第26話 討伐準備
診療所で療養しているレイナとココに、全ての出来事を笑い話を交えて伝えた後宿に戻った。
ギルドからの指名依頼の話しは、2人共俺と同じ考えで同意してくれた。
2人と話すのは今まで味わえなかった感情があり、心が満たされる感じがしていた。
今まで他人と関わらなかった生活が、まるで180度変わったおかげかもしれない。
また二人と早く冒険がしたいと、心の底から感じていた。
テレサと別れた後、診療所による前にシノにはアイテムバックに戻ってもらっていた。
診療所を出で昨日宿泊した宿で女将に声を掛けると、今朝の出来事をしっていたのか優しい言葉で迎えてもらった。
「大変だったね!でも命が助かったんだ喜ばしいことだよ!今日戻ってこなかった冒険者も居るんだからそいつらの分も今日の夕食で豪勢に食べておくれ!」
女将は元気付けるように肩を叩いて励ましてくれた。
ここではいつ命を落とすかはわからない、冒険者とはそういう稼業だという事を実感させられた。
食事は豪勢だったが、1人で食べるのはとても寂しかった。
食事が終わり2階の部屋に入りベットに腰掛けると、シノが人間の姿で現れた。
俺に気お使っているのか黙ったまま立っているので、ベットの横に座るように手招きをした。
「今回の遺跡調査は全て俺のミスだ。」
「情報収集と魔法攻撃に対する防御の事を甘く見ていた。」
パーティー全体のレベルと総合戦闘力の低さが原因で、俺は今回仲間2人に怪我を負わしてしまった事を深く反省していた。
「リーダーとしては失格だな。」
シノは何もしゃべらず、ただ俺の独り言を聞いていた。
どこか現実ではない世界で、やり直しが出来ると考えてたかもしれない自分に腹が立っていた。
「今回は運が良かっただけかもしれない!次は無いと考えると、念入りな事前準備が必要だな!」
仕事に追われる日々で、配達時間に間に合わずお客からよくクレームが来たことを思い出した。
そういえば、気に入ったお客を優先して回ってた気がするな。
先輩からは時間配分と効率よく回れるようにリストを作れとか、よく怒鳴られたな~
今後の事を考えて、やる事リストを作成してみるか!
今のパーティーでは圧倒的にスキルの種類が足らない。
特に支援系だな、魔法の代わりとして魔道具を充実させた方がいいだろうな。
しばらくブツブツと独り言を言いながら、頭の中をやる事リストで埋め尽くした。
「頭がパンクしそうだ!今日はもう疲れた・・・シノ・・・・・一緒に寝てくれるか。」
「はい。」
俺は何も考えずにベットに横たわり、シノに声をかけた。
シノも当たり前のように、服を脱ぎ裸のまま俺のベットに入ってきた。
人肌が恋しくなったのか、自然とシノを抱いてしまった。
シノは嬉しいそうに応えてくれた。
彼女が出来なかったせいか、女性との接し方がわからずヘマばかりしてたのが嘘のようだ。
俺が居た世界の女性とこちらの世界の女性は、異性に対する態度が違うように感じている。
自然にシノを抱きしめたまま、肌から伝わる女の柔らかさと俺を包み込む香りに身も心も任せて深い眠りについた。
翌朝目が覚めると、隣にいるシノが俺にキスの挨拶をする。
「おはようございます・・・ご主人様。」
なぜか照れくさそうな表情を見せる。
「おはよう!シノのおかげでグッスリ眠れたようだ。」
「それは良かったです。シノも大変嬉しく思います。」
俺もシノにキスのお返しをしてベットから起き上がろうとしたが、2人とも何も身に着けていない状態のままお互いの体を眺めていたので、急に恥ずかしさが出てきてすぐに衣服を身に着けた。
シノには悪いが、部屋を出るときはアイテムバックに入るように伝えた。
朝食を食べながら、昨日の事が頭の中に映像として浮かび上がりまた元気が出てきている。
健全な男なら仕方がない現象だが、これもシノのお陰かなと感じているとアイテムバックが動いた気がした。
