第14話 発掘屋
電脳発掘屋。
数百年前における、考古学者に近いものだと思ってほしい。
技術はある程度進んだけれど、
いまだにわからない過去のこと、
とりわけ、電脳、コンピューターが普及した時代。
その黎明期を探っている人物達を、
電脳発掘屋という。
今はコードをつないで端末からアクセスができるが、
昔はどうだったのか。
古い時代の技術で、どうやって人は生き延びてきたのか。
電脳に頼る人間には、
思いつかないような叡智があるに違いない。
そして、一般には、
数百年前のパンダは、
人間に大切にされていたという。
ならば、その時代のパンダのことを知れば、
今のパンダに対する対策も見つかるかもしれない。
電脳発掘屋は中立だ。
パンダがどうなろうが知ったことではない。
有益なデータが出れば、
気の向いたほうに売りつける。
急がずあせらず高速に。
電脳発掘屋はそれなりに楽しい。
「出ないものだなぁ」
電脳発掘屋は、自分の電脳に、
過去の遺物のHDDをつなげている。
(HDD、ハードディスクドライブ。記録する装置)
感覚というものがない時代のデータ。
一体こんな小さな容量のデータで何をしていたんだろう。
画像が出るかと思えば、
裸体だ。
厚みも何もない、ただの画像だ。
なんだかたくさんある。
よっぽどこの裸体が、よいものとされた時代だったのかもしれない。
このHDDに見切りをつけ、
次のHDDに切り替える。
「お」
電脳発掘屋は小さく声を上げる。
このHDDには、動画が入っているようだ。
一つ一つ電脳で高速に処理をしていく。
なんだか古い絵の少女がいっぱいで、よくわからない。
漫画というものや、アニメというものが、
HDDに記録されている。
「古きよき二次元、か」
何百年か前に、動画投稿サイトというものができていたと、
電脳発掘屋の脳裏で記憶が走る。
動画を集めていたのかもしれない。
こんなもの集めたって、当時は一銭の得にもならない。
でも、電脳発掘屋は、
歴史あるものを学者に売りつけるのが仕事。
たまには電脳発掘屋自身が調べることもある。
多分これは、当時流行っていた少女達の同人作品だ。
電脳発掘屋は、コードをはずして、椅子に深々と座りなおす。
感じることといえば、
何百年も前はとても平和だったと。
パンダに関する憎しみもないし、
パンダを殺そうなんてのはなかった。
二次元のキャラクターに、萌えという言葉で愛を表現していたらしい。
古い言葉だなぁといまさら、電脳発掘屋は思う。
古いこと探っているのが自分じゃないかと。
「萌え…かぁ」
当時の人間は、パンダも萌えだったのだろうか。
残っているデータからは、なかなか読み取れなかった。
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