第八話 あらすじ事変・後篇
『もしもし鳩藍さん。ご連絡が遅くなってしまって申し訳ございません』
「いえ……10日のビーンズ文庫公式サイトでの発表前に連絡がとれてよかったです」
11月8日。私は担当さんと電話であらすじの件について話し合った。
私が伝えるあらすじの懸念点を、担当さんは電話の向こうでパソコンに入力しながら真摯に聞いて下さった。
そうして一通り意見を伝え終えた後、私は担当さんに尋ねた。
「あの……なんでこんな文章になったんですか?」
そう。スケジュール関係はともかく、これまで担当さんによる私の作品の扱いは至って真っ当かつ誠実だった。
常に物腰柔らかく、修正が必要な文章は理由をきちんと説明し、執筆で迷った際は納得できるまで話し合い、現在もあらすじの相談に真剣に耳を傾けてくれている。
人柄もよく、編集者としての能力もかなりの高水準で備えているはずなのに、何故あらすじに本文と異なる内容を書くという暴挙に至ったのか。
『それなんですが……今回、角川ビーンズ文庫から久しぶりの男性主人公作品の出版になるんですよ』
「はい」
『なので、あらすじの方もインパクト重視で、映画の予告編のような感じにしよう、という――』
(あ~……)
『編集長からの意向がありまして』
……へ、編・集・長ぉおーーーーーーー!!!
道理で担当さんらしくないと思ったよ納得しかないわ!!!
つまり久しぶりの男性主人公作品を売り出すために、ノウハウなしの
そう言うのは広告とか販促でやっていただけませんかぁ!?(涙目)
……と叫びたい気持ちをぐっと堪え、私は深呼吸をして担当さんに言った。
「お話は分かりました。ただ、やはり書き手としては本文内容とあらすじが異なることに強烈な違和感を覚えますし、読者の皆様が本文について最初に触れる場所でもありますので、正確性だけは確保していただきたいです」
その後、担当さんと何度かメールのやり取りを重ね、無事に現在のあらすじへと変更していただいた。
担当さん、この節は本当にありがとうございました。
こうして鳩藍は、どうにか作家生命の危機(※被害妄想)を乗り越えることが出来たのだった。
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