朝食を思いっきり食べ、気合を入れなおしてから女将に挨拶をして俺はギルドへ向かった。
ギルドに入るとそこはいつもと同じ慌ただしい光景が目に映る。
テレサを探すが見当たらなかったが、奥の一角に人だかりの場所があった。
近くまで行くと人だかりの中心に女が座っていて、周りの冒険者から声を掛けられて困った表情でいる。
「テレサさん!」
俺はつい大きな声を出してしまった。
「コウさん!」
テレサは俺の声に気付くと、席を立ち明るい声で俺の名前を呼んだ。
その瞬間に今までテレサに声を掛けていた冒険者達は、何かをつぶやきながら散ってしまった。
「コウさんおはようございます!お待ちしておりました。」
「おはようございます!テレサさん・・・」
テレサの姿をみて他の冒険者が集まり、声を掛けていた意味がわかった。
黒の忍び衣装に赤い帯、腕と足は網目のタイツをまとい妖しい雰囲気をかもし出している。
この姿に容姿がよければ、気を引かない男はいないだろう。
さすがの俺もクギ付けになって、テレサに見とれてしまった。
「コウさん・・・」
「すみません!つい見とれてしまって~」
テレサは恥ずかしそうに下を向いて、席に座ってしまった。
「この前出会った時の姿とあまりにも違うので、びっくりしました。」
「コウさんと出会った時は普段着で、今日の姿は冒険に出かける時の防具服です。」
「防具服とは、テレサさんの職業は?」
「くノ一です。」
「お恥ずかしい話ですが、冒険者登録はしていますが薬草採取ばかりで実践経験は皆無です。」
「テレサさんにも事情がおありですから仕方がない事だと思います。」
「このままではレベルも収入も上がりません、ご迷惑でしょうが私の我がままに付き合ってもらって感謝いたします。」
「そんな事は気にしないで下さい。」
「テレサさんのレベルと主な武器、スキル等があれば教えて下さい。」
「レベルは2で武器は小刀、スキルはまだありません。」
ほぼ初心者で、俺らと大差はない。
「大丈夫ですよ!我々もまだ駆け出し冒険者の集まりですので一緒にレベルを上げていきましょ!」
テレサを励ます言いかたをしたが、自分自身今のレベルでは護衛任務は難しい。
シノの力を借りれば簡単だが、それは緊急事態が発生した場合で出来るだけ自分たちの実力で達成したい。
テレサと肩を並べてクエストボードを眺めながら、意見を交わし報酬額を確認して今日の依頼書を何枚かを取っていたら小さな女子の手が同じ依頼書を掴んだ。
「この依頼書は私達が先に目を付けました。」
俺がボードから取り外した所を、彼女達の小さな二つの手が下側の端を掴んでいる。
「君達がこの依頼を受けるのかな?」
俺が最後に剥がした依頼書は、ホーンラビットの討伐依頼だ。
どう見ても子供にはまだ無理な依頼のはずだが。
「私達のパーティーなら問題ないわ!」
「君達以外に誰かいるのかな?」
可愛らしい子供たちを、パーティーの仲間に入れてる人達を見てみたいと思った。
「お兄ちゃんならカウンターにいるよ。」
「アッ!あの女~またお兄ちゃんに色目を使っているわ~」
「油断も隙もないわね!」
2人のませた会話は別に置いといて、カウンターで話をしている男は昨日俺に声を掛けてきたグレンだ。
たしか【銀狼の牙】パーティーの1人だが?
「お兄ちゃんと言ったけど、他のメンバーは?」
「お兄ちゃんと私達だけだよ。」
3人!たしかグレンも初心者で討伐経験は無いと言ってたよな、当然この子らも無いはずだ。
「魔物と戦った事はあるのかな?」
「無いけど~お兄ちゃんは強いから問題はないわ!」
自信満々に言い放つ彼女だが、彼女らを守りながら討伐は絶対に無理がある。
この後グレンと話しをして辞めるようにと伝えるため、この場で待ち続けた。
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