第六話 怒りは大草原に消えた
前回のあらすじ
担当さん「ごめんなさいタイトル明日までに決めてください……(現在時刻20時30分)」
鳩藍「ほげーーーーー!!!!!」
とんでもないタイミングでドジっ子属性を炸裂させた担当さんに、私はとうとう我慢の限界を迎えた。
タイトルぞ? 作品の顔と言っていい重要な要素ぞ? それを一日で決めろとかご無体にも程がありすぎるだろ!!!!!
そんな気持ちで電話をかけたものの、折悪く担当さんは不在。
一旦電話を置いて深呼吸しながら、私は努めて冷静になろうと努力した。
――そうだ落ち着け。感情任せに怒鳴りつけても事態は好転しないし、それにまだ書籍化作業は折り返しの段階だ。まだ発売予定日まで二か月以上あるのに担当さんとの関係悪化を招くようなことはよろしくない。冷静に、冷静に……!
その直後、私のスマホに担当さんから着信が入った。
――よし、冷静に行くぞ!
そう意気込んで担当さんからの着信にワンコールで出た私は、
「はいもしもしもし」
とノンブレスで勢いよく「もし」を三回言った。
一瞬の沈黙の後……
『ンッフwwwwwwww』
担当さんは電話口で吹いた。
『ンフwwwンッフwwwwwwもしもしもしwwwフフッwww』
――う、うわあああああああああああああ……!!!
電話口でドツボに嵌った担当さんの笑い声に、私は何をやらかしたかを察し、羞恥心に身悶えながら必死で取り繕おうとした。
「すみませんその違うんです! ちょっと勢い余っちゃいまして……!」
『ンッフwフフフwwワンコールでwwwもしもしもしフフフフフwwwwww』
「……ンッフフフフフwww」
止まらない担当さんの大爆笑に、何かもう怒るのも馬鹿らしくなった私は、しばらく一緒に担当さんと笑い合った。
『フッフフフwwwすみませんッフフwwwあの、なんか、元気出ました』
「ンッフwwwそうですかwww勢い余った甲斐がありました――……で、担当さん。何か言う事は?」
『大変申し訳ございませんでした』
「はい」
生やした草を一瞬で刈り取って、私は本題に入った。
タイトルの締め切りが出来れば17時、最悪20時までとの事だったので、今日寝るまでと明日の仕事中にある程度アイデアを出し、15時頃に一度メールを送って話し合う事となった――私がフリーターだからこそできる荒技である。
『すみません本当にありがとうございますぅ……』
過去最大のやらかしと私のリカバリーを受けて、電話の向こうで平身低頭になっている担当さん。
すなわち、担当さんが私に一方的に負い目を持っているというまたとない状況。
――これは、イケるんじゃないか?
そう思った私は、折を見て切り出そうと思っていた『ある提案』を切り出した。
「ところで担当さん――私、カクヨムコンに合わせて、宣伝も兼ねた書籍化エッセイを書こうと思うのですが、書いてもよろしいですか?」
そう尋ねた私に、担当さんは朗らかに答えた。
『あ、全然大丈夫ですよー。寧ろ宣伝していただけるとありがたいですー』
「ありがとうございます。それでお願いなんですけど……」
『はい』
私はニッコリ笑ってこう言った。
「担当さんのやらかしたアレソレ、そのエッセイでネタにしたいんです」
『あ、あ~……イヤ~、そ、それは……』
電話の向こうでプルプル震える担当さんに、私は遠慮なく畳みかける。
「だって、ネタとして美味し過ぎるんですよ。“プロット1か月放置事件”とか、“絵師さん2日で決めてください事件”とか、今日の“タイトル1日で決めてください事件”だって、もうやらかしのベクトルが予想斜め上過ぎて全部面白いんです」
『で、でも……』
「心配なら、投稿前に一度ご確認いただいても大丈夫ですよ?」
『私自分のやらかし書いた文章に
「はっはっはっはっは。冗談ですよ、冗談」
おそらく涙目になっているであろう担当さんを想像しながら、私は悪魔の如く囁いた。
「他の書籍化エッセイとも差別化できれば、作品の宣伝にもプラスに働くと思うんですけど、いかがですか?」
『う、うううぅ……レーベルのイメージを損なわないようにボカしていただければ……』
「ありがとうございまーす☆」
こうして担当さんの弱みにここぞとばかりに容赦なく付け込み言質を引き出したことで誕生したのが、このエッセイである。
(担当さん本当すみません。そして改めて許可していただきありがとうございました)
【宣伝】
こうしてすったもんだの末に無事タイトルが決まった鳩藍の書籍化デビュー作
『
本日12月28日、発売です!
ご興味を持たれましたら、年末年始のお供として是非お手に取っていただければ幸いです!
販売部数によっては続編も決まるかもしれないので、どうぞよろしくお願い致します!
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