聖なる夜に

勝利だギューちゃん

第1話

12月。

聖なる夜がある。


この時期には、夜景の見える高級レストランで、恋人たちが素敵なイヴを過ごす。

それが、定番となっている。


でも、ああいうのは美男美女がやるから絵になる。

僕のようなブサメンがやっても、いい笑い者になるだけだ。


それに、性に合わない。

それよりも・・・


「ごめん待った?」

彼女が来た。

付きあい始めたころは、「今来たことろ」と返していた。


ある程度、進展したら「ほんの30分ね」と返す。


そして、今は・・・


「来たな。出発」

「おう」


こうして、彼女と出かける。


着いた先はラーメン屋。

チェーン店とかではなく、老舗だ。

老舗を「ろうほ」と読んで恥をかいた過去。


「おう、来たな」

大将が声をかける。


「いつもの」

「了解。外は寒いのにお二人は熱いね」

「ここのラーメンほどではないよ」


テーブル席に着き、運ばれてきたラーメンを食べる。


「で、話って」

彼女が声をかける。

「わかってるんだろう?」

「うん。でも一応」


結婚指輪を渡す。


「湯気の向こうに笑顔の見える。そんな家庭を築こう」

「ラーメン屋でプロポーズって、ムードがないね」

「俺に、ムードが似合うと思うか?」

「思わない」

はっきり言うな。


「で、返事は?」

「NOなら、来ないよ。金婚式もここで過ごそう」

「長生きしなきゃね」

「大丈夫だよ。美人薄命っていうから、私たちは長生きできる」

「だな」


大将の笑顔が見える。

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聖なる夜に 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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