怪盗ファントムⅠ 完全版

ネコを愛する小学生(中学生)

完全版 怪盗ファントムⅠ

怪盗ファントムⅠ

 ある時から世間では、一人の人間が話題になっていた。その名は怪盗ファントム。どんなものでも盗んでしまう凄腕の怪盗だ。彼は、世間で最も恐れられているといってもいいくらいの怪盗である。今日はみんなにどうして怪盗ファントムがそこまで恐れられているのかをお伝えしよう。

第一章 怪盗からの手紙

 澄んだ空気が夜の町を包み込んでいて、この日は風が少し肌寒く感じる夜だった。

夜の町からは、人々の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。なぜか?それはここ、クリスサントで最高権力者のイーサン・マイルズのお屋敷でパーティーが開かれているからだ。

彼は世間では、国民のことを気遣って様々なことをしてくれるいい人なのだが、実は、高価なものには目がなく、それを手に入れるためならどんなことだってする欲望の強い人だった。

そんな彼が今日はお屋敷でパーティーをするというので、たくさんの人々がパーティーに参加していた。

だがしかし、そんな楽しいパーティーの時間もマイルズからしてみれば、恐怖の時間でしかなかったのである。

なぜか?それはマイルズのお屋敷に怪盗ファントムからの一通の手紙が届けられたからだ。

その手紙はこのような内容だったらしい。

『今日、午後十時三十分にイーサン・マイルズ様の輝く王冠をいただきにまいります。

            怪盗ファントム』

この手紙を見たマイルズは、しばらくの間放心状態になっていたが、すぐに警察に連絡し、「輝く王冠を何としてでも怪盗ファントムに奪われないようにしろ!」と、命令したのだ。だがしかし、今日のパーティーにはこの国(クリスサント)の王様も出席するので、マイルズはパーティーを中止にしたくてもできないのだ。

なのでマイルズは、まだ午後九時なのにとてもそわそわしているのだ。

そんな状態のマイルズのもとに王様が近づいて話し始めた。

「今日はこのようなパーティーに参加できてとてもうれしく感じますぞ、マイルズさん」

「ええ、私も王様が参加してくださるのでとても光栄です」と、マイルズはしゃがれた声で言った。その声には若干の苦しみも混ざっていて、非常に重ぐるしい声であった。

王様は、「そういえばマイルズさん。今日は怪盗ファントムが『輝く王冠をいただきに参ります』という一通の手紙が届いたと聞きましたがそれは本当ですかな?」と、マイルズに聞いた。するとマイルズは、顔を真っ青にして「知っていましたか。そうなんです。いつものように郵便ポストを開けたらポストの中に怪盗ファントムからの手紙が届いていて、今はとてもびくびくしています」と、わざとらしく体を震わせて言った。「それで、警察には連絡したのかね?」と、王様は真剣な顔つきになりながら尋ねると、マイルズは、「えぇ、一応は。でも、あの怪盗ファントムが簡単に警察に捕まるかどうか…」と、心配したように言った。

「それもそうですな。でも、大丈夫ですぞ。こんなこともあろうかと優秀な警部を呼んでおいたので、安心してくだされマイルズさん」と、言いながら王様は、体ががっしりとした4~50歳くらいの男を指さした。「彼こそがわしが呼んでおいたエドール・サトス警部だ。彼はとても優秀で、誰も解けなかった事件を一人で解決してしまったり、誰も気づけなかったトリックを見破って犯人を逮捕してしまうほどの凄腕の警部なのだよ」「彼があの有名なエドール・サトス警部なんですか

!?初めて会いますよ。彼ほどの実力があれば本当に怪盗ファントムを逮捕してくれるかもしれない」と、マイルズは驚きながらもエドール警部が来てくれたという安心感で、さっきまでの緊張や焦りが少し和らいでいた。

マイルズは、挨拶をするためにエドール警部に近づいた。そして、エドール警部に「こんばんは。エドール・サトス警部」と言った。エドール警部は、「こんばんは。マイルズさん。エドールと呼んでください」と言って、マイルズと握手をした。

しばらくエドール警部と話していると、怪盗ファントムについてのことを話してくれた。「実はですねマイルズさん。怪盗ファントムは盗みを働くときに、仲間と共同して盗むときと、単独で盗むことがあるんです」それを聞いてマイルズは、「じゃあ今日、私の輝く王冠を盗みに来るときは、単独ですか?それとも共同ですか?」と、エドール警部に聞いた。エドール警部は「それはまだわかりませんが、怪盗ファントムはこの私が必ず捕まえて見せます」と、自信に満ちた顔で言った。

他にも、エドール警部はマイルズに怪盗ファントムについての話をたくさんしてくれた。それ以外にも、自分の今までに解決した事件の話や、趣味の話などをして楽しんでいると、王様が、「そういえばマイルズさん。輝く王冠とは、どんなものなんですかな?

