悪文家の私が文章を改善する二つのコツ

【はじめに】


 私はひどい悪文家です。

 

 それでもこうして原稿を書いているわけですが、最初に書いた文章など自分でも「ひでぇなこれ」というシロモノです。それを直しに直し、辛うじて読んでいただけるモノに仕上げ(たつもりで)、投稿しているのです。


 直すときの目標は「読みやすい文章」ですが、どれだけ達成できているかは分かりません。ですが、心がけていることはあります。


 この小文では、その辺りに触れてみるのも面白いと思い、文章を改善する二つのコツと題して簡単に書いてみます。

 


【まず、読みやすい文章とは】


 もう多くの方が述べておられますが、私の思う「読みやすい文章」は読むときにつっかえない文章です。ごつごつしないというか‥‥‥。自分で読み直してつっかえなければ、多分それは読みやすい文章です。


※上手い、美しい、といった文章はまた別です。今回の話は“ごく普通の”文章について考えています。



【二つのコツ】


 では読みやすい文章を書く(直す)には具体的にどうするか? 


1.スッキリさせる

2.語順を変える


 この二つを心がけております。

 効果としては1が大きいと思いますが、2でも結構頭を悩ませております。以下、それぞれについて述べます。



【コツ1 スッキリ】


 文章は簡明をもって旨とします(いま純文学は想定していません)。

 直すときは削るか短く言い換えます。


 ですが、当方には論理的に詳述する技量がないので、とりあえず例だけ少し挙げます。


例1.

「~ということに思い至った」

→ 「~に思い至った」「~と気づいた」

 つい前者のように書いてしまいます。見つけ次第に退治します。


例2.同じく

「私は△△といわれている存在を初めて知った」

→ 「私は△△を初めて知った」。「存在」を残したいなら「私は△△なる存在を初めて知った」


例3.同じく

「奴がラスボスであることを知った」

→「奴がラスボス(だ)と知った」「奴がラスボスと分かった」、むしろ「奴がラスボスだった」「ラスボスは奴だった」


*おそらく、例1~3のような変更だけでも結構スッキリすると思います。


例4.進行形

「~を含んでいる〇△」 → 「~を含む〇△」


 地味に効きます。直してみると現在形で十分な場合が多いです。


例5.「それ」「これ」のたぐい

 誤読を防ごうとつい多用しますが、省いても問題ないことが多いです。


例6.「~のようなこと・もの」

 省きたいですが、意外に「~」と言い切るのは難しいです。可能なら言い換えます。


例7.「~ではないでしょうか」のたぐい

 これも多用してしまいます。「ですます調」ならばある程度仕方がないのではないでしょうか、なんて。婉曲表現は一種の逃げですが、この場合は「気がします」ですか。


例8.冗長な修飾

「薄っぺらい、多くの人にとって大して役に立たないと思われるこの〇〇論」

→「この薄っぺらい〇〇論」「この役立たない〇〇論」「この今一つな〇〇論」、最終兵器「この〇〇論」


 私の場合、何かを正確に言い表そうとすると前者のようになってしまいます。書いた後で、その修飾語句が必要なのか見直さないといけないですね。


 ⇒ 物語は正確性ではなく、で書きたいです。


例9.主語

 省けるだけ省きます。論説ではダメですが。



♢文章を書くときは、常にもっと短くできないか考えます。

♢ついでにですが、(PCで)三行以上の文章は分割の方向で。


♦注意

 もちろん、削除や短縮もやり過ぎれば味もそっけもなくなります。

 その辺は兼ね合いですね。



 実はカクヨムの皆さまの文章、とても読みやすいです。おそらく「スッキリ」は実践済みなのだと思います。

 次のコツ2は微妙な例も含み、見解が分かれるかもしれません。



【コツ2 語順】


 どうもしっくりこないなぁ、という場合は語順を変えてみます。

 例は拙作の文章から。


例1.なんとなく引っかかる

「、特にしょっちゅう夏場は風呂に入った」

   ↓

「、特に夏場はしょっちゅう風呂に入った」


 微妙なごつごつ感。

 「しょっちゅう」が「頻繁に」でも、後者かなぁ‥‥‥


例2.強調すると

「営業活動もその確率を上げるために重要なのですが、」

   ↓

「その確率を上げるために営業活動も重要なのですが、」


 前者は倒置で「営業活動」を強調、パラグラフ冒頭などではこちらが良さげ。後者は平凡にして平板ですが、前の文とのつながりが良いです。


例3.当初考えていたタイトル

「たった二つの文章を読みやすくするコツ」(原案)

   ↓

「文章を読みやすくするたった二つのコツ」(第二案)


 すぐ思い浮かぶのは前者だと思いますが、わずかに誤読の可能性があり後者に。動詞形「たった二つのコツで文章を読みやすくする」も考えましたが、いま一つ締まりません。

 いずれにせよ、タイトル詐欺の雰囲気がぷんぷんなので現行に変えました。


♦語句の掛かる相手が離れるとごつごつしがちです。例3は二つの語句のどちらを「コツ」に付けるかの問題でした。


♦例1~3のように迷うケースは誰の文にもたくさんあると思います。一つ一つはあまり気になりませんが、蓄積すると‥‥‥、です。


例4.これは苦しい

「しかし、また状況が混んでくれば変わることもあり得るでしょう」

   ↓

「しかし、混んでくればまた状況が変わることもあり得るでしょう」


 形としては例3に似ます。前者は「状況が変わる」と読んでほしいのですが、普通「状況が混んでくれば」と読むでしょう。文意も不明瞭で、分かっているのは自分だけでした。素直に「混んでくれば」を前に出して解決。

(「また」もいらなそうですが、なぜか入れたかった‥‥‥)


例5.ちょっと考え込む

「作品ごとに読まれない原因は違い、しかも複合要因と考えられます」

    ↓

「読まれない原因は作品ごとに違い、しかも複合要因と考えられます」


 前者は一見良さげな文章に見えますが、「複合要因と考えられる」のが何なのか、(主語が)いま一つはっきりしません。

 後者では「複合要因と考えられる」のは「読まれない原因」のことと分かります。つまり、二つのことを一つの主語で述べていましたが、簡単な変更で前半と後半がバランスしました。


♦語順の入れ替えは応用範囲が広いですね。



【まとめ】


 とまあ、こんな風にあれこれ検討します。実際に書いて読まないと分からないことも多いです。また、直すと前後の文章やパラグラフ全体にも影響を与えるので、それなりに手間の掛かる作業です。


 あとは漢字を使い過ぎないことでしょうか。



【番外編 説明文 → 小説】


♦説明文を小説らしく変えてみます。


 つぶらな瞳で見つめていた涼子りょうこは、いちばんしなくてはいけないのはご飯を食べさせることだと理解した。

                      (やや長い説明文)

                  

        ↓↓↓


(いちばんしなくてはいけないのは、ご飯を食べさせることね)

 つぶらな瞳で見つめていた涼子りょうこはそう理解した。

                      『最期の命令』より

 

https://kakuyomu.jp/works/16817330667744486424

 あなたの心に迫ります。

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