第14話 起こした奇跡


 二人が室内に入ったと同時に、扉がピシャリと閉められた。


 驚いて振り返ると、扉のわきには青葉が立っていた。扉を閉めたのは、彼女だった。


 そして閉められた扉には、何やらびっしりと文字が書き込まれた白い紙が数え切れない程に張り付けてあった。



 ―――お、おふだ


 なっ何で、扉に………?



 すると困惑している桜の様子に気が付いた青葉が、ゆっくりとお堂の中心を指さした。


「あの子を守る為に、お堂全体に結界を張っているんです。がこれ以上増えたら、手が付けられなくなりますから………」


「アレ………?アレって何ですか?」


「アレは―――アレです。あなたには、まだ視えませんか?でも―――このお堂の中にいれば、あなた達にも直に視え始めると思いますよ。何故なら、今このお堂の中は姉さんの想思そうしの力で満ちていますから………」


「おっ…お姉さん?―――ですか?」


「―――はい。姉は、あの最後の結界の中で、今もあの子を守っています」


 そうは言われても、青葉が指し示している先には何も有りはしなかった。誰も、居やしなかった。ただ……綺麗に磨かれたお堂の床があるだけだ。


 だけれど―――言われてみれば確かに不自然だった。他の場所には椅子などが並べられていて、いつでも法事などが行えるように準備がされているのに、その場所だけ何も置かれてはいない。桜は、不自然にぽっかりと空いた空間に違和感を感じた。


 そこに、ケンタが声をかけてきた。


「………なぁ桜。このお堂の中、何か飛んでないか?」


「………え?何かってなに? 私には、なにも―――?」


 そう言い掛けて、言葉が止まった。確かにケンタの言う通り、何かが視界の中をチラチラと動いている。



 なに? 何かが、飛んで………る?



 桜が目蓋まぶたをパチクリとまたかせていると、近付いてきた青葉に手を握られた。


「………どうやら、視え始めたみたいですね。あなたはもう、夢の中でも視てますよね?アレを―――」



 ひらひらと、桜の目の前を一匹の大きなちょうが飛んで行く。


 そのちょうは、あの夢の中で視た百合ゆりの花がちょうへと変わったアノちょうだった。ただし、その色は………夕暮れに染まった時の、真っ赤な血の色。


 桜が息を殺して見つめる先で、そのちょうはあの違和感を感じた空間へ飛んでゆく。


 バシッッ―――!


 すると突然、ある空間までいたったちょうが火花を散らしながら飛散し消えた。


「―――あっ!」


 突然の出来事に、桜は驚いて声を上げてしまった。


 もちろんちょうが消えてしまったことにも驚いたが、今、一瞬だけ、何もない空間に人の姿が視えた気がしたからだ。


「な――っ!なに!? 今、あそこに誰かいなかった!?」


「―――ああ、俺も一瞬だけ視えた。白い着物を着た女の人じゃなかったか?」


 桜とケンタがゴシゴシと目蓋まぶたこすっていると、その何も無い空間から突然、女性の声が聞こえてきて二人を更に驚かせた。


「………青葉、あなた二日間も何処に行っていたの?お父様が、随分とご心配されているわよ。―――勿論、私もね」


 突然聞こえたその声に、桜はギョッとした。それにその声の主は、随分と怒っている様子だ。


「―――私の声が、聞こえているのかしら? 答えなさい、青葉」


 誰もいない空間から突然聞こえてきたその声に、桜達がしていると青葉がその声がした方向へと歩いていった。しかしその足取りは、トボトボとおぼつかない。


「………ごめんなさい。糸を……辿たどって……いたんです」


 まるで蚊が鳴く様な小さな声で、あの不自然に開けている空間の前で立ち止まった青葉がうつむきながらポツリとつぶやく。


「………糸? あなたまさか、この黒い糸を辿たどっていたの?」


「………はい」


「………………バカね。呪いの糸なんて世の中には、そこいらじゅうに張り巡っているのよ。蜘蛛くもの糸みたいに複雑にからみ合っている糸を辿たどって、一人の人間に辿たどり着くなんて………広い砂浜で、小さな砂金を見つけるくらいの奇跡なのよ?」


 そこで一度、言葉は止まった。暫く待っても話し出さない声に、桜が今のは幻聴だったのではと思い始めた頃に、ようやく話の続きが始まった。



「―――でも、あなたはその奇跡を起こしたようね青葉」


 そして再び話し始めた声に、先程までの厳しさはなかった。それどころか包み込むような、優しい響きを感じる。


「さすがは、私の自慢の妹だわ。 ―――でもね、青葉。無茶しすぎよ?お父様も私も、本当に心配したんだから………」


「………ごめんなさい。本当に……ごめんなさい、姉さん。でも……私、いずみちゃんがいなくなってしまうことを考えたら、とても……とても、じっとなんて………して、いられなかったんです」


