第364話
夏美が桜達に連絡をとり、数分後には無事に合流した。その際にキナコからもち丸達がいない事を聞かれたので焔が連れて行ったと言ったら納得した顔をして夏美の元に向かった。
その後は一二三も復活し、あの名無しの友狐も拠点に帰した後に俺も叶達と一緒に夏美の元に向かう。そして、開口一番に夏美から言われた言葉により…
「「「『花札』の『こいこい』だって!?」」」
「うん。沢山あった皆の考察コメントや考察掲示板を集計した結果、コレが一番説有力な説だと思う」
かなり予想外だった仮説を説明された。
夏美曰く、この階層に出てくるモンスターは全て花札の絵柄に関係しているモンスターであるらしい。
例えばビックボアは猪の札、発光鶴は鶴の札、マロゴリラは和傘を持つ人の札と自分のタブレット端末に花札の絵を見せてから周りにいるモンスターを指差しで説明してくれる。
そしてモンスターが消える理由、それは『役』…つまり狩る順番はどうでもいいが特定の役に対応した花札の絵に関係しているモンスターを狩れていなかったから役なしと見なされて消えたのではないかと推察した。
「実際、さっき渉が火種蝶とメタルディアと戦っていた際に(火種蝶)→(メタルディア)の順番で倒した場合だとモンスターが消えなかったけれど、次に火種蝶を倒したらモンスターが消えた。そして(火種蝶)→(マロゴリラ)の順番で倒した場合だとマロゴリラを倒した瞬間にモンスターが消えた…つまり、花札の役でいう『猪鹿蝶』の役じゃないから2体で消えた場合と3体で消えた場合に二つに分かれてんじゃないかな?」
『猪鹿蝶』…花札を詳しく知らない俺ですら知っている有名な花札の役だ。だからこそ夏美の言葉にかなりの信用性が生まれた…のだが、それを聞いてもある疑問が浮かんだ。
「…夏美、もし花札の節が真実なら『盃の札』と『赤色の短冊の札』と『青色の短冊の札』に対応したモンスターが分からない…というか見ていないし、そもそもそんな札に関係したモンスターは思いつかないんだが?」
そう俺は夏美に質問しながら周りを見る。モンスターが花札の絵に関係しているなら盃、赤色の短冊、青色の短冊の札にもそれに関係したモンスターがいる筈だ。だが、少なくとも俺はそれらに関係するモンスターは考えられないし見てもいない。完全に分からない状態であった。
だが、夏美は笑顔である方向に向けて指を指す。俺はその方向を見ると…
『ウホッ!』
「…あ」
そこにいたのはマロゴリラ2匹。だがそのマロゴリラの内の1匹は和傘を装備していて、その和傘の手元にはストラップみたいに赤色の短冊がぶら下がっている。更にもう1匹のマロゴリラは腰に瓢箪をぶら下げていて、和服の胸元から赤い盃らしき物がチラチラと見えていた。
「たぶん、マロゴリラだけは複数の札の役を兼任しているんだね。皆の配信のコメントを見たら変な格好のマロゴリラの目撃情報が複数個あったし」
「…つまり、この浅層は壁とか無く殺意マシマシのモンスター達が即座に補充され、絶対に乱戦してしまうこの環境で指定のモンスターを倒して花札の役を作り続けて、合計で100点を稼げって事…か?」
「うん、それで合ってる…筈だよ」
俺は夏美の言葉を簡単にまとめてから口にすると夏美が肯定したので右手のナイフを構えつつため息を吐く。
この一歩外に出れば殺意丸出しのモンスター達が我先にと向かってきて乱戦が確実の状況なのに、その乱戦中に花札の役を意味する指定のモンスターを順番に倒さないといけないという普通に考えたら地獄過ぎる状況に文句の一つも言いたい気分だ。
…しかし、今回は叶と赤城さんの未来がかかっている大切なダンジョン攻略だ。泣き言は言っていられない、さっさと夏美が導き出した案の裏付けするのが先だ。
「叶、モンスターを倒さず即座に拘束できるのはお前だけだ。俺と一緒に地獄に付き合え」
「了解。元々今回は俺のわがままだ、だから地獄だろうが煉獄だろうが喜んで付き合ってやるよ」
俺が構えたナイフに人体総変異装置をセットしながらそう言うと、叶は真剣な顔をしながら自分の人体総変異装置を抜いてから別の鞘を取り出してそこに装置を刺す。すると鞘の一部ががスライドして刀の刃が現れ、叶はそれを手首に当てた。それを見た全員は急いで俺と叶から離れてくれる。そして十分に距離をとったのを確認した俺と叶はお互いを見た後にいつもの言葉を叫ぶ。
「「人体総変異〈改〉!!」」
そう叫ぶと俺と叶は一気に自分の獲物の刃で体を傷つける。その後何時も様に液体に包まれた俺達は同時に変異し、赤い水晶を弾け飛ばしてその場に立つ。
「『〈真〉緋雷神龍』」
「『〈真〉神羅豪木』!」
人体総変異した俺達はそう言うと叶が俺より先に一気に駆け出し、両手の根っこを操作して周りのモンスター達に樹液を振りかけ始めた。俺はそれを見てから夏美と桜に向かって叫ぶ。
「『夏美、観測を頼んだ!桜、もし時間切れだった場合は次はお前とミリアさんの番だから準備だけしといてくれ!』」
「「りょ、了解!」」
俺がそう叫び、桜達が返事を返した瞬間に叶が一気に振りかけていた樹液を琥珀にして周りを一気に固定する。俺はそれを見て直ぐに走り出し、そしてまずは目の前にいたビックボアの頭に兜割のドリルを捩じ込んだのだった。
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