第2話
先ほど元婚約者となってしまった彼、ダイアン・アルモドバル子爵子息とは学院で出会い、恋に落ちたの。
彼は文官科の生徒で私は騎士科の生徒だった。食堂で彼から声を掛けられたのが始まりだったの。
政略結婚はよくある事だけれど、恋愛結婚もなくはない。
私はエレゲン伯爵家の次女。兄弟は兄が三人と姉が一人、弟は二人。つまり子沢山の家族の元に生まれた私。
我が家は昔から騎士を輩出している家柄ではあるの。結婚相手は自分で見つけてこいという家なので平民だろうが高位貴族だろうが問題はない。
もちろん私は学院を卒業後、試験を受けて王宮騎士になり、騎士爵を取る予定なので将来夫になる人が平民でも構わなかった。
ダイアンの実家であるアルモドバル子爵家は小さな領地を持っているけれど、領地の収益のみで暮らせるほどの余裕はないため子爵も王宮に務めているわ。
ダイアンも同じく文官を志望していて将来は共に王宮で働きながら暮らしていく予定だった。
私もダイアンも学生の頃はとても仲が良くて王宮務めを始めて落ち着いたらすぐに結婚しようと約束をしたの。もちろん父も母も喜んで婚約には賛成してくれたし、ダイアンの父アルモドバル子爵も子爵夫人も反対は無かった。
いつも授業後に子爵家へ行って子爵のしきたりを学ぶべく夫人とお茶をしたり、刺繍をしたりして過ごしたわ。
子爵も夫人も私のことを我が子のように可愛がってくれたし、私も第二の親だと思えるほどだった。
時にはダイアンと街へ出掛けてお茶をしたり、将来夫婦になる部屋の飾りを見に行ったりして仲良く過ごしていた。何の問題も無く学院も卒業出来たわ。
卒業後は私は第二騎士団へ入団。彼は領地課の職員として王宮へ勤務する事になった。
私の騎士としての実力は自分で言うのもなんだけど、優秀な方だと思っているわ。
王族の警護が出来る程の腕前を持つ第一騎士団には私の父や兄がいる。姉も元第二騎士団。現在は結婚して一児の母。母は昔第三騎士団に所属していたらしい。
こう見ると本当に我が家は武人の家系なのだと思う。
家族の会話は剣術の話だけだと思われがちだが、そんなことはない。
母は女性は美しく、賢く、強かに生きていく事をモットーにしているため、姉や私には淑女教育にいち早く取り組み、とても厳しく育てられたわ。
淑女教育が嫌いでそっと抜け出して庭で剣を振るっていたら母にばれて木剣で追い掛け回された記憶は懐かしい。
この家で最強は母なのよね。母の言うことは絶対。父や兄も母には決して逆らわないと決めているようだ。教育には厳しい我が家だけれど、その分愛情は深い。
私は家族に愛されて育ってきたと自分でも思っているわ。
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