第五章 女性の願いと旧家の望み×叶とカワウソドラゴン娘と鬼と純粋=京都海の魔物

第334話

〜〜 3月30日 渉の家 拠点内 中庭 〜〜



〈ふ。太鼓を鳴らせば雷を生み出し、足元の地面から鉄の柱を生み出せる能力だとはいえ所詮はただの背中に太鼓がついた化け狸。ありとあらゆる雷を無効化し、御柱が触れた瞬間に粉になるほどの大量の砂鉄を操る私の前では狩やすい獲物でしかない〉


〈Po…oo…〉


〈たしか、渉の話だとあまり傷がない方が高く買い取ったり新しい装備にしたりできると言っていた。今回は実績を作る目的地で貴方を狩るから余り傷をつけない方がいいから、砂鉄で3枚おろしにしたり電子砲で木っ端微塵にするのは論外…なら渉から作ってもらったこの峨嵋刺がびしを頭に刺して大量の電気を直接脳みそに流して焼くか。そっちの方が楽だし死体が完品に近いほど実績になるしね♪〉


〈Po!?P…


〈そうと決まれば有言実行〉


Ga!!!!〉


「うわぁ…改めて見てもほぼ完封して勝ってるから余計にタチが悪い。いくら学園に転入するにはダンジョンでの実績が必要だって説明されていたからって流石は2日でダンジョンを制覇するのは予想外なのよ」


俺は自分の拠点の中庭にあるベンチに座り、スマホでD&Vの文字化けしたアカウントにある3日前の闘技放送のアーカイブを見ながら苦笑いをしていた。


「いくら激戦区だから多少禁層の情報があるとはいえ…完全にメタはってるから怒り状態でも全然余裕だし、逆に可哀想になってきた」


「別に、電気を使う時点で私の敵じゃない。磁力を使う敵でも同様、私達には赤い雷と絶対に感電しない甲殻と鱗がある。しかも特訓したから磁力も出せるようになった、だから全て潰された奴は最後に肉弾戦しか選択肢がなくなる。だからこちらも身体能力で応戦すればいいだけ、飛んだり水に潜ったりしたら流石に話は別だけれどね」


そんな俺の隣には迷宮学園の校則が書かれた書類に目を通す姉さんがいた。

佐々木家の暴走による岐阜県のスタンピードが終わり、もう直ぐ2年生になる時期まで来た。

そんな中、姉さんがとんでもない事をやらかした、元々姉さんは龍の生まれ変わりだから生きた年数が違うので数ヶ月の人としての道徳を勉強するだけで早くも中学卒業レベルの学力を手に入れ、無事に義務教育を卒業したと教育機関が認めてダンジョン関連の資格とに教育過程終了を認める特別な資格一緒を姉さんに渡した。その後に就職か受験かを選択する時に姉さんが迷宮学園の2年生として転入したいと言い出したのだ。


「転入の際のテストってかなり難しいと聞いていたんだが…実際どうだったの?」


「ん〜…どうだろう?『努力』のスキルを使って丸暗記したから全教科90点がボーダーラインの所をオール満点で突破して面談も普通に受け答えをしてクリアーしたからね。難しかったのはダンジョンでの実績が無かったから作らないとダメな所だけだったかな?」


俺は一旦スマホから目を離して姉さんの方を向いて質問すると、姉さんは未だ校則を覚えているのかそのままの体勢でそう答えた。

そう、姉さんは実際転入試験をほぼ満点で通過した。

だが、最後の課題である『1ヶ月以内でのダンジョン内での実績』が立ちはだかった。

迷宮学園はダンジョンに特化した高大一貫の学校だ、だから受験や転入の際もダンジョン内での活動での実績が大きく評価される。

そんな大切な実績を姉さんは持っていなかったので「…二週間待ってて」と返事をして帰宅。俺に素早く攻略できるダンジョンの情報と渡辺さんの電話番号を聞いてきた、だから俺は適当に浅草の雷門にある雷神像前ダンジョンを教えた後に渡辺さんに電話をした。

その後の姉さんの行動は早く、丁度受験シーズンで雷神像前ダンジョンの制覇予約の枠に空きがあったので渡辺さんにねじ込んでもらってから一週間で俺に自分の装備である『妖滅伝』の武器である二本の峨嵋刺がびしと手裏剣、そして防具は『テラフォーマー』に出てくるライダースーツに幾つかの勲章が付いたフライトジャケット、軍用ブーツに指抜きグローブを装備した姿である『スカイ・ハイ』装備一式の最終調整、消耗品の補充などをした。

そして一週間後に雷神像前ダンジョンに挑み、その2日後に制覇したのだ。

雷神像前ダンジョンの禁層のモンスター、『雷電化け狸(千花姉さん命名)』は全長8メートルくらいの大きな化け狸。背中に雷様と同じ太鼓を装備していて、それを叩くと雷を生み出せる。更に地中から鉄を集めて柱を製鉄できる力を持っている中々のモンスターだ。更に怒り状態になれば全身に電気を纏い突撃やのしかかりなどをしてくるなどの凶暴性もある。

だが、このモンスターははっきり言えば運が悪かった。姉さんは真・龍人化をすれば緋雷神龍の力を全て使える、しかも俺との特訓で姉さんは怒り状態の時にしか使えなかった磁力まで通常時で使える様になっている。

だからいくら雷を当てようが電気を全て無効化して感電しないようになる鱗と甲殻に無力感され、鉄の柱は砂鉄で削り切られるか磁場の影響を受けて逆に跳ね返る。ならばと近距離で戦おうものなら龍の身体能力には敵わない、ついでに刺された峨嵋刺がびしに赤い雷を流されて内部から感電させられる。

つまり相性最悪、マジであのモンスターは最初から勝ち目無しの状態で頭に峨嵋刺がびしを刺されてから雷で脳を焼かれて死んだ。

そして姉さんは無事、俺に次ぐ2人目の単独でダンジョンを制覇した人として物凄い実績を手に入れて無事に一週間後から迷宮学園の2年生として転入することになったのだ。


「いや、マジで姉さんは規格外だわ」


「渉に言われたくないね。友狐ちゃん達が暇をしていたからってアレは流石にやりすぎでしょ?」


俺の言葉に見ていた書類を膝に置いてある方向に指を指す姉さん。その方向には…


「う〜ん…あと3ミリ削るでおまんがな」


「てやんでい!釘がなくなったぞチキショー!!」


「はいはい、今から板を上げるから注意するでござるよ皆の衆!」


「うーむ…本格的な帆とエンジンで動くスクリューを搭載した汽船は初めてでやんすよ。腕がなるでやんす!」


「然り!」


現在俺の湖に長らく放置されていたガレオン船を友狐達が大改修している光景があった。

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