怪盗ファントムが盗みに来るのだからさぞ高価なものなのだろうという予想はできているのですが、どれくらい高価なものなのか教えていただけないだろうか?」と、マイルズに聞いた。「ああ、輝く王冠はですね、とても大切なものでして売れば20万マイル(作者が考えたお金の単位で、大体1マイル1000円ぐらい)以上の価値がある物なんです。それに輝く王冠はもともと私の先祖が作ったものでして、素材にはクリアダイヤモンドという世界で最も美しく輝くダイヤモンドとして有名な宝石を使っていたり、金なども使っているのでとても高価なものなんです。いや~とうとう私も怪盗ファントムに狙われるようになりましたか」と、マイルズはとても自慢げに言った。すると王様は驚きながら「それはたまげた。そんなに高価なものだったんですね

!?」と、目を丸くして王様が言った。

 王様やエドール警部と話していると、時計の針は、午後十時二十分を差し掛かっていた。それに気づいたマイルズは、冷や汗をかき、慌て始めた。するとエドール警部がマイルズに近づき「大丈夫ですよ、マイルズさん。怪盗ファントムは必ずこの私が逮捕して見せますから。それに、部下もたくさんいるのでそう簡単には怪盗ファントムを逃がさないので」と、マイルズを励ますように言った。「ありがとうございます。エドール警部」と、マイルズは冷や汗を服の袖で拭きながら言った。すると王様は「マイルズさん。お手洗いはどこにありますかな?」と、マイルズに聞いた。マイルズは、「お手洗いならここをまっすぐ行って突き当りのところにありますよ」といって王様をトイレまで案内した。だがマイルズはおかしいことに気づいた。それは王様が少し前の時間に「お手洗いはどこですかな?」と、聞いていたし、さっきから知らない人とよくこそこそと話していたからだ。マイルズは怪しいと思ったが、「王様が怪盗ファントムの訳がない」と、思っていたので、王様がお手洗いから戻ってくるときにはもうすでに疑いは晴れていた。

第二章 怪盗現る

 お屋敷からは、いつまでも楽しそうな声が聞こえている。みんながパーティーを楽しんでお酒の酔いが回ったころ、時計の針は午後十時三十一分を刺していた。

マイルズはそれに気づくと、慌てて輝く王冠が盗まれていないか、エドール警部と確認しに部屋を出た。

輝く王冠を保管している金庫室につくと、マイルズは、パスワードを入力し、金庫を開けた。金庫室の中に入るとすぐにエドール警部とマイルズは、輝く王冠がなくなっていることに気が付いた。「な、なくなっている。私の輝く王冠が…ない!」と、マイルズは心の底から絶望したように言った。エドール警部は、金庫室の中をもう一度ぐるりと見回した。「なんてことだ…怪盗ファントムは予告時間ぴったりに物を盗み、その後煙のように消えてしまったのだ。これが噂の怪盗ファントムなのか…」と、エドール警部は少しの間圧倒されて、体が動かなくなっていた。

だがしかし、エドール警部は思った。「もし、本当に怪盗ファントムが予告時間ぴったりに物を盗んだのなら、まだこのお屋敷の中にいるはずだ」と。「マイルズさん。行きましょう。怪盗ファントムはまだお屋敷の中にいるはずです。何としてでも捕まえましょう。そして、輝く王冠を取り返しましょう」と言い、エドール警部は部屋を出て、パーティー会場へと向かった。

