第2話 ストーカー
最近おれは常に誰かに見られているような気がする。
外を歩いていても家の中にいてもじっと監視している目がどこかにあるのだ。
おれは在宅で仕事をしているのだが今日は朝から落ち着かなかった。
夜、仕事も終わり夕食と風呂を済ませた後、やっと自由の時間がきた。在宅をしているとけじめがつかない事が多いがおれはネットに入るのは夜の9時と決めている。寝るのは深夜1時だ。あくまで平日の話だが。
さて、おれは早速ある小説投稿サイトを開いて面白そうな作品はないかとTOPページを眺めてみた。
その時だ、「おい、そのまま前を向いていろ、振り向くなよ」と低い男の声がした。
おれは驚いて思わず両手をあげてしまう。背中に金属のようなものが当たっていたからだ。
「あなたは何ですか?」おれはPCの画面を見たまま思わず敬語でしゃべってしまう。
「お前は昨日、『俺の妹が婚約破棄されたので異世界に行ってソムリエになりました』という小説を読んだだろう」
「すみません、知らないです、なんですかそれ」
「俺が書いている小説だ、略してソムリエだ」
「ごめんなさい、ホントに知らないです」
「なぜだ、★が100個も付いているんだぞ」
「そうなんですか、ラブコメは読まないので」
「ラブコメではない、ホラーだ」
「えっ、ホラーなんですか」
「そうだ、お前がホラーを書いているのは知っているぞ」
こいつ、やっぱりおれのことを監視していたのかと思ったが何をするか分からないので様子をみることにする。
「もしかしたら気が付かないうちに読んでいたのかも、ちょっと待って下さいね」
おれは履歴を調べた、確かに読んでいた。
「読んでいるみたいです」
「やっぱりか、お前はなんで★一個しかつけないんだ!」
「えっ、★って、評価のことですか?」
「そうだ、なんで★一個なんだ」
「あー、すみません、誤解されているようですが、そもそもおれは一個もつけてませんよ」
「……、なんだ、そうなのか、なら、いい……」
「えっ、いいんですか?」
「一個は腹立つけど、ないなら、別にそれでかまわない」
「そうですか、潔くていいですね。ただ残念なことに、こちらコンテストに出しているようですがカテゴリー間違いしてますよ?」
「なんだって~~」
「今からでも間に合うので変更されたらどうですか? 今の★は評価から外れるかもしれませんけど」
「ええええええ~、そんな、頑張って集めたのに」
「大丈夫ですよ、面白かったので巻き返せますよ」
「そうかな」
「そうですよ、おれも★献上させていただきます!」
「あ、ありがとう、こんな事をした俺に★をくれるというのか、なんていいやつなんだ。今日はすまなかった、許してくれ」
男は手にした何かをおれの背中から離すと泣いてわびを入れてきた。
おれは面倒ごとが嫌いなので警察沙汰にする気はなかったし持っていたものはドライヤーだったので許すことにした。
その後、男は「ソムリエ」をライト文芸からホラーにカテゴリー変更をしていた。
おれは★一個を献上した。
同時刻、男の家
「チッキショーーーーーー、あんのやろうーーー!!」
おしまい
※ このお話しはフィクションです
★一個って★なしより微妙な気分になるのでちょっと書いてみました。
他意はありませんのであしからずご了承ください。
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次回
「サバイバルゲーム」
予告なく変更する場合があります
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