ひとくち怪談─人形編─
双町マチノスケ
第一話「遊び相手」
私が幼い頃、よく一緒に遊んでいた人形がありました。特に変わったところもない小さな西洋人形でしたが、引っ込み思案だった私にとって良き遊び相手であり、もちろん一方的に私が話しかけるだけでしたが良き話し相手でもありました。ただその関係は長いことは続かず、人間の遊び相手ができたり、小さい子供らしく興味の対象が移り変わったりして徐々に人形とは遊ばなくなりました。そして、いつしか人形と遊んでいたことはおろか、自分の部屋に人形があったことすらも忘れてしまっていたのです。
つい先日、自分の部屋を色々と整理してたらひょこっと出てきたんです。数年、下手したら10年越しくらいの再会でした。ものを見て手に取った瞬間、忘れてた記憶が一気に蘇ってきて「そういえば子供の時よく人形と遊んでたなぁ」って、少し込み上げてくるものがありました。それで少し感傷的になった私は、最後にもう一度遊んでみようかなって思ったんです。
その人形に向かって「久しぶり」って声をかけてみたんです。
そしたら横に持ってた人形の首だけが急にこっちに向いて。
口だけが動いて。
「もう、遅いよ」って。
老婆のような枯れきった、しかし恨みのこもった声でした。
その言葉を発した瞬間、人形はバラバラに崩れて私の手から落ちました。人形の断面からは血のようなヘドロのような赤黒い変な液体が染み出していて、あたりには何かが腐ったような異臭が立ち込めていました。
──私は、何と遊んでいたのでしょうか。
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