猛攻
グランの槍がダリアに迫っていた。グランが目にもとまらぬ速さで接近していたのだ。
瞬足かつ無駄のない動きであった。黒ずくめの人間の短剣を弾くカルマは、ダリアを庇うのが間に合わない。
この場に常人しかいなかったら、ダリアの心臓が一突きにされる所だろう。
しかし、グランの動きについていく人間がいた。
アムールだ。
アムールの槍の柄が、グランの槍の穂先を受け止めていた。鈍い金属音がエントランス中に響き渡る。
グランの一撃は見事であったが、それを防ぐアムールも素晴らしかった。
しかし、攻撃が一撃で終わるはずはない。
グランの槍は素早く引っ込められて、新たな一撃のバネを作る。強烈な攻撃が収まる気配はない。
対するアムールは体勢を整える間もなくダリアを庇いにいく。
優劣は歴然としていた。
グランの槍が瞬く間にアムールの身体に傷をつけていく。アムールの頬、腕、足などあらゆる場所から血がにじんでいく。体力の限界が来るのは間もなくだろう。
しかし、アムールが身をていしてダリアを庇うおかげで、ダリアが魔術を放つ時間ができた。
「暗き祈りよ我に力を、タイムストップ」
あらゆるものの動きを止めるものだ。ダリアの得意技である。
標的はグラン。
勝利を確信したのか、ジャンの顔に笑みがこぼれる。
しかし、アムールとカルマの表情は険しいままだった。
グランはアムールを刺し続けていた。いつ致命傷を与えてもおかしくない。
ダリアは両目を見開いた。
「私の魔術を防ぎましたの!?」
声が裏返った。驚きを隠せない。
カルマは苦々しい呟く。
「さすが聖騎士グランという所だぜ」
カルマも、黒ずくめの人間が襲い掛かるため手一杯だ。
ギュスターブが嘲笑していた。
「おまえたちのような下賤な人間は何をしても勝てないぞ」
「腹が立つぜ……少しは痛い想いをしてもらう!」
カルマが大剣を縦に振り下ろした。
「暗き祈りよ我に力を、ファイアーアロー」
数本の炎の矢が、勢いよくギュスターブに向かっていく。ギュスターブは絶叫をあげた。炎の矢はいくつか当たるだろう。
カルマは大笑いをした。
「いい気味だぜ……!」
しかし、カルマの笑いは凍り付いた。
ロベールが、ギュスターブの前に立って短剣を抜き放つ。そして、向かい来る炎の矢を尽くはたきおとしたのだ。
カルマは、黒ずくめの人間を叩き伏せながらわめく。
「ロベール、あんたまで戦闘ができるのかよ!?」
「たしなみ程度です。緊張のあまり心臓がドキドキしております」
ロベールは淡々と答えて、自らの握る短剣を見つめる。
「戦いというものは怖いのですが、面白いですね」
「……あんたはある意味でグランより不気味だぜ」
カルマは冷や汗を流した。
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