会場には様々な人がいるので、誰が怪盗ファントムなのかわからなくて、困っている時、マイルズのもとへ王様が近づいて話しかけてきた。「どうしたのですかな?も、もしかして」と、王様が言いかけたとき、パーティー会場の奥から「きゃー!」と、叫び声がした。エドール警部は真っ先に声のしたほうへと駆け付けた。するとそこにいたのは一人の女性だった。エドール警部は「どうしたんですか?」と、女性に聞いた。女性は「な、ないんです。私の大切な真珠のネックレスが…ちゃんと首にかけていたのにないんです!」と、今にも泣きそうな目でエドール警部にしがみついた。「ま、まさか怪盗ファントムの仕業かしら?」と、周囲の人々がざわめきだした。「え、本当にあの怪盗ファントムがやったの?」「か、怪盗ファントムだって…・?」皆が口々にささやきあう中、エドール警部はある違和感を感じていた。それは何かを見逃しているような気持ちの悪い違和感であった。その時、エドール警部には、一人の男が目に留まった。それは王様であった。なぜか?それはパーティー会場にいるみんなが驚いているのにもかかわらず、王様は全く驚いてはいないからだ。それに王様はみんなとは違って女性ではなく、何か違うところを見ていた。王様はとても集中してジイっと何かを見つめていた。エドール警部は「何を見つめているんだ、王様は?」と、不思議に思った。明らかに王様はいつもの王様ではなかった。何かが王様になりすましているような感じだった。その時、エドール警部はある恐ろしいことに気づいてしまった。「もしかして、怪盗ファントムは王様に変装しているのか?だとしたら、怪盗ファントムは本当に凄い怪盗だ。よく目を凝らしてみないと違和感に全く気付けなかった」それが分かった時、エドール警部は「こうしてはいられない。今すぐにでも怪盗ファントムを捕まえなくては」と、手錠をいつでも取り出せるように構えながら王様のもとへと恐る恐る近づいた。

すると王様は、エドール警部が自分が怪盗ファントムなのだと勘づいたことを知り、すぐさまパーティー会場を抜け出した。

エドール警部は、「待て、怪盗ファントム。もう逃げられないぞ」と言い、怪盗ファントムの後を追いかけた。

第三章 逮捕?

 エドール警部が大声で言ったので、会場のみんなや、マイルズが大慌てでエドール警部の後を追った。「何としてでも怪盗ファントムをとっ捕まえて輝く王冠を隠した場所を聞き出さねば」と、威勢を放ちながら怪盗ファントムを追いかけるマイルズや、「私のネックレスを返して」と、涙目で叫ぶ女性。それに、「怪盗ファントムだって、それはいいスクープになる」と、いう様々な思いで会場の全員が怪盗ファントムを追いかけた。

だがしかし、どれだけ大勢で怪盗ファントムを追いかけても、気づいたら怪盗ファントムはどこにもいなかった。

二手に分かれても怪盗ファントムは気づいたらどこにもいなかった。

行き止まりまで追いつめても気づいたらそこにはいなかった。そのうちみんなが思った。「なぜだ?なぜ怪盗ファントムを捕まえられないんだ?おかしい。何かがおかしい」と、どれだけ頑張っても怪盗ファントムを捕まえられなかったが、ついにエドール警部が怪盗ファントムを捕まえたのだ。「捕まえたぞ、怪盗ファントム」そう言いながらエドール警部は怪盗ファントムに手錠をかけた。だがしかし、いくらエドール警部が話しかけても怪盗ファントムは一言も話さなかった。まるで肉体から魂が抜けたような状態だった。エドール警部は「おかしいな」と、首をかしげて思った。だがしかし、気づいたときにはパーティー会場にいる全員がエドール警部の周囲に集まっていたので、エドール警部は身動きが取れなかった。「あなたが怪盗ファントムね。私のネックレスを返してよ」と、女性が怪盗ファントムに話しかけるが、ファントムは何も言わなかった。他にも「私の輝く王冠を返せ!」と、様々な人たちがファントムに向かって叫んだ。そんな時、どこかから一人の男性の笑い声が聞こえた。「フハハハハハ」その笑い声につられて全員が後ろを振り向いた。そこには怪盗ファントムがたっていたのだ。「え、怪盗ファントム!?じゃあここにいるのは誰?」と言いながら、全員が恐る恐る振り返ってよく顔を見てみると、そこにいたのは気を失っていた王様だった。マイルズと、エドール警部は「お、王様だ!」と、叫んだ。エドール警部は王様の命には別条がないことがわかったので、「ふぅ~」と、安心したように息を吐いた。そして怪盗ファントムに向かって「怪盗ファントム。王様に何をした」と、冷静ではあるものの、その声には怒りが混じったように言った。すると怪盗ファントムは、「いやだな~ただちょっと眠ってもらっただけじゃないか。エドール警部」と、言って、エドール警部のもとへと走っていき、腹部にけりを入れようとしたが、エドール警部はそれを避け、逆に怪盗ファントムにけりを入れた。だが怪盗ファントムは何もなかったかのようなすました顔をして、「さすがはエドール警部だ、僕にけりを入れるとは」と、エドール警部をほめるように言った。パーティー会場の全員は今の光景をただただ口を大きく開けて見ていることしかできなかった。と、いうより動けなかった。怪盗ファントムは、何かすさまじいオーラを放っているような感じがして、動きたくてもそのオーラに圧倒されて動けなかったのだ。

