第26話 不法侵入
政府の方針として、
パンダは殺せない。
ラブパンダのあり方こそ政府のあり方であり、
パンダは殺せない。
どんなことがあろうとも、
パンダは殺せない。
パンダを殺すのは違法だ。
白黒の敵も、人々もわかっている。
でも、命を守るために人はパンダと戦う。
あるいは、ラブパンダとも戦う。
世の中戦いばかりになって、
混沌としている。
野良パンダが人の家に入ること。
昔は不法侵入という言葉が使われていた。
数百年に及ぶパンダ保護政策の果て、
パンダはどこに行っても合法ということになった。
家に入ろうが、
冷蔵庫から何かをあさろうが、
人を殺そうが、
パンダの場合は合法ということになった。
だから人はパンダを憎む。
パンダよけのギミックを取り付けるだけでは飽き足らず、
明らかにパンダへの警告らしいものが、
描かれていたりする。
パンダに通じるかどうかはわからない。
進化したパンダなら、あるいは。
少女が一人、留守番をしている。
パンダの脅威を学校で教育されている、
ごく一般的な少女だ。
家のある住宅街は静かで、
たまに迷い込んだパンダは、
ラブパンダの手で保護されるか、
白黒の敵によって殺されるか。
それは、パンダにとっては運のよしあし程度。
殺される人がいないのがとりあえず幸いかもしれないと。
そんな普通の住宅街だ。
少女が転寝をしていると、
がさごそと音がする。
「パパ?」
少女は寝ぼけながら部屋を出る。
「パパ?もう帰ってきたの?」
返事はない。
ただ、がさごそと音がするばかり。
少女は音のするほうへと向かっていく。
危険だとは思わない。
あくびをしながら台所へ。
そこには、冷蔵庫をあさる三毛パンダが。
少女のあくびは引っ込んだ。
辺りを見回すと、玄関はすごい力で壊されている。
どうしようと少女は思う。
逃げて気がつかれたらどうしよう。
相手は獰猛なけだもの。
追いつかれて殺されるかもしれない。
パンダは一心不乱に何かを食べている。
少女はその場にへたり込む。
だめなんだ、
パンダを殺してはいけないんだ。
学校で教わった政府の方針。
少女が殺されても、
パンダは何の咎もうけないんだ。
パンダは何をしてもいいんだ。
少女は絶望する。
人はなんて非力なんだろうかと。
外から、大声を張り上げているのが聞こえる。
ラブパンダにパンダを引き渡してください、
三毛パンダは危険だ、早く射殺して、
パンダは保護すべき、
早く逃げるんだ、
などなど声が混じっている。
これは、学校では教えてくれない、いけないこと。
三毛パンダが少女に気がつく。
くるぅりとゆっくり振り返る。
外の言い争いはまだ続いている。
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