私の言葉に驚くサムライさんが懐から何やら蜘蛛の巣のような模様が書かれた板を取り出し魔力を送りこみます。うすぼんやりと赤い靄のようなものが板の右側に。


「赤……マズいな、赤鬼かもしれん……」

「あの、その、魔導具は……」

「これは、自身にとっての不吉な出来事などを視る魔導具です。私はまだ未熟でなんとなくしか視ることが出来ないのですが……」


 そういえば、グロンブーツ王国でも水晶等で遠見の魔法を使っていましたね。

 私は、水晶を三個破壊した時点で止められてしまいましたが。

 けれど、その不思議な文字盤を見ると、引き寄せられるような感覚に襲われ、気付けばその文字盤を掴んでいたのです。


「何を……!」

「し……!」


 黒髪のサムライさんの言葉を遮り、私は私の魔力を送りこみます。

 すると、文字盤に描かれた蜘蛛の巣のような模様が輝き始め、赤い靄が集まり、一体のレッドオーガの形になっていったのです。


「な……! 馬鹿な……ここまで正確に視ることができるだと……!」

「やはり、この方は……あなたは我々の待ち望んでいたお方だ!」

「そうなんですか? まあ、それは置いてといて」

「「いやいやいや!」」


 お二人からツッコミが。

 ですが、それを聞いている暇は本当にありません。


「ここをご覧ください」


 私が指した先にはレッドオーガが進んでいく先に、白い女性の姿が浮かんでいたのです。


「もしかして……姫様!?」

「あいつ、何故こんなところに!」

「姫? この国のですか?」

「ええ、名はさや。私の妹です。申し遅れました。私の名は、ツルバミゲンブ。この国、ツルバミの国王の一族の者です!」


 あらまあ、どうやら、この黒髪のお侍様は、この国の王子だったようですわ。

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