ヴァレンティーナ・ディア・ルークスタチア 始まり
ヴァレンティーナ・ディア・ルークスタチアの始まり【1】
平和な村ヴィストランドを美しい夜空が空いっぱいに覆っていた。
ヴィストランド村は村民がとても陽気で元気な人が多い。
そんなヴィストランドに陰気な子がいたりしてもおかしくない。でも‥‥。
そんなヴィストランドの空の下、夜、大きな病院で生まれた一人の女の子。その子は部屋を震わすような大きな声で、元気いっぱいに泣いていた。
「ルークスタチアさん、生まれましたよぉ。ほら元気な女の子が」
「あぁ、やっと。私たちに子供が」
助産師が子供を母に見せて、ベビーベッドに置く。
「うわぁあ!かわいいねぇ」
助産師はにっこりと温かい笑顔で微笑ましくこちらを見ていた。
「夫さん呼んできますね。お母さん」
そう助産師はいって、部屋の外へ出る。
「ワームルさん。生まれましたよ。元気な女の子です」
「‥‥!本当ですか!」
「はいっ」
ワームルは輝く目をして大きい声を出した。
――ガチャ!
ドアが開く音と同時に、ワームルが勢いよく入る。
「よく頑張った!妻よ!よく頑張った!」
「ありがとうね。あなた。じゃあさっそく名前はどうしようか、お父さん。考えてきたの?」
「もう決めたよ、この子は」
「ヴァレンティーナ!ヴァレンティーナ・ディア・ルークスタチア!」
【日常と好きな時間】
「えらいわねぇ、ヴァレン。手伝いをしてくれて」
ヴァレンは母の医者仕事を手伝っていた。
「‥‥いいえ。別にどうってことありません。お母さんの医者仕事を手伝うほかにすることがないのですから」
「それでも花畑が好きわよね?ヴァレン。お父さんが今日は夜遅いということだから夜まで見てようか。そこは夜にまたより一層輝く花畑なの」
「‥‥そうですね。私は行きたいです‥‥が、お母さんはいいのですか?仕事があるというのに」
ヴァレンは自分のことより母やその患者のことを心配していた。
「いいわよ。今日は午前中だけだから、交代にほかの医者を呼んでいるから」
「‥‥なら、私は行きたい、です。お花畑へ‥‥」
ヴァレンはいつもより少しだけ期待の声で母に言う。
「じゃあ行こうかね。お昼後に」
「‥‥やった‥‥‥」
そしてヴァレンの母は昼食の準備を始める。
「私も手伝います。お母さん。今日は何ですか?」
「今日はミルクのパンなんてどう」
「いいですね。作り方を教えてください」
「でもいいわよ。これは私だけでもいいわよ」
そう、母は言ってヴァレンに席に着くよう促す。
「‥‥じゃあ、お願いします」
「そんながっかりしなくてもいいのよ。私は苦労しないから」
「はい‥‥またご飯作るとき手伝わせてください。楽しいので」
「うふふ。いいわよ。今日はごめんね」
そうして部屋中にミルクの温めるときのにおい。パンが焼けるときのにおい。母の器用な手で使われている道具が当たる音、擦れる音。焼けるおと。そんな音とにおいがあると、視界が失われていても母の姿を想像できるような。
ヴァレンはそんな日常が好きだった。
「はいできたわよ」と昼食ができたことをヴァレンに伝える母。
「ありがとうございます。お母さん」
「ではいただきます」
「いただきます」
二人は合掌をし、ミルクパンをちぎって食べる。
「おいしいです。お母さん」
「簡単だから、軽いおやつにするのもいいかもしれないわよ」
そして、さすがにミルクパンだけだと物足りないと思った母はコーンスープも用意する。
「コーンスープですか?」
「そうよ。飲んでみて。少しいつもと違うはずよ」
そういわれたヴァレンは、コーンスープをスプーンですくいあげ一口、口にする。
「‥‥もしかして、砂糖入れました?」
「そうよ。今までは砂糖をかたくなに避けていたけれど、今日は思い切って入れちゃおうと思ったのよ。砂糖をうまく溶け込ませるためにいろいろ工夫したのよ」
「‥‥すごいです」
「ほんと?でも大変でもあったかもね。砂糖の甘さが独立しちゃうことがあったから、全体をもう少し濃さを上げてみたの」
「‥‥砂糖の甘さが全体とあってます‥‥」
そうして少し長い会話をした。
ヴァレンはこの空間がとても好きだった。
「さっそろそろ時間も無くなっちゃうからしたくしなさい。花畑の」
「はい」
母はヴァレンをしたくするよう促す。
【地球の星は夜に輝く】
「じゃあいくわよ」
「はい」
そうして家から歩き2時間遠い遠い場所へ行く。
「疲れていない?ヴァレン、すごい汗よ?」
「‥‥大丈夫です」
そして軽快なテンポで踏む足はだんだんとゆったりのテンポで踏んでいた。
「そろそろよ。ヴァレン」
目の前に林が広がる。
「この林の中にあるの」
「‥‥‥もう、少しで‥‥」
そして林を歩き数分。
「みて、ヴァレン。これが神の休憩場所と呼ばれるほどの花の海」
「‥‥!き、きれいです」
「でしょう?」
(これが本当に存在したなんて、思いもしなかった。)
ヴァレンはそう、視界全体を埋め尽くす花の海に心を奪われていた。
「花は枯れても美は枯れることない」
「‥‥‥?」
「この花はそう私たちに伝えているようね」
夜の更ける時間帯がくる。
完全に暗くなったころ、花の海は一つの光が飛ぶ。
合図を出したかのようなその光は点滅し、その瞬間。
「‥‥‥‥!」
ほかの蛍が一気に輝きだす。
雑に置かれたようなその蛍たちは、なぜか整ったように動いている。
これが『地球の星』
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