その後も、エドール警部と怪盗ファントムの戦いはつづいたが、エドール警部はどれだけ頑張っても怪盗ファントムを捕まえることができず、とても苦しんでいた。怪盗ファントムは、そんなエドール警部をもてあそぶようにして「エドール警部。あなたはとても面白い。いつまでもこうやって一緒に遊んでいたいが、もう時間が無くなってしまった。でもまた一緒に遊びましょう」と、少し名残惜しそうに言った。その言葉を聞いて、エドール警部は、怪盗ファントムが仲間を連れてきていることに気づいた。それに怪盗ファントムの行動を考えてみると、今回の盗みは仲間を連れていないとできないことだったからだ。そんなことを考えていると、怪盗ファントムは、「気づきましたか、エドール警部。そうですよ、僕は今回の盗みでは仲間を連れてきているんです。ちょうど今このお屋敷の物を全て仲間たちが盗んでくれたよ。ほら」と言って窓の外を指さした。そこにはトラックが止まっていた。そしてトラックの荷台に何者かが輝く王冠やこのお屋敷にあるほかの宝石などを積んでいた。それを見ていたマイルズは、「おのれ怪盗ファントム。返せ!私がどれだけ苦労して輝く王冠を手に入れたと思っているんだ!」と、顔を真っ赤にしていった。だがそれを聞いた瞬間、パーティー会場の全員がマイルズに「え、今なんて言った?」と、驚いていた。マイルズは「しまった」と息をのんだ。マイルズはいつも自慢げに「輝く王冠は私の先祖が作ったんですよ」と言っていたが、さっきのマイルズの発言は、自分が誰かから輝く王冠を買ったかのような言い方だった。会場の全員はとても驚いていた。すると怪盗ファントムは「マイルズさん。あなたは僕に「輝く王冠は私の先祖が作った」と言いましたが、実際のところはほかの国の貴族から買ったのでしょ」と、会場の全員に明かすように言った。それを知り、会場の全員はマイルズをにらみつけるような目で見始めた。マイルズはそんな目に耐えきれず、どこかへ走り去っていってしまった。

第四章 そして

 会場の全員は、走り去っていったマイルズを追いかけてどこかへと行ってしまった。そしてこの部屋に取り残されたのはエドール警部と怪盗ファントムだけになった。怪盗ファントムは、エドール警部に「エドール警部。今日はとても楽しかったです。今度は一緒にお酒でも飲みたいくらいだ。そうだ、マイルズさんも結構な犯罪をしているので捕まえたほうがいいですよ。例えば宝石の詐欺とか密輸です。マイルズさんも結構なことをしますね~」と怪盗ファントムは、無邪気に笑っていたが、少し真剣な顔になり、「エドール警部。またお会いしましょう」と、一言を残し、窓を破って仲間の車に乗り移り逃げていった。エドール警部は怪盗ファントムを追いかけるために部下を呼び、一緒に怪盗ファントムの車を追いかけたが、すぐにまかれてしまい、逃げられてしまった。

後に、エドール警部は、マイルズを捕まえて、怪盗ファントムの言ったことが本当なのかを調べることにした。

数日後の新聞ではこんなことが書いてあった。『エドール警部、惜しくも怪盗ファントムを捕まえられなかった。これが神出鬼没の怪盗ファントムなのか!?

怪盗ファントムを捕まえることはできなかったが、エドール警部はイーサン・マイルズを捕まえた。イーサン・マイルズは宝石詐欺や宝石密輸をしていた事が明らかになった。「これに気づけたのは、怪盗ファントムの助言のおかげだ」と、エドール警部は語っている。また、次こそは怪盗ファントムを捕まえると』この新聞を見た怪盗ファントムとエドール警部は、「また会おう、エドール警部」「怪盗ファントム」と、お互いの心に誓いあった。そして、エドール警部は「次こそは」と、右手をギュッと力強く握った。

                           完全版 怪盗ファントムⅠ終わり

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