第335話
「いや、取り敢えずやりたい事を1人でやると10年くらいかかる計算になったからどうしたもんかと焔に相談したらああなった。姉さんの拠点が便利になったのが悪い」
「機関部以外は全て丸投げで後1ヶ月後に完成予定とか早すぎる。普通ならもっと時間が必要だよ?」
「友狐達の職人としての腕と姉さんの拠点からの材料の供給があったからね。それと、ただ穴が空いただけのほぼそのまま使えるガレオン船があったのもデカい」
俺は姉さんとそう言いながら目の前の光景を見ていた。
あのガレオン船は以前東京スカイツリーのダンジョンで手に入れた沈没船であり、船の中を叶達と配信しながら見たが錆びた大砲やら砕けた樽やぼろぼろの布切れしか見つからずこの船自体何なのか分からずに取り敢えず俺の拠点の湖に放置されていた。しかし、俺の新しい本である『Monster Hand Live 【Eden&Herr】』が手に入った事によりあの船の使い道ができた。
『Monster Hand Live 【Eden&Herr】』はMonster Hand Liveのオンライン専用版のタイトル名であり既にMonster Hand Liveのタイトルの本は持っていたので追加された装備かと思い読んだ結果、内容が予想外のものだった。
何せゲーム内に登場する対超大型モンスター専用の防護施設や兵器などの設計図だったからだ。
そしていま友狐達が大改修しているのが手に入れたガレオン船をその中にあったゲーム内にて海や大河などで使い、小型のモンスターから超大型のモンスターまで幅広く使用できる狩りに特化した専用船『狩猟船』に改修しているのだ。幸い他の本と金剛型戦艦の設計図の写しがあったから帆と動力のハイブリッドで動く船に改修できそうだし、動力のエンジンなどは俺も一緒に作ったから簡単に作れた。それに資材だって…
「…いや、今回の大改修の1番の課題だった鉱石や木材などの資材を姉さんが解決したのが1番の原因だからね?何で『竹林』と『鉱山』が姉さんの拠点内にできるんだよ、めちゃくちゃうらやましいんだが?」
「私的にはもっと機能的な物が欲しかった。でも渉や友狐ちゃん達がめちゃくちゃうれしがっていたから別にいいと思っていたけれど…まさかここまで大規模な事をやらかすとは予想外だった」
姉さんがダンジョンをクリアーしたからErrorスキルが成長して拠点に『竹林』と『鉱山』が生まれたから解決した。非常に羨ましい。
「竹は加工できる幅が広いし竹炭やバイオコークスの材料にもなる。しかも1日でまた生えるし筍も取れるから安定した食料が手に入る。
鉱山も1日で掘った所が戻るからほぼ無限だし、何より鉱山から取れる鉱石は姉さんの知る鉱石がランダムで出る仕様ときたもんだ。狩猟道具を作る身としては是非欲しい施設だよ。マジで羨ましい」
「見たか、コレが姉の凄さだ」
姉さんはそう言ってフンスッという擬音が聞こえる位に胸を張る。
姉さんの拠点は今回の成長により資源の宝庫としてとんでもない事になった。まず、元々無限の木材を提供できる拠点だった物に多様性の塊である竹が取れる『竹林』、鉱石などが無限かつランダムに手に入る鉱山が生まれた事により友狐達の生活水準が跳ね上がった。おかげで友狐は現在470匹まで増え、焔もまた新たな子孫達に喜んでいる。俺も姉さんのお陰で鉱石類に悩む必要もなくなり、拠点間での大量輸送も俺のスキルが成長して出てきた『アイツ』が手伝って…
「ちょ、資材置き場を通り過ぎた!?止まってくださいでございます
『♪』
「…ああ!また不知火の野郎がバカやってるぞ!皆の者であえであえ!」
「「「わー!」」」
…と思ったが思考がシベリアンハスキーに近いから走るのが楽しすぎて背中に資材と案内役の名無しの子を乗せているにも関わらず猛スピードで走り抜けていったよ。友狐達も全力で追いかけているし…
「あいつ、絶対に走るのが楽しすぎて目的を忘れてるな」
「…ちょっと〆てくる。渉はそこにいて」
そんな様子を見て俺がそう呟くと友狐達と非常に仲良くなった姉さんが少しキレ気味になったと思ったら真・龍人化して友狐達の所に走っていった。
「…死なないとは思う…思うが…多分前歯の何本かと骨は数本折れるだろうな…回復薬βを用意するか」
俺はそう言ってスマホをズボンのポケットにしまい、建物の中に入っていく。後ろで大量の落雷みたいな音が響いたが気にしない様にした。
そんなこんなで無事に時は過ぎ、俺達は2年生になり順風満帆な学園生活を…
「叶さん、突然ですみませんが…私の両親に会うべく一緒に京都に来てくれませんか!?」
おくれなかった。非常事態である。
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