第10話 新たな一歩

「雨宮さんお待たせ、簡単な物だけど…」

そう言って出したのはオムライス。


「すごく美味しそうじゃん、しかもこれあれだよね?割ったらとろとろの卵が出てくるやつ!アタシ一回やってみたかったんだよね!」


「そう?喜んでいただけたなら何よりです。はい、ナイフで割って。」


「ねぇ、写真と動画撮っていい?」


「いいけど早めにしなよ?冷めちゃうから」


「ありがとう!じゃっまずは写真〜♪その次は動画♪空君ちよっと撮って」


雨宮さんに言われるがままがオムライスの卵の部分を割るところを撮影した。

結構絵になるな。


「うはぁ〜すごーい中からとろとろの卵が流れ出てくる!どう?ちゃんと撮れた?」


「うん、ばっちり!じゃあ、食べよっか。」


「「いただきます」」


「どう?おいしいですか?」


「うん!めっちゃ美味しい!」


「良かった、なるべく早く作ったから味付けとかも適当にしちゃったけどお口にあったようで良かったよあと、今日はありがとう天宮さん、色々と…」


「あぁ、いいのいいの困った時はお互い様って言うしあのままずっと抱えこんでたらいつか体壊してたでしょうし、その代わりアタシが困ってたら今度は空君が助けてよね?」


「そ、それは勿論。」


「ふぅ〜ご馳走様!今日も美味しかったよ!お皿アタシ洗おうか?」


「今日はいいよ、ほらもう遅いし早く帰りな。」


「じゃっ、お言葉に甘えて帰らせてもらいます!」

満足そうな顔をした雨宮さんが帰りの支度をし、玄関で靴を履いた。


「雨宮さん今日はありがとう!俺、今はこんなだけど一歩ずつゆっくりと変わっていくからしっかり見てて欲しい!」


「うん、しっかり見てる。おやすみ空君。」


「おやすみなさい、雨宮さん。」


バタン。


鮮やかな笑顔のまま雨宮さんは帰った。

ドアが閉まった後も玄関の前に立ったまま僕は思った。


「今日は寝れんな。」

そう呟いた。





「これで終わりかな。」


玄関で数分立ち尽くした後、漫画を自分の部屋の本棚に並べ直して、食器を洗い、洗濯機を回してからお風呂に入り上がって着替えた後に洗濯し終わった衣類を干し、ベットに横たわった。


「あぁぁ恥ずかしい、恥ずかしすぎる〜」

雨宮さんの前で子供みたいに泣きじゃくった事を思い出してしまいベットの上で左右に転がる。


「帰る前「しっかり見てて」なんてカッコつけて言ったけどあんな泣きじゃくった後だからプラマイ0じゃないか〜」


「もう寝よう!今日の事は明日の自分がなんとかしてくれる!」

恥ずかしさのあまり自暴自棄になった僕はそのまま寝ようと布団を被り目を瞑って数分……


「あぁぁ寝れない!寝たいのに寝れない!どうすれば寝れるんだ、そうだスマホで調べようスマホで!」

全く寝れないのでスマホで調べて今すぐ出来そうなものを片っ端から試した。


最初はひつじを数えたけど効果無し、次にアリス式睡眠方、米軍式睡眠方、4・7・8呼吸法など試したが眠るどころかだんだん目が覚めてきた。


「何をやってんだ俺…」

部屋の天井を見つめながら呟く。


「母さん、父さん元気にしてるかな…最近電話してなかったし、明日にでもしてみるか。」

目を瞑り、昔を思い出す…母さんと父さんと一緒にご飯を食べながら楽しく話してたあの頃を…また一緒に楽しくご飯を食べたい。

そんな事を思い出していたらいつのまにか寝ていた…

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