第18話 バッドエンドはいや。
「バッドエンドはイヤ」
思わずそう声に出していたセラフィーナ。
あれが、あの記憶が未来の出来事なのだとしたら、何もしないでいたらきっとあの通り、あの光景をそのままなぞるのだろう。
イヤだ。あんな悲しい結末はもう二度と見たくはない。
そう、吐き捨てる。
ルークヴァルトに対する恋心は今はきっと忘れてしまったんだろう。そこまで彼のことを好きかと問われたら、恋愛感情的には違うと言える。
それでもだからといって彼が死んでしまうのは、絶対に避けたい。感情的に許せない。そう心の奥底から湧き上がってきて止まらなかった。
そう。それを回避するために今ここにいるのだから。やりなおすために時間を遡り過去に戻ってきたのだから。
あの断片の記憶の未来。その時に強く願ったセラフィーナの心。時を遡った代償なのか、今はその時の感情のほとんどを忘れてしまっていてあの時の自分と完全に気持ちが繋がってるわけではないけど、それでもやっぱりイヤなものはイヤだとそう強く思って。
そういえば。と思い出す。
冒険者として薬草採集のお仕事をしている時だったか、よからぬ噂を耳にした。
普通の薬草は大気中のマナをたっぷり含んだものが上質とされ高値で流通している。
そこに最近、マナではなく魔、魔素と呼ばれるそれを多量に含有するいわゆる魔草が混ざっているというのだ。
マナと魔素は元は同じもの。
水と氷のように同じ神の氣であるエーテルが状態を変えただけの物ではあるのだけど、それが生命に与える影響は天と地ほど違って。
少量であればそこまでは変わらない。共に魔力を高めるエネルギーとなりうるものだから。
でも大量の魔、魔素は命を蝕む。
生命を蝕み最終的に魔獣を生み出すもの、それが魔とか魔素とか呼ばれるものだった。
(どこかに魔溜まりでもできてしまっているのかしら?)
自然界には魔素は普通には存在しない。空間の歪み、どこか異界から滲み出てくることが多い魔素。
はっきりとは覚えていないけど、未来の記憶にあった危機にはこの魔素が絡んでいたようにも思う。
だとしたら。
ルークや兄が危険なだけでは済まない。
この世界全体にとっても破滅的な危機であるのかもしれないから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます