金髪碧眼ノ陰陽師~「四大元素魔法を理解できない落ちこぼれが!」と追放された私ですが流れ着いたジパングで五行とコメと美丈夫に出会って『いとおかし』でして、戻って来いと言われましても『いととおし』~
第1話 オンミョージという謎の天職で追放、いとわろし
金髪碧眼ノ陰陽師~「四大元素魔法を理解できない落ちこぼれが!」と追放された私ですが流れ着いたジパングで五行とコメと美丈夫に出会って『いとおかし』でして、戻って来いと言われましても『いととおし』~
だぶんぐる
第1話 オンミョージという謎の天職で追放、いとわろし
「ンギャアアアアア!」
目の前で餓鬼と呼ばれていたホブゴブリン達が炭と化していく。
大量に。
オフダと呼ばれる魔導具から放たれた私の魔法は、巨大な炎の竜巻を生み出し、醜悪な餓鬼達全てを呑みこみ天へと昇っていく。
ああ、綺麗ですわねえ……。
そんな感想を抱いていると、ふと視界の端の二人が気にかかり、そちらを見る。
サムライとシノビだという黒髪のお二人は口をあんぐりと開けて荒れ狂う炎を見ています。細身のシノビの方は茫然という様子ですが、一回り身体のがっしりされたサムライの方はちらりとこちらを見て目が合う。涼し気な目元ですがその黒い瞳の奥には深い何かを感じさせます。
「それにしても……黒い瞳に、黒髪、ジパング人を初めて見ましたわね」
私の碧い目や私の居た国の人間の瞳とは違う黒い瞳……けれど、黒髪は……。
私は自分の髪を右手でとってじっと見る。私の髪はほとんどが金色の髪……ですが、一房だけ彼らと同じ黒髪が。
「ぽぽーん」
肩に乗っていたペットのヨーリは、そんなの関係ねえとばかりに先ほど頂いたシオームスビとやらを食べている。私と同じくそんなに食事をとれていなかったはずなのにまん丸で茶色くてふわふわの毛。ぽんとなってかわいいそのお腹がどんどん丸くなっていってかわいい。
そんな事を考えている内に、暴れに暴れた赤い炎の蛇が青い空へと吸い込まれていく。
そして、魔物は全ていなくなった。
「さて、今の魔法はとりあえず置いといて。ここは……?」
「「いやいやいやいや!!」」
黒髪のお二人が首をぶんぶん振りながらこちらへ駆けて来られます。
「い、今のはなんだ!? あんなレベルの魔法を見たことないぞ!」
「あ、あの貴方は、お札を初めて見たと言っていませんでしたか!?」
「ええ、初めて見ましたわ。ですが、初めて見た気がしませんでした」
四大魔法を操ることの出来ない私が……やはり、このゴギョーというのが……。
シノビさんが、サムライさんを手で制し下がらせながらこちらを睨みつけています。手には何でしょう、あの金属の尖った板は。
「若! お下がりを……金色の髪に碧い目、妖しい奴とは思っていたが……! ひっ捕らえてくれる!」
「やめぬか! ヤスケ! 手裏剣をしまえ」
「ぽーん!」
肩に乗っていたヨーリがシオームスビを食べ終わって元気いっぱいなのか、黒髪のシノビさんに飛びかかっていきます。
慌てたシノビさんはシュリケンと呼ばれる鉄の板をヨーリに投げる。
だけど、ヨーリは上手に空を舞い、ひらりひらりと躱し、
「ぽぽぽーん!」
スライムに変身し、のしかかる。
シノビさんはそのまま身体を押さえつけられバタバタと藻掻いているようですがスライムヨーリに文字通り手も足も出ない様子。
「まあ、ヨーリも凄く元気になったわねえ」
「ぽぽーん!」
「く……変化の術を使うとは……! お主、出来るな……!」
「ヤスケよさないか! 申し訳ございません。私の友が」
スライムとなったヨーリに抵抗するシノビさんを嗜めながら、サムライさんが頭を下げられます。
「いえ、素性の分からぬ怪しいものがいれば疑ってかかるのは当然ですわ」
「そうです! そんな、化け狸を連れた金髪碧眼など鬼か妖怪か!」
バケダヌキ? それがヨーリの種族だったのね。よかったわ、あちらでは同じ種族がいなくて寂しい思いをさせたから。狼とも犬ともクマとも違うまん丸なヨーリ。『ここ』にはいるのねヨーリと同じ種族が。当のヨーリは今はスライムに変身しているのでぶよぶよ緑ですが。そんなぶよぶよ緑に包まれたままのシノビさんがこちらをずっと睨んでいらっしゃいます。
「しかも、男を惑わしそうな体つきで若に色仕掛けでもするつもりであろう!」
まあ、身体はそれなりに魅力的なのでしょう。ここまで来る時の海賊船では一味の皆さんにはよく口説かれてましたから。そういえば、皆さん、無事かしら。
「やめろ! この方はそのような方ではない! 拙者には分かります。貴方は……名のある陰陽師様なのでは?」
「……え?」
オンミョージ。
その言葉を聞き思わず勢いよく黒髪のサムライさんの方を向いてしまいます。
「オンミョージ!? そうなのです! わたくし、オンミョージですの!」
まあ、それがなんなのか分からないせいで私は追放されたのですが。
ヴィオラ・ディフォルツァ。天職は『オンミョージ』。
訳の分からない天職を持つ魔法の使えない忌み子。
それが私の、この異国ジパングから遥か彼方にあるグロンブーツ王国で婚約破棄され、さらに、追放される直前の評価でした。
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