蛇女王

藻ノかたり

蛇女王

■ 蛇女王 ■


ある国に、苛烈な独裁制を敷く女王がいた。しかもこの女王、敵を葬る際には、大変いやらしい手法を取る。周りからネチネチと攻め続け、手も足も出ない状態にしてから、いたぶるように殺すのだ。


そして処刑をするその時、敵の死を眺めながら豪華な食事をする事が、彼女の至福のひとときとなった。国民は、そんな彼女を執念深い蛇にたとえ”蛇女王”と呼んで恐れ憎んだ。


だがある日、ついに革命がおき、女王は反乱軍の手におちる。怒りに狂った民衆は、彼女がそれまでしてきたのと”同じ”ように、彼女の両手両足を切断し、正に手も足も出ない体にした。そして生きながら晒し者にする。


「許さぬ、許さぬぞぉ~」


彼女は凄まじい怨嗟を織りなして、嘲笑する民たちを恨み続けた。すると、どうだろう。彼女の胴体は段々と青みを帯びた太い蛇のようになり、体躯もドンドン大きくなっていく。


100日後には、彼女は遂に街を覆いつくすほど巨大になった。そして自分を貶めた民たちを、街ごと次々と平らげていく。まるで蛇が、自分の何倍もある獲物を喰らい尽くすように。


そして国の全てを滅ぼした後、誰もいなくなった大地で体をくねらせながら、


「愚かしい民どもよ。これが私のプライドだ。心の強さだ。思い知ったか!」


と大笑いをした。



「なんだか、気味が悪いですね」


晒し者になって、100日後。こと切れた女王の骸を運ぶ兵士が、隊長に話しかける。


「この女、苦しいはずなのに、満面の笑みを浮かべて死んでますよ」


「多分、死ぬ前に、いい夢でも見たのだろう。最後まで、喰えない女だ」


隊長が、投げやりに答えた。

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蛇女王 藻ノかたり @monokatari

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