「そうね。あなたの気持ち、とても分かるわ。私もお父様も、同じ気持ちだもの」


「………お父様は、どちらにいらっしゃるんですか?私は、お父様にも謝らないと、いけません」


「お父様なら、総合病院にいらっしゃるわ。あちらにも呪いが届いているのよ。だからいずみちゃんを守る為に、ずっとお父様は病院にいらっしゃる。今も―――病院全体を結界で守っていらっしゃるわ」


「そんな………!そんなに大きな結界を張り続けたら、お父様が―――っ!」


「ふふっ、お父様はそれくらいで参ったりなされないわ。それよりも青葉―――そちらにいらっしゃるお客様方を、私にも紹介してもらえないかしら?」


 二人の会話を右往左往うおうさおうしながら聞いていた桜とケンタは、手招きをされて恐る恐る青葉に近付いて行った。状況が飲み込めずにアタフタしている二人に、青葉が説明をしてくれた。


「―――今、私が話しているのは、姉の紅葉もみじです。二人に会ってもらいたかったのは、他でもない姉なんですよ。

 ―――姉さん、こちらにいらっしゃるのは、桜さんとケンタさんです。その子から出ている糸は、桜さんに繋がっていました。だから私は、桜さんにお願いして此処に来て頂きました。………姉さん。姉さんに、聞いてもらいたい話があるんです」


「………色々と、事情があるみたいね。分かったわ、話を聞かせて頂戴。でも、ちょっと待ってね。今、二人にも私の姿を視えるようにするわ。その方が二人には話し易いでしょう?でもそうすると……もっとハッキリと呪いの姿が具現化ぐげんかしまうけれど、いいかしら?」


 姉にそう言われて、青葉は桜達に目配せをした。―――覚悟は、出来ている?という意味の目配せだろう。もちろん―――もう、桜達の気持ちは決まっている。


「初めまして、山崎桜です。こっちは下崎健太といいます。………ごめんなさい、私のせいでこんなことになってしまいました。 ―――本当に、ごめんなさい。


 私達二人は、覚悟が出来ています。絶対にリーダー……いずみさんとあの子を助けるって決めたんです。

 もう、ちょっとやそっとでは驚かないので―――お姉さんのいい様にして下さい」


「ふふっ、ずいぶん可愛いお客様方を連れてきたかと思ったのだけれど………勇敢なお友達の間違いだったみたいね。―――それじゃあ、驚かないでね」


 そう言うと姉と呼ばれる姿の見えない声は、一言だけ聞いたことのない発音の言葉を発した。すると、どうした事だろう―――誰もいなかった空間に、一人の女性が現れたではないか。


 その女性は上は白衣はくい、下は赤いはかまという、いわゆる巫女みこの服装で座っていた。お寺なのに何で巫女みこなの―――?とは思ったが、今の桜達はそれ処ではなかった。


 何故ならその女性の姿が見えたと同時に、部屋中のいたる場所に赤いちょうが浮かび上がったからだ。


 ―――決して狭くはないお堂の中を、辺り狭しと大量の真っ赤なちょうたちが舞っている。


 何十何百というちょうが視界のいたる場所でひらひらと踊っている光景に、桜は気持ち悪さと恐怖しか感じなかった。


「――――――ッ!!!」


 うわ――――――っ!と、隣りでケンタが叫び声を上げた。


 桜も危うく悲鳴が喉を通り掛けたが、覚悟は出来ていると言った手前、簡単に弱音を口にすることは出来なかった。そんな気持ちと桜が闘っている間にも、女性の近くを飛んでいたちょうが何匹も火花を散らしながら消し飛んでゆく。



「―――初めまして、青葉の姉の紅葉もみじです。こんな格好かっこうで、ごめんなさいね。少しでも気を緩めると、結界が崩れてしまうの」


 そう言って微笑んだ彼女の笑顔には力が無く、ひたいには玉のような汗が幾つも浮かんでいた。












 ☆あとがき☆




 こんにちわ!🌞、こんばんわ🌙!

 今日もこの物語のページを開いて下さり、本当に本当にありがとうございます!


 そして――!たっくさんの応援を、いつもありがとう!

 引き続きの応援―――どうぞ、よろしくお願いいたします。(*_ _)ペコリ



 黒木青葉と名乗った少女に連れられて桜ちゃんとケンタ君がやってきたお寺には、彼女のお姉さんの姿―――って、あれ?誰もいないけど?と、思ったら!あわわっ!誰もいない空間から声が聞こえてきたぁ――――!!

 

 しかも、姿を現した大量の血の色をした蝶が飛び回ってた!これが呪いが具現化した姿だっていうのぉぉお!ひょえぇぇえ―――!オカルトぉぉおおお!

(≧◇≦)💦


 二人とも、今すぐに逃げてぇぇぇ――――っ!!


 ―――と、いうことで(笑)


 ☆と💗そして――作品とわたくし虹うた🌈のフォローで、どうか二人の応援をよろしくお願いしま~す!


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